語らず、笑え

笑いを見た記録・2003年下半期


12月28日/M−1鑑賞
12月23日/ルミネtheよしもと「漫才orDIE」
12月20日/ルミネtheよしもと「チハラトーク」
12月9日/ルミネtheよしもと「ルミネ道場」
11月29日/ルミネtheよしもと「M‐1東京予選・準決勝」
11月28日/M‐1予想
11月1日/シアターD「12大シングルマッチ」
10月29日/ルミネtheよしもと「7じ9じ」
10月26日/ルミネtheよしもと「チハラトーク」
10月20日/国立劇場「志らくのピン」
10月18日/紀伊国屋サザンシアター「プロペラを止めた、僕の声を聞くために」
10月17日/ルミネtheよしもと「2h」
10月2日/紀伊国屋ホール「紀伊国屋寄席」
9月20日/ルミネtheよしもと「チハラトーク」
9月16日/ルミネtheよしもと「2h」
9月13日/三鷹市民芸術劇場「シベリア少女鉄道公演・二十四の瞳」
9月5日/シアターD「キュートン」
9月2日/銀座ガスホール「お笑い世界一決定戦」
8月30日/ルミネtheよしもと「カリカ・コント2」
8月24日/ルミネtheよしもと「絶叫!!サマ〜化け〜ション」
8月23日/ルミネtheよしもと「大阪ネタごのみライブ」
8月22日/なかのZEROホール「お笑い男の星座祭り」
8月20日/ルミネtheよしもと「1じ3じ」
8月14日/ルミネtheよしもと「2h」
8月8日/ルミネtheよしもと「中川家の二人息子」
8月6日/ルミネtheよしもと「2h」
7月26日/ルミネtheよしもと「チハラトーク」
7月25日/太田区民ホール「下丸子らくご倶楽部」

12月28日

M1を見る。濃厚すぎる2時間。思ったことが多すぎて全ては綴りきれないので手短に。
どのネタも当然のように面白かったが、印象に残ったのは2丁拳銃。30代後半のボクサーが力任せに振り回してくる若手と正面から向き合い、コーナーを背にして打ち合いに挑んだような戦い方だった。センスが問われる場でベテランが新鋭に敗れるのは仕方ない。だがそれでも互角にやりあった二人の漫才は、今大会の裏ベストワークだったと思うのである。他の芸人も素晴らしすぎて、私は翌日まで興奮が収まらなかった。
そして全視聴者は番組が終わった瞬間、来年の大会に思いを馳せていたことだろう。西川きよしはどんなポジションで使われるのだろうか、と。

12月23日

ルミネで「ダイノジの漫才 or DIE」。
ダイノジのオープニング漫才は、「ファインディング・ニモ」の話をすると見せかけて二人の同級生の噂に終始するぐだぐだ漫才。しかしその緩さの中にも方向性があって、妙な面白さが。それでもダイノジはコントに専念した方がいいという考えは変らないのだけれど。
この日のシークレットゲストは2丁拳銃、スピードワゴン、島田洋七をM1直前に揃える豪華な布陣。特にスピードワゴンは充実した出来で、技術が向上して面白くなっているというより、見るたびにギャグセンスの純度が高くなっている感じがする。だが一番笑ったのは、M1戦線と無縁の存在・カンニングである。他のサラブレッドが芝の上を颯爽と駆けぬける中、一匹だけ障害競走に参加しているような自暴自棄漫才だ。客に毒づき、センターマイクを客席に向け、堂々と腕時計で終了時間を確認すると舞台を去って行った。ダイノジとのトークによれば、M1は予選3回戦でもっとも笑いを取りながら、結成11年目が規定違反で失格になったという。なんて尊敬できないカッコよさだろう。先月の月収までぶちまけるなんて、これはもう漫才というより私小説の域。中野で見かけたら迷わず親指を隠そう。

12月20日

ルミネでチハラトーク。
全体的に低調。今Jrの周囲で流行しているなぞなぞを他芸人と舞台でかけあう光景は、無言の群衆劇かと思うほど沈黙が長く、客席との温度差が激しすぎ。
だが無意味な単語をお題に会話を進めるフリートーク大喜利には目を見張る。「キャッチャー刑事」「フランス出身外人力士」などの言葉を転がしては、どんどん笑いに転換させたJrが詰まったのが「ワンタッチ相合傘」だった。しばらく熟考した末に、
「・・・これはね、松浦亜弥の新曲タイトルなんです。立ちんぼ娼婦を描いた恋の歌なんですよ」
やはり優秀な芸人は発想の角度が鋭利だ。その頭脳を生かして客前でなぞなぞを考える時間は無意味ということにも気づいてほしい。

12月9日

ルミネ道場〜若手お笑いバトルに。
それなりの面子だったので期待して向かったところ、ゲームコーナー中心の1時間30分。仕切り能力を欠いたMC、笑いを取る目的に足並みが揃わないチームワーク、ゲーム企画の練れなさ加減、ゆっるいゆるい幼児の糞尿みたいな時間がひたすら過ぎて行った。この企画、何世紀続けても何かを生み出すことはないと断言できる。
唯一気になったのは、背中合わせで漫才を披露したバッドボーイズ。特に鮮やかなボケがあるわけでもないのに妙にひっかかる存在なのは、どぎつい九州弁のせいだろうか。方言を駆使するタレントは自分の言語が共通語との異質であることに意識的なのに、おそらく何も考えていないであろう態度。上京して半年たった今も、全員の客が博多弁を理解していると信じていそうだ。

11月29日

片付けなければいけない原稿があるのに、ルミネでM−1準決勝を観覧。
さすがにどの芸人も勝負ネタを4分に凝縮させてきただけあって、3時間立ち見だったのにかかわらず、時間と疲れを感じさせない密度の濃いイベントだった。40組近い中から印象に残ったコンビを羅列すると、
トータルテンボス・・・ツッコミの言葉のチョイスとネタをダイジェストで送る卑怯なオチは、コントで見せる巧者ぶりと遜色なかった。なのにやはり線は細い。将棋で言うと桂馬のような技巧的芸風は、決勝への駒がまっすぐに進まない印象も覚える。
POISON GIRL BAND・・・野球のキャッチャーが御飯にあうかパンに合うかを討議するネタ。シュールを超えて完全なアホの会話に私の脳はびりびりと震えたが、反応は今ひとつ薄く、客はホテルのディナーにすき焼きが運ばれてきたような違和感顔を浮かべていた。食べればうまいはずなのに、なんで箸を伸ばさないかなーと思うが、この日は春菊の代わりにホウレン草を入れてしまったのかもしれない。正直言うと途中から自分のたとえが失敗していることに気がつきました。
$10・・・スケジュールの関係からか、なぜか大阪予選ではなく東京に登場。ちょうど浜本がよく見える位置にいたせいで、動きだけでなく顔の表情ひとつひとつまでがキレに満ちていることに驚く。街で見かけて浜本のことを知らなくても絶対芸人だと分かると思う。それでいてネタはごく普通。
流れ星・・・初見だった浅井企画のコンビ。ホスト風とヤンキー風の二人が勢いで押す漫才は、アウェイの舞台にしてはなかなか健闘。しかしネタと関係なく一番笑えたのはボケのヤンキー風が無意味に裸足だったことだ。おまえは疎開先の少年か。
飛石連休・・・普段よりネタの出来は芳しくなく、残念。ツッコミの藤井が登場した時の顔が妻の浮気現場を目撃してしまった旦那級に強張っていたことだけ目に焼きついている。
ジパング上陸作戦・・・ブラックなギャグを要所に織り交ぜつつ、勢いを落とすことなく4分間を突破。普段からこれだけの結果を出せばもっと上がってきてもいいコンビ。ビザの都合上、アルバイトが禁じられているチャドの収入源が気になって仕方ない。
はたして蓋を開けると、東京予選からの決勝進出はアメリカザリガニ、スピードワゴン、2丁拳銃の手堅い出来だった3組に落ち着いた。短時間にギャグを詰め込みまくって、会場をワンワン沸かしていたアンタッチャブルとタカアンドトシは「これ以上何すりゃいいんだよ!」という心境に違いない。タカアンドトシは今以上にタカの髪型を面白くするしか方法はないのだろうか?
さて私の決勝予想を振り返ると、9組中3組が正解なので率としては3割3分。つまり100打席で33安打のペースだから、最初の10打席に10安打固め打ちしたとして、正解率は100%ということになる。我ながら自分の芸人評価能力に鳥肌が立つ思いだ。誓って関係者とは接触していませんから。

11月28日

不毛な行為と知りつつ今年のM−1決勝出場者予想を。
POISON GIRL BAND・飛石連休・チュートリアル・笑い飯・タカアアンドトシ・フットボールアワー・アンタッチャブル・シャンプーハット・スピードワゴン(いろは順)
面白さや事務所のバランスを考えると、こんな感じに収まるのではないかと思う。別にそんなに当たるとは思っていないが、POISON GIRL BANDが出場した時に先見性を自慢したいのでここに記しておく。ちなみに見た目の気持ち悪さ順に並べてもPOISON GIRL BANDがトップだ。

11月1日

シアターDでピン芸人が大集合する「12大シングルマッチ」に。
ほとんどの芸人が初見の中、印象に残ったのはキレるおたくを丁寧に演じた快児、客層を完全に無視していとこい師匠の真似をやり続けた寒空はだか、アウェイの舞台で完全に客を掌上で転がして爆笑を奪い取ったあべこうじなど。あと独楽を操る三増紋之助の伝統芸は生で鑑賞できてありがたいかぎり。ありがたさでいえば、なぜか客席にいた全日本プロレスの川田利明も拝まずにはいられない。私は無関心を装いつつ接近すると、当然ダッシュで駆け寄って握手してもらった。それにしてもNOAHが武道館で興業している夜に、なんと狭い空間にいるのだろうか。
さて今回足を運んだメインの理由は本間しげるが出演したからである。トリで登場した本間が結婚式で血のつながらない娘にスピーチするおばさんを演じると、仕込んだ地雷に客席はバンバン音を立てて反応していた。だが壁に身をよせながら、私はまだこんなものではないと考えていた。十分いい出来だったが本間の上限はもっともっと上にある。早く舞台の筋力を取り戻して、どんどん表に立ってほしい。
ところでこの日登場した渡辺直子というアシスタントの女の子は「すごい美人」で「常に笑顔」で「受け答えは全て単語の反復」で「ピンクのワンピース」。君は白痴か。

10月29日

ルミネで7じ9じ。
金券ショップで手に入れたチケットで、さんざん吟味した末にこの日を選んだのは笑い飯を見たかったから。実際に目の当たりにした舞台は、履歴書の内容、野球の審判、ラグビーのゴールキックネタと、粗いったらありゃしない。
この日一番受けていたのは品川庄司の漫才。品川のフリートークでたっぷり客席を暖めたあと、本ネタをつぎ込む20分間の熱演に劇場は笑いでガンガン揺れていた。ジェラシーが詰まっていて正当に評価できない品川庄司だが、明らかにキングコングやサカイストのようなビートパンク漫才とは一線を画している。勢いのあるドラミングで攻めつつ、決してスリーコードでは終わっていない感じ。このまま好調を維持して初のM1進出という流れにだけはなってほしくないものだ。だって口惜しいから。
横にいたほぼ同年齢女性のアンケートをのぞきこむと、「みんなよかったけど、笑い飯はしつこすぎた」とクールな裁決が。新喜劇でダダすべりしていたリットン調査団・水野といい、私が好きな黒い地下水脈の流れる笑いが評価される日は予想以上に遠そうである。

10月26日

ルミネでチハラトーク。
コントライブの余熱をひきずって足を運んだ身としては、やや低調な舞台。とはいえ終演間際にかかわらず殺人や死の話を目を輝かせて語るJr。やはり油断はできない。

10月20日

国立劇場で「志らくのピン」。
同劇場に場所を移してリニューアルした「志らくのピン」は、毎回大物にプロデュースを委ねる意欲的な構成で、今回の演出は私が愛読する「スタンダップ・コメディの勉強」の著者であり、「極楽テレビ」で景山民夫に「笑いにかかわるな」とコキ下ろされていた高平哲郎。「品川心中」と「マンハッタン」を合わせたシネマ落語にバイオリン独奏を添えるという、太陽神戸三井銀行なみになんだか分からない併合技だった。
だがそんな凝った演目より面白かったのが、ただヨイショしまくるだけの噺「ざる屋」。ネタが終わるやいなや、志らくが「全く身のない内容で・・・」と苦笑したほど生地が薄い物語で、これだけ軽い内容だと一つの層を超えて楽しくなってくる。その逆にやたら重かったのが前座の立川らく朝。どこかどう見ても完全なオッサンで腕まで確かという、前座にあるまじき重厚感がほとばしる男だ。調べたら49歳で本業が医者らしい。何なんだこの人は。専門が企業のエイズ対策指導って、そこまで重いか。

10月18日

紀伊国屋サザンシアターで千原兄弟コントライブ「プロペラを止めた、僕の声を聞くために」。
千原兄弟に渡辺鐘をくわえたメンツで5000円は高くないだろうとタカをくくっていたところ、期待以上の面白さでくらくらする。
マンスリーよしもとのインタビューで靖史が「台本を読んでJrが頭に浮かべた“もやもや”をうまく渡辺が引き出したんやな、と思ったで」とコメントしていた通り、千原の暗い鋭さと渡辺の分かりやすいバカバカしさが融合したコントはどれも上質。中でもスピード違反の運転手を“ムード”にこだわる警官が取り調べする「ムード」、野球のバッテリーがバッターボックスに立った元・同僚にいらつきまくる「久保井」、坂本竜馬の言葉に感化されたアホ生徒二人を先生がたしなめる「日本の夜明け」が特に秀逸。「久保井」におけるバッテリーのキレたフレーズの応酬と、「日本の夜明け」で生徒・四方の俳句を無視しまくる先生のリアクションには笑いすぎて涙が出た。
完成度の高い美術に高低を生かした舞台空間、枷がはずれた自由なコント脳はシティボーイズライブを彷彿とさせたが、シティボーイズの3人組が老獪なジャズセッションなら、この3人は荒くれたジャムバンドだろう。渡辺のベース、靖史のドラムが率いるリズム隊にJrのギター。このバンド、対バンのバンドには100%メンチを切って嫌われていそうだ。

10月17日

ルミネで2hを。後半の1時間のみ。
トータルテンボスは住宅物件にハマる主婦が不動産用語を駆使して旦那と喧嘩するコント。相変わらず線は細いが、筋を一本通わせたコント作りはもっと評価されていいと思う。
本日の目当てはTHE・PLAN9の浅越ゴエ。完全に初見のニュースキャスターコントは、九十九一を思わせる目新しくない設定ながら、ギャグは脱線を繰り返して笑いを切らせない。認知度が低いアウェイの舞台なのに浮動票をガッチリつかんで、ゆるい漫談で固定客からしか笑いを取れていなかった佐久間一行とひどく対照的な出来だった。バッファロー吾郎・竹若が「抜け目ない世渡り上手」と評したごとく、どんなに面白くても心を許せない風貌もナイスだ。宅建持ってるらしいし。
そして最後にはキャラがかぶる浅越を迎え撃つべく、カリカ・林が登場。東西のメガネ&スーツ芸人が揃う歴史的一瞬を目撃して、場内は水を打ったように静まった。全く余談だが、劇場のトイレでニブンノゴ!リーダー・宮地とすれ違う。なぜ客用トイレを利用しているのか、誰か説明してくれ。

10月2日

執筆中

9月20日

執筆中

9月16日

ルミネで「2h」。
ゴングショーに出てきたポロロッカというコンビは、自転車駐輪場の無断駐車をとがめるという近代稀に見るスケールの小さなコント。自転車を無理矢理停めようとするボケが、細かいギャグの羅列でなくてリアルなキャラクターから笑いを生み出そうとする姿勢にちょっと惹かれる。しかし結果は不合格。こういう気味の悪いおかしみで引っ張るコントは、笑いの切れ間が生まれるため客受けがよくないのも分かる気がする。しかしそれを評価するスタッフにも恵まれないものなのだろうか。
MCで久しぶりに見かけたルート33の増田は、長髪にベースボールキャップを斜めにかぶった斬新きわまりないファッションだった。その斜め具合たるや、マンガに出てくる義眼の投手でしかお目にかかれない角度である。ルート33迷走の原因がそのいでたちに凝縮されているようで、私は思わず目を伏せてしまった。

9月13日

別に笑いを期待したわけではなく、とにかく方法論が斬新な劇団だという噂を聞きつけて、シベリア少女鉄道「二十四の瞳」を見るため三鷹市民芸術センターへ。
舞台はある別荘。遺産相続の協議に集まった親族の中で徐々に仲違いが始まり・・・そんな新鮮味のない物語で上演時間70分のうち1時間が過ぎる。期待して劇場に来たことを後悔しはじめたころ、舞台は突然大オチへと急旋回。詳細は種明かしになるのでここに書けないが、腰から下の骨が抜けそうになるほどにバカバカしくてトリッキーな発想。脳は驚愕と呆然で揺すぶられ、気がつくと哄笑を発していた。
演劇批評サイトを見ると、この舞台は異端の演劇としてさまざなま議論の俎上に乗せられている。しかし私からすれば、この芝居は突き抜けたワンアイディアを周到な準備で完成させたバカコントだ。「ハイパーにくだらない」としか言いようがない。平伏。脱帽。ちなみにラストも驚くが、素人に産毛が生えたような役者の技量にもびっくり。だって高校演劇より声出てないんだもん。

9月5日

シアターDで「キュートン」。
増谷キートンを座長に据えたキワモノ芸人集合ライブ。初見の私の脳裏には、会場に到達する前から秩父の夜祭で見た見世物小屋の残像がフラッシュバックしていた。
そんなライブのオープニングは、はたして増谷キートンが一張羅の毛糸パンツで登場。いきなり客席を駆け巡り、客に糸を引かせて股間をあらわにしていく日本の伝統芸能で幕開けだ。私も参加を強要されたので漁師なみの速度で糸を手繰り寄せたところ、「調子に乗るな」と叱られる。
それ以降の集団コントは意外にしっかりした構成で、舞台上をエージェント・スミスが覆い尽くすマトリックスコントなどが秀逸。普段体技のイメージしかないアホマイルドも、幕間の仮想ラジオ番組コントでは言葉のチョイスに才気を感じた。そして説明する必要もないが、ほとんどのコントで大した必然性もないまま肌が露出され、危険分子芸人・しんじに至ってはエンディングで全裸に。というより全裸にさせられていた。
さて出演者の中で唯一、椿鬼奴なる女芸人を見かけた。ちょっと妙齢でそこそこの美人であることが気になってインターネットで検索をかけたところ、この情報過多時代にヒット数が3つという結果に。誰?

9月2日

銀座ガスホールで「お笑い世界一決定戦」。
お笑いの世界一が決まるということでエディ・マーフィーやTAMAYO、エノケン先生やロッパ御大が出演するのかと思いきや、出演はリットン調査団ファミリーということで騙された気持ちになる。バッファロー吾郎にケンドーコバヤシはともかく、関東勢の芸人がサブミッションズにキャベツ調査中とはどういうことだ。チャンピオンベルトでいえばアジアタッグにも及ばない。キャベツ調査中に至ってはこの場で初めて存在を知った。
憤りながら前方の通路側席に座っていると、開演早々に目の前でバッファロー吾郎とケンドーコバヤシがステージに行く手を阻まれる茶番を演じはじめたので、お得感にいきなり機嫌が直る。木村と竹若の作りは小さく、コバヤシの腹は柔らかかった。
そしてステージは大阪公演からのプロレス的なアングルの中で進行。よく見るとネタにゲームで構成された舞台なのだが、プロレスのパロディという大きな枠で包むことで興業の面白さは深味のあるものに。ゲームコーナーでは体のキレだけでなく細かい顔芸も鮮やかな竹若、嘘が口先から滔々と流れるケンドーコバヤシの個人技が光る中、仕切りで登場したユウキロックはかなりの低調モード。NHK出演過多から笑いの筋力自体が落ちている印象すら抱いてしまった。
終演後、同行したビーンズ遠藤が不満そうに「サブミッションズはプロレスネタで芸人受けしてるだけじゃないか」と一言。確かにこの日披露した“小川に倒される橋本”の真似はそれほど一般に理解されるものではないだろう。しかし前に“観客をあおって腰を振る豊田真奈美”の真似を見た私にとっては、十分大衆に歩み寄っている気もする。芸人とプロレスの関係を一度じっくり考える必要があるかもしれない。とりあえずバッファロー吾郎・木村のweb日記によれば、打ち上げはサブミッションズ前田の土壇場であったらしい。何なんだプロレスって。というより何なんだサブミッションズは。

8月30日

ルミネで「カリカ・コント2」。
前回の単独から3ヶ月でオール新ネタをおろすという気概あふれるライブは、家城得意の女装が気色悪い「オトメの校則」、身体のキレで笑わせる「ノック風」、客席からカメラのストロボを利用した「怪物家族」など、カリカらしいコントが続く。
しかし前回に比べると完成度は約6割の印象。得意な設定に絶妙な言葉をのせて世界を形作るいつものカリカではなく、今回は家城のキャラクターと動きに頼りすぎ。電子レンジで表面は暖まったものの、中までは完全に熱が通っていないような半煮え感が残った。
とはいえ圧巻だったのが、最後に持ってきた「放送解禁用語」。前半で披露した“大林素子”が放送禁止という設定の「放送禁止用語」コントを前フリに使い、舞台上でこれでもかというくらい“マンコ”を連呼。“マンコ”を連呼である。もう一回書いてよいだろうか。“マンコ”を連呼である。そこには「ファック」や「ニガー」の差別用語を意識的に口にすることで、言葉の意味を解体しようとしたレニー・ブルースの精神が重なって見えた。というようなことは全くなく、ただ舞台でマンコマンコと言いたいだけであるのが、二人の嬉々とした表情から読み取れた。ところで若者は「マンコを連呼」のことを「レマンコ」と略するのだろうか、「マレンコ」と略するのだろうか。

8月24日

ルミネで朝8時から「絶叫!!サマ〜化け〜ション」。
文化祭でも提案するには勇気がいるセンス皆無のイベントに朝早くから足を運んだのは、出演者があまりに魅力的すぎたためである。
くまだまさし ですよ。 サブミッションズ まちゃまちゃ しんじ アホマイルド (英)田中 有本おっさん ガリットチュウ 増谷キートン
彼らについて情報がなくても芸名を見ただけでホルマリン臭が漂う、吉本邪道芸人の品評会。しかもゲストは札幌からやって来たモリマンだ。
開演10分前に当日券を買うと席はなんと前から2列目。会場に入って客を数えると50人強しかいない。当然、身の危険を感じて誰もいない10列目の中央の席に陣取る。
こんな時間帯からどの芸人も眩いくらいにアホな芸を繰り出すのだが、突出してひどくて素晴らしかったのは(英)田中、増谷キートン、そしてしんじ。たとえば「みーなごーろしー」といったショートギャグを羅列する(英)田中。芸風は昔と変わりないのに、これまで以上に不条理で意味のなさが際立っていた。増谷はサザエさんのパロディで、アワビさん。もう説明するまでもないが、オール下ネタである。朝8時なのに。しんじは説明不能の舞台。絶叫の中で聞き取れたセリフは「米軍が攻めてくる」「アトピーだから体が痒い」「ちん毛」だった。
最後のモリマンを10秒で絶叫させる一発芸大会も増谷の土壇場に。地下のハードSMパーティーで使用されるようなコスチューム+前が見えない革の面をかぶって登場。そのベルセルクの淫猥シーンを思わせるいでたちに、客席はどよめきで揺れていた。朝8時なのに。
MCのインパルスがいい仕事をしていた事が全く浮かばれない、衝撃のイベント。今日出演した芸人だけはあらゆる生態系にジョイントしていないような気がする。これだけ涙を流して笑い続けたイベントは久しぶりだが、とても第二弾があるとは思えないのが不思議だ。

8月23日

ルミネで「大阪ネタごのみライブ」。関西のbaseよしもとから、ママレンジ、ストリーク、ランチ(この日をもって解散)、ビッキーズなどが登場。
達者な青空の漫才にほれぼれする。ベタなギャグが多いとはいえ、速度の安定感は抜群で、ボケの須藤は動いても面白いのがちょっと意外だった。
それに対してこれ以上のぐだぐだがあるのか? と思わせたのがレギュラーの漫才。客からのリクエストで「あるある探検隊」を披露し、お題をつのって漫才しようとするが破綻したまま終了した。ぐだぐだを超えて、もはやぐじゃぐじゃの領域。もんじゃ焼きを生で食べてるようなウェルメイド要素ゼロの舞台だ。とはいえ、そのふざけっぷりが面白いのだから、笑いというのは本当に難しいものである。でも私が支配人だったら、幕が閉まった瞬間にジャンピングニーをぶちこんでシメてるな。
あとビッキーズの須知は生で見るとビックリするほど声がよく通ります。これ書くの4度目だけど、ビッキーズ見たらまた書くから。

8月22日

なかのZEROホールで「お笑い男の星座祭り」。
昼の部は寺門ジモン最強伝説検証と江頭2:50のグランブルー回顧。完全に猪木モードで客席から登場した水道橋博士が近くを通ったので、当然私は頬を差し出し闘魂注入してもらう。
まずはジモンのクランケ全開トークが炸裂。「俺は普段歩くことも立体的に考えているから」「バナナ一本のエネルギーで山6個は越えられるね」「ヒクソンにはリングの外ならば10年かけて倒せる。だってあいつは5年目くらいで闘っていることを忘れるはず」などなど、全セリフが歪んだ珠玉。意識が冴えている平日の昼間に、こんな話を聞いていいのか不安になる。
そして江頭はヌーディスト村潜入レポVTRなどをまじえつつ、アサヤンの江頭グランブルー物語を振り返り、最後には物語の要・奇跡の4分潜水ラストシーンをテレビ東京から借りてきたノーカット版で公開した。ラストチャンスを与えられて水中に4分間も留まる江頭が、水中から顔を出すと完全に酸欠状態でスタッフと客は騒然。これが企画を完遂させようとする真摯な芸なのか、狂っているだけのか分からない。ただどうしようもなく胸を打つ光景だ。
7割強を男性が占めた会場は、あちこちから気持ちの悪いすすり泣きの音が響き、シメるために登場した浅草キッドと江頭は、こぼれる涙を誤魔化そうと必死でギャグを重ねていた。その光景を見て私も堰を切ったように放涙。泣ける。私も泣いたが、全米も泣いた。これ映画化すれば絶対ヒットするのに。エンゾ清水役にはジャン・レノなんてどうだろう。

8月20日

ルミネで2h。
仕事が終わらなかったため、当日券を買って途中入場する。なぜそこまでして見たかったかというと、POISON GIRL BANDの漫才が見たかったから。今日の「久しぶりに車に乗った→ゴールドよりすごい免許」ネタもバカバカしすぎる。ほとんどの男性客は腰を折って笑っていた。しかし対戦は、脳がきぬごし豆腐で出来ている女の子たちが審査員を務めているため、ツッコミの原がカッコよくて、テレビに出ている線香花火に惨敗。何を見てるんだおまえらは。豆腐脳にあわせて湯葉でできたパンツでもはいていろ。

8月14日

原稿を書くプレッシャーに押しつぶされ、どうしようどうしようと街を徘徊していたら、気が着くと劇場の席に腰を下ろしていた。そんなわけでルミネで1じ3じを見る。
のっけから麒麟の登場にテンションが上昇するが、最近の漫才はやけに落ち着いた印象を受ける。相当年下なのに心底敬服してしまう川島の湿ったギャグセンスが、舞台に撒き散らされる光景をもっと見たいものだ。
新喜劇では石田靖の場回し能力に目を奪われる。これだけスキルがあるのに今ひとつ関東で浸透しないのは、今時珍しいくらいに関西純度が高い(大声・前に出る姿勢・ドツキ加減の強さ)からではないか。関東人はたこ焼きも食べるし、薄味のうどんも好き。でもお好み焼き定食だけは最後まで受けつけない構造と同質の現象である気がした。

8月8日

ルミネで中川家単独ライブ「二人息子」。
圧巻だったのは、剛がオトン、礼二がオカンを演じた二幕に連なるロングコント。松本人志のおかんコントと同じ文脈だが、洞察がセンチ単位ではなくてミリ単位まで突きつめていった感じ。「これとこれ、ミクス(ミックス)してなー」「もーそんなん言うと、カラーバットでシャキったるぞー」など、文章では伝わらない魅惑のフレーズが満載だった。喋れない兄、器用な弟というイメージが先行しているが、こういったコントを見ていると二人の力量が拮抗したうえで中川家が成立していることを実感する。オチも合わせ鏡のような構成で、非常にキレイ。
観客参加型のコーナー「扉で遊ぼう」では、率先して舞台に上がって、ギャグに挑戦する素人が何人か存在することに衝撃を覚える。私は舞台と客席の間には深くて暗い河が存在すると思っているが、ある種の素人はそれに怯えることなくひらりと向こう岸に渡って行くのだ。そして彼らは間違いなく舞台上で底なしの沼に足を踏み入れる。

8月6日

ルミネで2h。
あっちこっち芸人バトルで並んだ6組は、チーモンチョーチュー、です よ。、POISON GIRL BAND、配島朋岳、増谷キートン、 バッドボーイズ。チーモンチョーチュー以外は縁の下から出きたような埃臭い芸人ばかり。 今私が熱い視線をそそぐPOISON GIRL BANDは「ネッシーとポッキーの比較」「溺死した経験について」のネタで、本日も引きまくりの漫才。これだけ低い認知度と親しみにくいルックスで爆笑をさらうとは、かなりの力量ではないか? 
さて2h芸人としてトリで登場したサカイストは、目を覆いたくなるほどひどかった。「これ品川庄司がやってたな」「フットボールアワーのフレーズだな」と出所がはっきりしている流行のギャグをあちこちからかき集めてきて、リズムにのせただけの漫才。またこういうのがよく受ける。テレビのテロップに慣れた観客は、「ここ笑うところですよー」とタイミング誘導すればいくらでも笑うものなのか? それではベルに涎を垂らす犬と一緒である。私は終盤見ているのが嫌になって目を伏せてしまった。こんなネタ、誰もが笑うと思わないで欲しい。少なくとも私は客席から冷たい視線を送り続けるから。でもあの程度のセンスでは、視線を「今いくよくるよの弟子を見る眼差し」程度に解釈されそうで怖い。

7月26日

ルミネでチハラトーク。
「好きな漢字は何ですか?」の問いに、「いい質問ですねえ」と反応するJr。漢字ひとつに好き嫌いが存在するJrの内面を垣間見て、そのセンスに私は時折慄然とする。ちなみに好きな漢字は「葬」らしい。
「草冠の下に死があって、それで下がなんたらあって、まーよく出来た漢字ですわ」
いやいやその下の部分もはっきり言わないと。この詰めの甘さがブレイクまでの距離なのか。

7月25日

太田区民ホールで下丸子落語会。
立川志らくの「死神」は知っていた噺よりもオチが巧み。よく志らくが語る「落語の構成力」とはこういうものなのかと思う。
ゲストの柳家一琴は、でかい図体と胡散臭い顔つきがなんともおかしい。真打になる前の芸名が横目屋助平というのも人をなめくさっていて好感度アップだ。


(過去の笑いを見た記録)

(最新の練乳工場)