11/1 下北沢 lete でのライブ。20人限定のライブで、おそらく 20 人フルで入り、さらに当日受付で立見の人もいたと思う。小さな店なので、本当にぎっしりで、正直、身動きがとりづらい。好きな時にお酒を注文して飲めるようにと、まだ他の座り心地がよさそうな席が空いているのにカウンターの席に座る。ちなみに男性客は 2 人のみで、そのうちひとりが俺。
COUCH の、そして benzo の平泉光司が、ひとりストラトキャスターを持って弾き語る。20:30 (→ 開始時刻が間違っていたので修正しました, 2007-11-08) から始まって、途中休憩があって、終わって会場を出たら 23:15 だった。ふつうこんな小さい場所で、弾き語りならもっと短くて当たり前というか、もっと短くても誰も文句は言わないと思う。そう考えるとかなり満足感のあるボリュームなはずなのに、アンコールの BLOW を聞いて「え、もう終わり?」と思った。つまるところ、もっと聞いていたかった。
僕は benzo が当時も今も大好きで、当時何度かライブに足を運んだし、COUCH が始まる前、下北沢 QUE で平泉氏がひとり弾き語りをしたのも見たし (その時はアコースティックギターだったかもしれない)、COUCH のライブも何度か見た。benzo のアルバムも COUCH のアルバムも、ベスト以外は全部買って持っている。でも、正直 COUCH はアルバムもライブもなんかしっくりこなかった。やっぱりバンドとなると、全メンバーの演奏や印象の合計が自分の基準みたいなのを越えないと好きになれないみたい。その点、どうもひっかかる部分が残ってしまっている感じがする。
ところが、平泉光司ひとりでライブをすると、COUCH の曲も benzo の曲と全然遜色無く聞こえる。ドラムやベースが無いとリズムの面でさびしいかというと、そんなこともなく、平泉光司ひとりのギターでものすごいかっちりしたリズムとグルーヴが作られる。楽曲や歌だけでなく、リズムについても間違いなく平泉光司が benzo や COUCH のコアなんだとはっきりとわかる。なんだろう、ギターを弾きながら少しヒザを内側に曲げて踊る感じが似ているという印象もあるんだろうけど、この、音楽すべてのコアを自らのギターと歌で作り上げてしまえるという感じは、山下達郎にすごく似ている感じがした。
今のところ山下達郎ほどマスに受ける魅力は無いのかもしれないけど、なんというかこれなら彼はひとりでずっと音楽を紡いでいってもその魅力は伝わるだろうし、とすると、きっとずっと楽曲を作ったりライブをしたりしていくはずだし、僕はこの人の音楽を今まで思っていたよりきっと長く聞いていられるんじゃないだろうか、という不思議な安心感が残った。
MC で「どんどんうまくなっている」と自分で言っていたけど、この人ほんと「うまい」。特にギター。ひとりでチョッパーベースのようにいちばん低い音の出る弦をはじきながら、カッティングもしてグルーヴを作ったり、ロック小僧のようにチョーキングを交えたギターソロを弾いたりもする。これは前からだけど、カッティングの切れもすごい。そういえば、benzo のライブで「出会った頃よりも」のイントロのリフ (ミュートした単音からなるもの) を弾きながら、そのまま歌い始めるところとかすげーなーと思ったことを思い出した。
なんというか、がんばってギターを練習しているという感じではなくて、好きでやっているうちにここまでできるようになっちゃったという感じ。難しいことをやっているというより、こういうのがやりたいからただやってますという感じで、当人も楽しそうに弾く (でもたぶんけっこう難しいことをやっている)。この感じ、山崎まさよしなんかと近いような。
で、声も全然衰えないばかりか、前よりのびている感じがするし、改めて平泉光司にしか出せない味が歌の面でもわかって、唯一無比なんだよなと再発見。
アンコールの BLOW は、ファンク調にアレンジし、ブレイクで「get funky?」というセリフをはさむ。このように極端なアレンジを施してみるのも benzo の時から健在。昔はたしか、「抱きしめたい」を変なごつごつしたリズムに変えて演奏したりとかしてたもんなぁ。
帰り道、COUCH のアルバムをまた聞いてみようと思った。このライブの後ならまた違う印象かもしれない気がする。