語らず、笑え

笑いを見た記録・2001年


12月28日

新宿シアターモリエールで東京ダイナマイトの復活ライブ。
NSC時代から思わず屈服してしまう程、笑いの才能に満ちていたハチミツ二郎が舞台に帰ってきた。新しい相方はこれもポテンシャルの高さを感じさせるピン芸人の松田洋輔。 ロングコント3本を見たがはっきりいってまだエンジンは温まっていなかった。前の相方だった曽根卍の方が破綻のパワーに満ちていたから。だがこのコンビは間違いなく来る。何がどうしたって前線に飛び出さなくてはいけないコンビである。この文章を読んだ者は東京ダイナマイトの名前を覚えておくべきだ。
後日ハチミツと新宿でスキヤキを食べた。鳥肌実とのコネクションを利用して日比谷野音を抑えてしまったらしい。それを聞いた時俺の頭をよぎったのはRCサクセションでも尾崎豊でもなく、「ナオンのヤオン」だ。とにかく健闘を祈る。

12月25日

原稿催促の電話を無視してM‐1の緊張感に釘付けになる。
全国から1600組が参加した漫才トーナメントの決勝。順当に中川家の優勝だったが、俺は今回の大会は麒麟のためにあったように見えた。
丁度1年前、関西のbaseよしもとのゴングショーで妙に低い声のボケとたたみかける展開で名前を覚えていたコンビ。まだ新人賞にも一切絡んでいなく、中央芸能界では完全な無名芸人。あり得ない話だが、一矢報いたらさぞかし面白いなーと期待していた。
そして、かましたのである。前半が後半のネタふりになる構成の大ネタ。結局決勝には届かず散っていったが、全国の注目が集まるワンチャンスを最底辺芸人がモノにするカタルシス炸裂の展開だった。
しかし笑いの関係者ということで厳選された特別審査員に、鴻上尚史が混じっているのはどういうことだ。お前のあの芝居で誰か笑った奴がいるとでもいうのか。ロンドンに国の金で演劇留学して地球ZIGZAGしていなさい。

11月21日

コサキン20周年イン渋谷公会堂のラジオを聞く。
いささか内輪受け臭があるので、そんなに熱心に聞いてるわけではないが、ぽつりぽつりと14年は聞いてる計算になる。レギュラーコーナー「コサキンコント劇場」はリスナーあがりのツボを心得た放送作家が書いているとはいえ、これだけ長く聞いていてつまらなかった試しがないのは驚異だ。
それは関根勤(番組ではラビーと呼ばれている。こういう空気感が少し嫌なのだ)がテレビ好感タレントとは違うナチュラルな狂気の世界を見せてくれるからに他ならない。豊饒なレトリックで語られる著書の「関根勤のサブミッション映画館」を読めば、彼の笑いの方程式が全く読めない事がよく分かる。
番組では関根勤が見せた本当に驚くほど全く似ていない道場六三郎の物真似に対して、会場中の客が仕込みでもなんでもなく一斉に「似てねェー!」と咆哮していた。培った歴史とは偉大だ。

11月17日

武道館で「みうらじゅん&いとうせいこうのザ・スライド・ショー7」。
オープニングでは贅沢なCGを駆使し、キグルミを暴れさせ、風船を降らしてとにかくバカバカしいことへの執着心がすごい。俺の近くを通ったキグルミの中には山田五郎が入っていたそうだ。一度取材を断られたことがあるので、強いパンチ(オーバー・ザ・レインボー)でもお見舞いしておけばよかった。全員に配られた南部鉄器の栓抜き「つかえま栓」は、瓶のサイズに合わないらしい。
7回目なのでさすがに強烈なネタには欠けたものの、7回もやってまだネタ切れしないことの方が驚きである。飛び出し坊やの標識をあれだけ追える男は、そうはいない。
みうらじゅんはボケではく、いとうせいこうもツッコミと考えるのは間違いだ。みうらは思いついたことをそのまま言う人で、いとうはそれを嗜める人である。

11月13日

「ダイナマイト関西」のライブレポを見つける。
バッファロー吾郎が発起人になり「ゴチャゴチャ言っとらんと要は誰が一番面白いのか決めたらいいんじゃ!」と始まった、関西芸人による1対1の大喜利トーナメント。
読んでいて面白すぎて凹む。関東人はここに出ている芸人をほとんど知らないだろうが、中堅クラスでこのレベルである。どれだけ層が厚いのだろう? 同じキャリアの関東芸人にこの企画をやらせても間違いなく成立しないと思う。
これを見ていると、ダウンタウンの不条理の笑いも通過してしまった世代の力を感じずにはいられない。しかしそれでも売れるとは限らないのだ。それにしてもケンドーコバヤシはギャグのスタミナがありすぎ。

10月26日

現在かかえている原稿がないのが不安だが、ルミネよしもとの「7じ9じ/ネタまつり」に足を運ぶ。
130R、千原兄弟、二丁拳銃と関西で中堅どころよりやや上が集まったショーケースライブ。3500円が決して高くない惚れ惚れするステージ。
それまで面白いと思ったことがなかった野生爆弾の不条理な世界観に圧倒され、FUJIWARAの畳み掛けるような保健室コント(また分かりやすい設定だ)を堪能した。
しかし圧巻だったのは、やはりルート33の漫才。10月から東京に移籍した余裕からか、舞台の半分はネタから脱線したアドリブ。しかしスピードは全く落ちずにネタは有機的に広がるばかり。もう既にコード進行だけ決められたフリージャズの世界だ。彼らの漫才を見るたび、終わらないでずっと続かないかなと頭の隅で考えてしまう。
そんな中、俺の横に座っていた笑い声がデカいくせに間が異常に悪かった男のデブ二人組。煙草を吸うためだけに漫才中に離席しやがった。僕には君たちがこの世に存在する意味がよく分かりません。

10月18日

えてして原稿は終わらないが、と見せかけて現在原稿の締切りはないのだが、久しぶりにルミネよしもと・5じ6じへ足を運ぶ。
ネタ組の水準がこぞって高い中、白眉はチャイルドマシーンの漫才。これで俺が見た3回とも全部面白かったという、実に10割の打率だ。ますます吉本がプッシュしないのが不思議になる。
トイレに行ったら、出番を終えた井上マーという芸人と隣合わせになった。誰だそれ、って話だ。俺を含めて。

10月7日

3日連続で松本人志の仕事を見る。
木曜日。FM−TOKYOで始まったラジオ。最悪。
金曜日。「ものごっつええかんじスペシャル」。最高。
土曜日。電波少年「SASUKE」。この企画の当初から、英語を堪能に喋れない人のみだけでアメリカの笑いを否定する構図が理解できなかった。別にどうでもいい出来。
松本は相変わらず現時点で最高の頭脳を持った芸人だと思うが、最近彼について深く考える気が起きない。もう一度、ダウンタウンがネタとして本気で漫才をやった時だけ、俺はその才能にひれ伏すのだろう。

10月1日

志ん朝師匠死去。
落語は退屈で何もないと決めつけていた俺に、初めて落語のグルーヴを提示してくれた落語家だ。
いい漫才はギャグが分かっていても何度でも鑑賞に堪えるように、志ん朝の落語も聞いていてただただ心地よかった。この夏は暑さに耐えかねると、家を飛び出して喫茶店で師匠の落語をCDで聞いて涼んでいた。
この人を生で見れば落語の快楽に遭遇できるかも、と思っていた矢先の出来事。ぼんやりと帰宅すると、唯一まだ聞いていなかった「文七元結」のCDを丁度図書館から借りていることを思い出した。
今俺はトレイにCDをそっと差し込んでいる。出囃子の「老松」を聞くのが、少し怖いような気がする。

9月30日

よしんば原稿は終わらないが、日比谷野外音楽堂のポカスカジャンライブへ。
午後3時入場があやしいとは思っていたが、開場と同時に公開サウンドチェックショーを始め、会場側から許可されたギリギリの午後8時半まで5時間に及ぶWAHAHAらしいライブ。
リードギターの玉井が時折見せる狂気の部分に眼が離せなくなった記憶はあるものの、最後の1時間は酔っ払ってネタの輪郭がぼやけている。秋の野音はワンカップの熱燗がおいしいです。

9月11日

終わったふりをしながらさりげなく原稿は終わらないが、「広告批評」のお笑い21世紀特集を買って熟読する。若手芸人5組で50ページのロングインタビューが嬉しい。
ラーメンズ・小林の理路整然としたお笑い理論に反発を覚えるのは、アートの側にすり寄って固定ファンに囲まれて育った彼らが笑いの「魔」を経験しているのか、という疑問を抱くからに他ならない。ハリガネロックのインタビューが漫才という笑いの深みを露わにしていたのは、二人が何度も修羅場を通過してきたからであろう。
オンエアバトルのチャンピオン大会決勝。若手一の練習量と緻密さを誇るハリガネロックの漫才は、中盤のユニゾンでツッコむ要の部分を間違えて、その後の展開が目をあてられないほどボロボロに崩れていった。俺はそこに笑いの悪魔が降りた瞬間を感じ取り、ビデオで数十回も見た。そこで見えたのは論理を超越した「魔」としか言いようがなかった。だから自戒をこめてだが、笑いの構造を言語化しようとする方向性が胡散臭くて仕方がないのだ。
それにしても「広告批評」。芸人名鑑がついているがオンエアバトルのパラダイムから一歩も出ていなくて、大幅にページ数をさいたこと以外、驚くほど何の発見もない浅い編集である。でも芸人をHIROMIXが撮影しているのはインって感じだよね。

9月6日

つまるところ原稿は終わらないが、昨日に引き続き本多劇場「チハラトーク・落書き編」へ。
チハラトークで落書きだからチハラチョークだなと上手いことを思いつくが、内容は千原Jrによる一人大喜利。
低調。松本人志の影響を受けていない芸人なのに、方法論が「一人ごっつ」から抜け出ていない。いつもは巧妙にからむ兄貴の魅力もなかった。千原のポテンシャル不足というより構成の不備を感じる。写真に一言を添える(これ自体「松風」そのものだが)コーナーのみ白眉だった。
帰宅してニュースステーションの古今亭志ん朝「最後の晩餐」を見る。枯れ始めた雰囲気にこれは是非生で見たいと決意を固めるが、前後して体調不良の無期限休養に入ってしまったらしい。また俺は大切なものに乗り遅れてしまったのかもしれない。

9月5日

相変わらず原稿は終わらないが、本多劇場の渡辺鐘「うるとら・すちゅ〜ぴっど」に足を運ぶ。
当日券目当てで、2時間前に到着すると既に長い列。肩を落として最後尾についたところに、見知らぬ女性がやって来て、
「券1枚あまってるんですけど、買っていただけませんか?」
エンジェル、いやエインジェル。ついでに勢いでプレンツェル。次にあった時はその羽を撫でて背中を舐めてあげよう。
3、4年前明らかに日本で一番面白いコントをジャリズムとして量産していた男であり、現在構成作家の渡辺であるが、くだらないことを考える体力がケタ違いだ。CDトレイに薄く切ったハムを入れたり、刺し盛を川に返したり。演じるキャラクターも現在活躍しているコメディアンと一線を博した質量である。
ラストでタキシードにギャグ(口枷)をくわえながら「また逢う日まで」を熱唱した渡辺。俺は本気でそのカッコよさに嫉妬した。

9月4日

原稿が終わらないが、PARCO劇場で「ジス・イズ・フキコシ」を見る。10年間やってきた吹越満ソロ・アクト・ライブの純トロ部だけ集めたベスト盤。
思えば10年前、初めて金を払って見に行ったライブが吹越満だった。
懐かしい「肉体言語学講座」「ロボコップ演芸」「日本一のセンズリ野郎」「肉体脱衣」「フキコシ2号」「ヘッドフォン」から昔俺が昔影響を受けまくった「その線」、ボレロに合わせた顔面ボード芸の集大成まで。
ところで妻の浮気と夫の休日出勤がシンクロする一人芝居があったが、これって俺が吉本養成所当時のライブで演出家の喰始審査員特別賞をもらったネタと発想が同じではないか? 吹越の方が比べ物にならないくらい面白かったが。
ラストを飾った布がダンスする芸はアートの域。とはいえラーメンズのように最初からアートの雰囲気を出す確信犯ではなく、あくまでも東京コミックショーのパロディから始まっていて、演芸の発想が原点であることがすごい。
ノスタルジーだけで成立させない秀逸なライブだった。どれだけすごかったかというと、客席にいたナンシー関が笑って拍手していたくらいだ。俺はそれを見て、彼女は前頭部の髪が薄すぎると思った。

8月10日

原稿が遅々として進まない。気がつくと新宿のルミネよしもとに。
ゴングショー芸人の「ひみつ基地」。兄貴が光合成をするというそんなに目新しくないコントだが、卑劣なメイクにどす黒いセンスを感じる。
ネタ組では作りたてのようなダイノジのコント。雑な臭いもしたが、最後のオチに至るまでの十数秒に尋常ではないスピード感があった。
今日はNSC時代の相方と一緒に見に行く予定だったが、彼は予想通り待ち合わせに遅れて、というか終演にも間に合わなかった。このあたりの事情は各自察してしただきたい。

8月9日

千原Jrが事故後の初ライブということが気になって、芝abc会館の「チハラトーク」に足を運ぶ。
よく考えれば千原兄弟を生で見るのは初めてだ。俺が昔から提唱している笑いの天才史の中では、松本人志、太田光の後にJrは位置づけられている。
フリートークは事故の報告を、笑いを切らさずに展開していった。期待通り笑ったが、それ以上でもそれ以下でもない出来。
しかし中盤、Jrが入院した2ヶ月の間「行っても何をしていいのか分からない」から見舞に行かなかった千原兄が突然
兄「あのな、お願いがあるんやけど。楽屋で言うの嫌やから、舞台で言うわ」
Jr「何? 気持ち悪いな・・・」
兄「この舞台終わったら、飯喰いに行かん?」
Jr「・・・(絶句)」
要は兄が世話になっている焼き肉屋の店長がJrの様態を心配して、一度兄弟で来てほしいと頼まれたとのこと。しかし兄が発言した瞬間、観客とJrは「まさか快気祝いか?」というスリリングな空気が流れた。結局Jrは断るのだが。
特に「何言い出すねん、こいつ・・・」と照れとかそういう次元を超えて言葉を失ったJrの姿。その空気に立ち会えただけでも、観客は幸福だった。俺はその光景に少し感動していたのだが、この気持ちは分かってもらえなくていい。

8月7日

俺はジョビジョバを6年見ている。
いつも見終わるたび、笑いに対する傲慢な態度に腹が立ち、しかし舞台の完成度には納得するという、「生意気だが面白いジョビジョバ」にアンビバレンツな感情を抱いていた。
Zepp Tokyoで「HEAVY SMOKE MONKEYS」を見た。いつものたたみかける笑いもなく、強烈なキャラクター攻撃もなく、六角くんの目を見張る動きもなかった。何もない舞台だった。
一つ救いだったのは明らかに笑いが少なかった客の民度かもしれない。俺にしてみれば笑う箇所は皆無だったが。
今日をもって、俺の中でジョビジョバは死んだ。
秋元康から花束が届いていた。ジョビジョバはとんねるずかセガと同じ道をたどるだろう。

7月30日

銀座ガスホールでルート33のロッキー・ロデオ・ツアーの東京公演。
見慣れてきて新しい発見はないものの、1時間半の8割が漫才のこのライブ。2000円はどう考えても安すぎる。
明らかに「可愛い」と客に言われたがる動きが鼻につく増田だが、ツッコミの腕と滑舌は確かで、横に後ろにと移動できる立体的な動きが素晴らしい。守備範囲の広い遊撃手を見ているようだ。
対してボケの堂土はミートのうまい中距離打者のようで、アドリブと思われる部分のギャグを放り込むスピードには目を見張るものがある。
半年前のライブでは語尾に「だぜ」を連発して客の失笑を買っていた増田は、今回はそれ以上に妙な「するっしょ」と「まんねん」を習得していた。地方の営業が増えたせいか、気持ち悪い言葉を吸収する彼に「逆・渡辺徹」の称号を与えたい。しかし漫才中にストロボをたきつづける女どもに増田の暴走は伝わらなかったみたいで、失笑一つ聞こえない。俺の横の席にいた女は堂土の「クールミントガム」というボケに「かわいいー!」と叫んでデジカメを回していた。てめえみたいな虫知能女は日光写真で充分である。

7月21日

深夜放送の「爆笑ヒットパレード」を見ようとして前番組の「裏めちゃイケ」を目にした。 要は深夜の下ネタに徹した特番だが、「クイズ・マジオネア」はナイナイ矢部の私生活暴露をしながら、構成自体にギャグをからませるという非常に珍しい「着地点のあるパロディ」に仕上がっていた。めちゃイケスタッフの水準の高さを感じる。
しかし生放送のスタジオがざわめいたのは、別枠ゲスト扱いで登場したイジリー岡田の登場であった。前へ前へ出ようとする大勢の芸人たちが「待ってました!」「汚れじゃイジリーには勝てないよ」と一瞬にして色を失うのがすごい。
そして司会進行を任されながら、エロのマエストロ・イジリーは下ネタの創世主・鶴光と一歩も譲らない壮絶なバトルを展開していく。まさに格闘技で言うならホイス対桜庭、ボクシングなら畑山対坂本、相撲なら大徹対逆鉾。一時も目が離せないガチンコ勝負だ。
勝敗の判断は見た人それぞれに任せるとして、イジリーは登場するなり「よろしクリ・クリ・クリトリス」とダジャレにもなっていないスマッシュ・ヒットをかまして、西山アナを絶句させていた。イジリーの背中には夜になると翼が見える。

7月8日

関西ローカル特番「ZAIMAN IN TOKYO」の観覧に。吉本の現役漫才師12組という実にジューシーな内容。
スタジオトラブルのため急遽場つなぎに駆り出されたのにかかわらず、フリートークの物腰で会場のテンションを下げなかった前説のビッキーズ。なんという層の厚さだろう。ルート33は抜群の安定感で、動きに隙がない中川家の漫才も小気味よかった。
そして一番見たかったのが、トリの中田カウス・ボタン。俺はこのコンビ見たさにくそゆるいNHKの「生活笑百科」を毎週見ているくらいだ。猫背気味にゆっくりと登場するボタン師匠の姿が格好いい。
しかし、いきなり怪談の話から「幽霊といえば、君んところの奥さん元気?」という夢路いとし・こいしのような話芸に心が曇った。期待して損したと思った。
だがその後がすごい。まるで室温を一度ずつ上げるかのように、じわじわと客を自分たちのペースに持っていってしまうのである。斬新な展開はないのだけれどキャラクターの対立で惹きつけ、二人の呼吸すら聞こえてきそうな掛け合いに気がつくと巻き込まれていく寸法だ。ちなみに一番笑ったのは、
カウス「新婦がモンゴルのごっつい金持ちの娘やねん」
ボタン(アドリブらしい)「そんなすごいんか。家は何の商売してんの?」
カウス(一瞬絶句して)「それは・・・カブトムシの養殖や」
やはり場数が芸人を育てるのに違いない。でも一緒に行った遠藤はトミーズの漫才がドベタすぎて、本気で怒ってました。

7月8日

「みうらじゅんのスライドショー」をWOWOWの無料放送で。実家の父親に録画を頼んだら、案の定指定を無視して標準録画だった。
こんなくだらない企画でもチケットが発売直後に完売するなんて、日本の民度の高さも捨てたものではないではないか。
ピングーの偽キャラ「テングー」と中華料理・瑠璃仙のチラシに声をあげて笑った。みうらじゅんは文科系童貞の神である。しかし一度取材で訊ねたみうらじゅん事務所に田中角栄の本が散乱していたことは、未だに謎だ。

7月6日

「いろもん」のゲストが品川庄司だった。彼らは無名時代から知っており、ついにここまで来たかという感慨を覚える。
今田・東野といったトークの猛者を相手に会話の主導権を離さなかった品川。相変わらず格好がいい庄司君。吉本のプッシュ。ビートのきいた漫才。このままどこまで売れるのだろう?
先日、夏の単独ライブを見てみようかとも思ったが、チケット取りに並ぶのと会場での嬌声を想像して、止めた。知人が芸人としてスポットライトを浴びていることにジェラシーを禁じえないからだ。
昔、酒宴で酩酊すると俺はチムポを出し、品川はよく尻を出していた。ポップの境界線というのは、案外こんなところにあるのかもしれない。

7月4日

俺が十年間影響を受けてきたラジオにおける伊集院光のしゃべくりのリズムは、落語の裃そのものではないか、と最近気がついて毎日のように落語のCDを聴いている。
爆笑問題が談志ファンであるのは有名だが、ダウンタウン松本が上方落語の愛聴家であることはあまり知られていない。
落語には何かが潜んでいるはずだ。その手がかりを見つけるべく、見逃していた教育テレビETV「立川談志の落語人間学」を再放送でチェックする。
談志の妙にキレイな栗毛は染めているのか、ということを含めて謎はますます深まった。

6月27日

時間があいたので、なんとなくルミネよしもとの「5じ6じ」に足を運ぶ。
きれいなギャグが随所に目につくのが、チャイルドマシーンの漫才。大阪吉本からの移住組だが、やや先輩にあたるルート33やハリガネロックのようなリズミカルにギャグを詰め込む漫才よりワンテンポ遅くて、ねっちりした感じがする。ツッコミの目の腫れぼったさだけがルート33の堂土を思わせるくらいか。
新人コーナーの(英)田中というピン芸人はモロ矢沢志向。自分の名前が入ったTシャツにタオルを携帯して舞台に登場して、芸名は「カッコ・イー・タナカ」と読む。こういう需要のないアホが僕は大好きです。

6月26日

録画していたNHKドラマ「グッドコンビネーション」を見る。
大阪のお笑い養成所が舞台なので、好きな小説「オオサカンドリーム」が原作かと思って期待した俺が間違っていた。
主人公がなぜか東京出身で関西弁が拙い、鳥羽潤がちょっとぜんじろうに似ている、細かいところをあげていけばきりがないが、「つらい人生だからお笑いの道に入る」という高校演劇部なみに分かりやすい論理に絶句する。
ギャグに生きる人間の現場なんて憂鬱に違いないが、そこに自然発生的に漂う「でもなんか笑ってしまう」感を、脚本家は何も理解していない。
しかし見るべきものもあって、下手な素人漫才を演じる中川家の巧みさ。あの独特な気持ち悪い間さえ、達者な漫才師は演技できる事実に戦慄を覚える。あとダンス講習でTシャツ姿になった安達祐実の胸が意外にいい乳をしているのが救いだ。

6月20日

初めてルミネよしもとに足を運ぶ。
「5じ6じ」という二部制の一部で客の入りは4割程度。当初は最下層芸人に短いネタをやらせて残りはゲームコーナーという実にしょうもない構成だったらしい。そんなのに誰が金払うんだよ!しかし大不評だったようで今はゴングショーに落ち着き、ネタがいっぱい見れるのが嬉しい。
1分しか時間を与えられない芸人未満組に見るべきものはなかったが、5分ネタが出来る中堅組は水準が高かった。チャイルドマシーンってなんでチャンスが与えられないのだろう?
特に今時デブとヤセという昭和的コンビのインパルス。おそろしく華がないくせに、「老体化する子供」「メルヘンな学校に通っていた」「いじめテーマパーク」と豊かな発想を短い時間に流暢な流れで詰め込んだ漫才が素晴らしかった。
ボケの板倉は大学の後輩の板倉に骨格がそっくりだ。本人は否定しているが、きっと親類か本人そのものに違いない。

6月1日

ツインカム解散が公式発表されたようだ。
そんなに好きなコンビではなかったが、おそらくアドリブが多用されていたであろうコントは、場数を踏んだ者にしか出来ない漫才のような間を備えていた。
芸人コンビの解散は10備えていた力が8に落ちるのではない。二人で築いたものはゼロへと帰するだけだ。
ジャリズムなんかもう少し続けていたら、どう転んでもオンエアバトルで全国区になっていただろうに。
芸人の解散情報はただただ悲しい。野猿の解散コンサートで何人の涙が流れたことか。あれで泣いているのは中学校の卒業式のようにバカとブスだけだ。

5月19日

「めちゃイケ」にエスパー伊東が登場する。
むかしはもう少しエスパー寄りのネタをやっていた記憶がするが、今回は「辛い饅頭を笑顔で食べる」「投げられた激熱おしぼりを颯爽と交わす」など、超能力の「力」すらない芸ばかり。当然、おしぼりはミラクルなタイミングで伊東の首筋を直撃。私は泣いて笑った。
特別見事なリアクション芸でもないエスパー伊東の魅力とは何か?それはもう、あの貧相な顔とモテることを放棄したような前髪に尽きる。
爆笑問題・田中や、芸人ではないがゴスペラーズなど、突然色気づいておしゃれ派へと垢抜けていく芸能人は多い。しかしエスパーは茶髪にしようがディップで固めようが「この人やっちゃった」感しか残らない、プリミティブ・フェイス。あの小刻みな震えといい、笑いの神様の創造物に見えてくる。
聞けば優香もエスパーのファンらしい。世の中絶対に間違っている。

5月19日

フジテレビの昼間、復活した「THE MANZAI」を見る。
ガタガタ言わないでネタ10何連発の好企画だが、7割が大阪吉本。これで浅草キッドとキャイ〜ンが降りてくれば理想的なバランスになるのに。
トリに出てきたのは爆笑問題。
明らかに2、3年前よりギャグの質量が落ちている。では面白くなかったかというと、それなりに見せてしまう出来。
爆笑問題も5割程度でも何とかしてしまう力量が備わって、それでもトリ取って誰もが納得するポジションまで至ったんだなあという感慨を抱いた。しかし太田がトークの内容より存在が問われるような芸人になるのは早すぎると思う。
しかしランディースのツッコミ・高井のピアス。次回見た時につけてなかったら、絶対にオール巨人師匠にシメられたに違いない。

5月18日

テレビ朝日「虎の穴」のお笑い対決でダイノジが披露していたタクシー無線コント。
一見アドリブっぽいコントだが、全部台本に基づいていると思われる。「え? 本番で急にそんなこと言わないでくださいよ」と素で慌てふためく箇所さえ、だ。
ダウンタウン松本は漫才はいかにアドリプっぽく見せるかが大事と語り、そのブレーンの高須光聖も今のバラエティ番組はいかにゆるい空気を作って客の目線を下げるか、と述べている。
その空気感をコントにしたダイノジはすごい。しかし東京吉本で1年後輩の品川庄司の漫才に敗れ、勇利アルバチャコフ似の大谷の顔はひきつっていた。
大谷と大地の二文字が共通するから、ダイノジ。それではフリッパーズ・ギターは小山田と小沢でショウノジだな、と思った。

5月6日

テレビ放映していた「腸捻転ライブ」を。ある筋の話によるとラーメンズ人気だけで客がフルハウスになったらしい。
ラーメンズを見るといつも新しい仕掛けがあって感心するが、そんなに笑えるか、ラーメンズ?
傲慢な意見だが、笑いの取り方は知っていても爆笑の取り方を知らない印象を受ける。鮮やかイントロもある。確かな技術力の演奏もある。でも肝心なサビがない。
今回はアメリカ人が日本語教室で歴史上の人物を説明し、最後はラップを始めるという著述不可能なネタ。
ところがこれが圧倒的に面白いから、つくづく困る。小林は作家性がよく問われるが、演者としての器用さの方に目を見張るものがある。
しかし彼らが私服で着用するのは、小林のおしゃれ帽に、片桐のサイケ長袖Tシャツ。その美大あがり臭の強さ。やはり応援はしないと決意を固める。

5月3日

トゥナイト2のカルト芸人特集で、なかやまきんに君を見る。
夜更かしエスキモー(俺が勤めていた会社の営業部長に似ている)石川次郎や、下落合エロアザラシ・ヤマモト監督に「芸ではない」と一括されていた。
俺ネットワークによる情報では、関西吉本所属の彼は大阪における若手の拠点、baseよしもとでは「キモイ」という理由で不人気ナンバーワンであるという。
当然の話だ。「笑い」とは何かを考え、原点に帰結した者にしか、彼の「無意味」を受け入れることはできないだろう。芸人のルックスで笑いを取捨選択する生理過剰女どもは、紅葉を股間につけて、はっぱ隊のCDで踊っていなさい。
ルミネよしもと楽屋のインタビューで、後方に品川庄司の品川の姿がちらちら映っている。そのポジショニングのうまさに本当に政治がうまいやつだと改めて思いを強くした。

5月1日

天王州アートスフィアでシティボーイズ「ラ・ハッスルきのこショー」。
タイトルから伊藤英明が出て合法ドラッグを配るのを期待したが、伊藤は多忙のため(粉の計量等)不在だった。
さすがに大きい爆発力はないけれど、オッサンであるのに笑いの新しい水脈捜しをやってるというのがすごい。というか、あまりにも最近のお笑いは「わかりやすいキャラのボケにツッコミ」の図式に支配されていることに無自覚すぎる。その呪縛からは完全に自由なコントだ。
最後の舞台挨拶で出てきた坪井塁という演出家が、自分より3歳下の24歳と聞いて椅子からずり落ちる。
このジェラシーを何かにぶつけなければと会場のトイレットペーパーを盗んで帰ろうと思ったが、本気で自己嫌悪に陥りそうなので、やめる。

4月28日

六本木の小さいクラブで岡村靖幸ナイト。
ブースのDJが曲に合わせて岡村の動きを完全コピーしているので、目が釘づけに。岡村ちゃん亡き21世紀、2代目岡村ちゃんを襲名していいだけの逸材と見た。
「イケナイコトカイ(ライブバージョン)」に合わせてフロアで踊り狂う彼に爆笑。「最高です」と握手を求めると、
「・・・おまえの方が最高だよ」とイカした答えだ。
しかし握手していた全員に同じ返答をしていたので、意外につぶしがきかないのかもしれない。浅草で5年修行すれば、必ずバケるだろう。
彼の名前はクニオ。「魅惑のクニオトリオ」(これまたアホな名前だ)としてライブ活動も行ってるらしいので、今後も動向を追いたい。

4月26日

大久保R'sコートで「3バカビートだ!ポカスカジャン」を見る。
お笑いゴングショーやタモリ倶楽部あたりで取り上げればすぐブレイクするぐらいの能力はある3人組。楽器だけでなく喋りまで達者だ。
「うどん屋ジャズ」「山下清・坂田利夫・志村けんの3バカボレロ」が白眉。デブでヒゲの中山は歌だけでなく、ウッドベースまで上手いので驚く。
客席の後方で受けているネイティブ・アフリカンがいたので、よく見たら真っ黒に焼けた渡辺裕之だった。

4月25日

もらった招待券で「志らくのピン」へ。
意外に聞いてて気持ちがいい前座からスムーズに志らくの出番。
「亀井静香なんておっかない月家円鏡ですよ」とくすぐりだけで面白いのに、「花見の敵討」「おせつ徳三郎」「木乃伊取り」と古典落語も全部面白いから手に負えない。
そしてラストにかけた、売りであるシネマ落語の「太陽がいっぱい」の最低ぶりに驚愕。
初日白星、その後13連勝、千秋楽で黒星を喫したら星取表がオセロの要領で全部黒になってしまった力士ぐらい、最悪の結末だ。
だってオチが死者に向かって「放っとけ(仏)」だもの。
さすがに拍手する気を失って表に出ると、クロスタワーホール付近に尾崎豊追悼のギター弾きどもが群がっていた。そういうのを含めて手を合わせる気分になる。


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