ミニ俎板かと見紛うサイズの本を一冊、私は今手にしている。まず巻末に添えられた作者による書名の由来を抜粋したい。 「チェッカーズがデビューするのとほぼ同時期にPATIPATIが創刊された。今回、世紀の移り変わりに連載していたインタビュー・ページを一冊の本にし、[Feti Feti]とタイトルをつけた。PATIPATIというフィルターを通すことで、これまでの藤井フミヤの[fetishism]を感じ取ってもらえればと思う。」 イエス。某筋から入手した待望のユーモア・サスペンス、藤井フミヤインタビュー集「Feti Feti」(幻冬舎アウトロー文庫)である! ワードで書いてたらいきなりタイトルに赤波線のスペルチェックが入っちゃったぜ! あゆの影響でデカ眼鏡を着用するフミヤ兄貴のフォト、専門学校生が入学課題で描いたような自作CGと全編にわたり興味はつきない。しかし私もライター(未満)の端くれとして僭越ながら言わせてもらえれば、インタビュアーの技量が稚拙すぎるのだ。 どうもこのインタビュアーの女性は30歳ほどの女性であり、物心ついた時からのチェッカーズファンで現在もそのPTSDに悩ませれているフシが垣間見られる。 残念ながらこんな大甘ファン代表では、フミヤ大兄の魅力を客観的に伝えることができない。 そこで私がこの場を借りて、フミヤ義兄のコメントには全く手をくわえず、質問のみ若干換えることでインタビューを再構成してみた。
こんにちは。今日はよろしくお願い致します。 |
「菊田先生、ご無沙汰しております」 |
もともと午前中の編集部は人気が少なくて静かなものだが、それが月曜日ならばなおさらだ。俺がのぞいた時はアルバイトの青年が新聞のファイル整理に励んでいる姿しか見えなかった。 今出入りさせてもらっているその隔週刊誌が発売の週は、入り口近くに刷りあがった冊子が無造作に詰まれている。打ち合わせまで時間があまっていたので、俺は一冊を手にとってぺらぺらと眺めた。 次の瞬間、俺は衝撃で雑誌を落としていた。顎の先端が地面までついた。両足を高速回転させて走っていたら実はそれが崖の先でしばらく停止したのちに急降下した。 見開きページの左隅の白ヌキ活字が視界に飛び込んでくる。 「今回を持ちまして「思想としての美女」の最終回とさせていただきます。長い間ご愛読ありがとうございました」 今華々しくライター(見習い)として活躍する俺が、蛾が群がる種類の脚光を浴びるきっかけとなったコーナー「思想としての美女」がひっそりと終幕を迎えていたのだ。 思えば伏線はあった。原稿遅漏の名が高いリリー会長は担当編集が変わると連載の存続が一気に困難をきわめ、ひっそりとフェイドインしていくのが常であるらしい。その噂通り、血で赤校正を入れろと指示する梅が丘のアイアンメイデン・前担当者のO女史は、春に他雑誌へ移動していたのだ。 このコーナーがなければ俺がライター(未満)としてデビューすることもなかっただろうと思い、せつない気分に目を細めた。 ここまで読むと俺が雑誌を落としたのは連載が終わったからのように思われるかもしれないが、ノンノンノン。ノンムジーク、ノーライフ(ドイツ語)。27歳ってそんなことにいちいち驚いてはいられない年頃なの。 さらに読み進めると、リリー会長が次のような文章を綴っていたのだ。 「ここに日本美女選別家協会という旅に終止符を打ち、会を解散することになった」 まさに寝耳に水。熟睡中に上流でダム崩壊。睡眠薬を致死量まであおってからビニールプールでバタフライ。まったくの初耳であった。 投稿を重ねて手に入れた会員番号#023も無に帰してしまうのか・・・それよりこれでリリー会長と会う機会を失ったというのが痛い。 世間では俺がリリー会長と昵懇の仲のように誤解している向きもあるが、われわれは「Stand Up」のプロモにおける倉木麻衣とそのバックバンドの黒人程度の仲でしかない。というより面識自体がない。というより向こうは多分俺の存在をよく知らない。 これで就職活動を再開する際、履歴書の資格に書けることが「和文タイプ」と「小学3年の時に公文がN」だけになってしまった哀しさに俺は肩を落とした。 ここまで読むと俺が雑誌を落としたのは美選協が解散したからのように思われるかもしれないが、ネバネバネバネバ(末唯語)。花魁は今さらそんなことに驚いているひまがないでありんす。 俺が驚いたのは、今NYでロックバンド活動をしているらしいドリアン助川の連載が再開されていて、タイトルが燦然と映ったからであった。 「(元ドリアン助川)TETSUYAの英語ノート(副題・さよなら、ドリアン)」 ドリアン助川改めTETSUYA。 またTETSUYAって。 TETSUYAだぜ、TETSUYA。オンラインクーポン提示でビデオ半額になりそうな名前だ。あえて自分から帯刀している懐に飛び込んでしまったような雰囲気が全開。R&B系女性シンガーの勢いだけの命名がひとしきり落ち着いたこのご時世に、なにかしら「やっちゃった」感の強さは否めない。 俺は心を落ち着けて落とした冊子を拾った。この雑誌のコピーの「現代が3時間でわかる」に偽りは無い。なぜならドリアンの本名が助川哲也である情報まで網羅しているのだから。 |
以下は或る依頼の元に書いた文章である。掲載用ではないことと、最近更新が滞っていたのでアップしてしまいましたが、Oさん大丈夫でしょうか? もしこれを読んでいて支障があったら連絡ください。
こんにちは、講師の鈴北久美です。 |