語らず、笑え

笑いを見た記録・2004年上半期


6月18日/新宿文化センター大ホール「M-1グランプリ・ツアースペシャル‘04」
6月16日/シアターリパブリック笹塚劇場「吉本新人計画」
6月13日/ルミネtheよしもと「R-1ぐらんぷり総集編」
6月9日/新宿ロフトプラスワン「世界キワモノ演芸2004」
6月6日/THUMBS UP「なぎら健壱ライブ」
6月3日/青山円形劇場「千原浩史〜詩〜」
5月15日/ルミネtheよしもと「ルミネWEEKENDライブ」
5月14日/なかのZERO大ホール「柳家小三治独演会」
5月13日/シアターリパブリック笹塚劇場「吉本新人計画」
5月8日/ルミネtheよしもと「ペナルティトークライブ・VIKING」
5月6日/シアタートップス「シベリア少女鉄道・天まで届け」
5月3日/アトリエ春風舎「青年団プロジェクト・忠臣蔵OL編」
5月1日/フジテレビ22F特設ステージ「東京国際コメディフェスティバル」
4月25日/アートスフィア「シティボーイズミックスPRESENTS・ダメな人の前をメザシを持って移動中」
4月20日/シアターVアカサカ「THE PLAN9 13th・西暦200×年4月1日、禁洒法ヲ施行スル。」
3月29日/下北沢「劇」小劇場「OFF喬太郎伝説」
3月27日/ルミネtheよしもと「2丁拳銃・百式」
3月26日/中央会館「立川志らく独演会」
3月17日/駅前劇場「シリーウォークプロデュース・ウチハソバヤジャナイ」
2月28日/ルミネtheよしもと「トータルテンボス単独ライブ・狂い咲き」
2月21日/ルミネtheよしもと「元ジャリズムまつり」
2月19日/シアターD「キュートン7」
1月29日/ルミネtheよしもと「80バトル」
1月28日/「吉本TV」雑感
1月22日/国立劇場演芸場「志らくのピンpartU」
1月10日/草月ホール「清水ミチコのお楽しみ会」
1月6日/ルミネtheよしもと「base vs ルミネ」
1月1日/「オールザッツ漫才」雑感

6月18日

フットボールアワー、笑い飯、アンタッチャブルの2003年M−1決勝進出コンビを筆頭に精鋭10組を集めた豪華なショーケースライブ。
当然のようにネタの質も高かったが、いかんせん1800人収容&舞台上手にはパイプオルガン完備の会場は大きすぎる。爆笑は起きても笑いが抜けるように拡散して、全体を巻き込むようなうねりに乏しく、わざわざ生で見た甲斐に欠けるライブだった。
だがその中で戦慄を覚えたのはスピードワゴン。おそらくあまり舞台にかけたことのないであろう「交通問題のテスト」という新ネタは、螺旋階段を駆け上がるかのような勢いで今までよりさらにワンステップ面白くなっていた。この1年ぐらい、自己模倣に走らないネタは新しい着地点を見つけ出して、井戸田のツッコミは“上手さ”ではなく“よく分からない面白さ”に向かって驀進している。最近ではちょっと比類ない面白さである。
このライブの翌々日、どうしてもスピードワゴン単独ライブに行きたくなった私は、発売日のチケットぴあに並んだ。はたして発売3分後の10時03分、チケットはソールドアウトに。撃沈。私はショックのあまり癲癇を起こして近くの動物病院に運ばれた。
おそらく事務所のファンクラブ先行予約で種が尽きて、一般発売はほぼ皆無だったのだろう。会場に恵比寿エコー劇場なんてWAGEがやるような劇場を選んでいるからこんなことになるのだ。笑いが拡散してもいいから、次回は東京オペラシティか味の素スタジアムでも抑えてくれ。

6月16日

ライブ会場が家から近い、出演者をほとんど知らないという理由で吉本新人計画へ。
アンケートで客が○×采配をして15組の芸人をランキングするこのライブで、今回私が○の評価をくだしたのは3組。セブンbyセブンは“除夜の鐘の叩き方をレクチャーする先輩坊主とその後輩”という、浅草でも氷河期前に滅んだような古めかしいコント設定に一票。平成ノブシコブシはボケの吉村のふっきれたテンションに一票。昔から暗い世界観のコントをするコンビだったが、今日見たかぎりでは芸風が妙にとっちらかってきて、なんともいい傾向である。
そんな中で唯一迷わず○をつけた芸人は、大阪からの客演・ネゴシックスだった。時間割や年表の試験につっこむボード芸と小さな会場の相性がよかったことを除いても、ツッコミの破壊力は一見に値する。
同じツッコミ主体でCGを駆使するピン芸人・陣内智則がシャープでデジタルな芸だとすれば、手書きのボードを叩くネゴシックスは骨太のアナログ芸。陣内がフェンシングならネゴシックスは太刀。陣内がミサならネゴシックスはアニミズム信仰。そう、ネゴシックスが喚起させるのは“土着”の世界なのである――すいません、全部土っぽい肌質から連想しただけです。
ライブが終わり会場を後にしていると、そのネゴシックスがマネージャーと階段を駆け上がって笹塚駅に飛びこんでいった。小さくなる背中を見送りながら、大阪に向かって最終の新幹線に乗ろうとしているのだなと思ったが、あの急ぎっぷりはもしかして出身地の島根まで帰ろうとしていたのかもしれない。

6月13日

世間を取り込んだ感があるM−1に対して、とかく日の当たらないピン芸人大会であるR−1。その原因として思い浮かぶのは優勝賞金100万円、協賛がインフラ通信のパワードコム、テレビもさんざん編集された末に関西限定の放送といった要素だ。ここまでは“中途半端”で一笑できる話とはいえ、2002年第1回の審査員に浜村純、森末慎二が混在しているのに至っては「別に無理してやらなくていいんじゃないの?」と鉄槌で肩のひとつでも叩きたくなるイベントである。
しかしパワードコムが株主総会で総会屋に脅されたのか、翌年から審査員が一新。渡辺正行、ダンカン、太平サブロー、大林素子とシビれる人選に。そんな反省の按配をうかがいつつ、ルミネへ向かう。
芸人の出演枠は、くしくも先日見た「世界キワモノ演芸」と同じ16組。当然、キワモノ演芸がどくだみ荘の共同便所なら、R−1は乗り換え駅のトイレットに匹敵する清潔感だ。
面白かったのは、一人即興大喜利でセンスを見せつけたヤナギブソン、純粋な漫談&不純な笑顔で客をワンワン湧かせていたあべこうじ、最近どんな役をやってもニュースキャスターにしか見えなくなりつつある浅越ゴエといった面々。
しかしどうしても私は、ロバート・デニーロ漫談のテルと長州力を模した長州小力を凝視せずにはいられない。デニーロの物真似はバリエーションに乏しく、長州も基本的にはパラパラを踊るだけ。誓ってもいいがこの二人は次見かけた時も寸分違わぬネタをやっていると思う。とはいえモノマネの神無月同様、つぶしの利かない芸人のみが発する鈍い閃光が二人には見えた。有害光線のみ振りまくホタルのようなものか。最後に蛇足だが、ダジャレ芸の末高斗夢。20歳は老けすぎ。

6月9日

大仰にも「世界」を謳うこのイベント。「世界歌謡祭」で世界を代表するミュージシャンが集まったためしがないので気を抜いて向かったところ、本当に世界からキワモノが集まっていたので驚いた。
そして出場しているのが吉本系芸人にかかわらず、渋谷公園通り劇場で開催されていたキワモノライブ「やけど温泉」の直流であり(なんせMCがパンチUFOだ)、会場が不定期収入者の真剣しゃべり場・ロフトプラスワンときている。案の定、トーナメントに参加した16組は、とりあえず脱いでみるとか、なんとなく気分で差別用語をはさむとか、私好みの過激を取り違えた規格外安値安定型芸人ばかりだ。印象に残った芸人を挙げて行くと、
おこちゃ/漫談に一人コントなど、ネタをちらばす中、2回戦で繰り出したのは陰茎部に軽く紙だけ巻いた全裸姿で1分間ただただリフティングに明け暮れるネタ。あの男根はアスパラのベーコン巻きにオマージュを捧げたのだろうか。裸対決で増谷キートンを制して準決勝進出。
大西ライオン/ライオンキングのコスチュームをした男が、めぐまれた声量&いい声でライオンキングの歌曲をひたすら熱唱。意味のなさと技術の高さの乖離具合が非常に面白かったのに、2回戦で敗退したのは全裸に腰布という露出度がインパクト不足だったせいか。裸のわりに不潔感が漂わない。昔「馬鹿バトルCLUB」で活躍したオペラ芸人・うんこマンからうんこをひいた感じだ。
ヴァンギーナ/矢口真里を5日間沖漬けしたような幼くて暗い顔立ちの少女が登場したので、「お嬢ちゃん、布袋寅泰の「バンビーナ」からとったその芸名はちょっと言い違えると大変なことになるよ!」と忠告したくなる。そんな心配を他所に披露したネタは、皇室・北朝鮮・身体障害者など、見事なまでに底の浅い差別ネタばかり。駒をすすめた決勝では、捨て鉢系芸人にふさわしく青いブラジャーもわずかに見せてくれた。この際、芸名は「ヴァギナ」でもいいじゃん、と思う。
けんじる/決勝までの4ネタが全部脱ぎネタというキングオブよごれ。1回戦の葉っぱON股間INTO THE全裸では、横からお稲荷さんが燦然と瞬き、2回戦のスーツの尻部だけくりぬいた教師ネタでは、保健室前に張られた「ほけんだより/特集・痔」の回でも拝めないほど、くっきりと肛門が見えていた。貫禄のトーナメント制覇。ってだから何のライブなんだよこれは。
ここに記さない他12組も順当にひどい芸人ばかりだったのにかかわらず、客席の大半を占めたのは女性。MCのカリカ家城目当てかと思いきや、家城や特定の芸人に黄色い声援は全く飛ばず、16組のカオス芸にひたすら絶叫と嗚咽だけをあげて帰っていった。さすが歌舞伎町、コンパスが狂う街だけのことはある。

6月6日

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6月3日

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5月15日

ルミネでWEEKENDライブ・怒涛の漫才10連発。
期待を寄せていたPOISON GIRL BAND、パンクブーブー、タカアンドトシの3組が非常に面白く、それ以外の7組も大きなはずれがないという幸福なライブ。
パンクブーブーは消耗度が高いネタのあとに新ネタを織り交ぜるなど、いつ見ても構成に工夫のあとが見られる。気遣いのできるブサイクというのも素晴らしいではないか。
タカアンドトシは「タコの赤ちゃん」という意味ないフレーズの連呼、寄り目でダブルピースなど、一見奥行きのなさそうなギャグでガンガン笑いを起こしていた。新人芸人がやったら悪ふざけにしか見えないツープラトン攻撃がこれだけ面白いところに、技術の精緻さを感じる。
そして最後のトークコーナーでは、多くの芸人仲間からパンクブーブー・黒瀬の金に対する執着の話題が滔々と語られた。気配りができて金に汚いブサイク。もはやいいのか悪いのか分からないが、ブサイクということだけは確かだ。

5月14日

待望の柳家小三治独演会。
1000人収容の会場が完売御礼で埋まる中、気負いなく登場した小三治師匠が披露した演目は「かんしゃく」と「茶の湯」。
しかしあろうことか睡眠不足で公演前にビールを引っかけていた私は、開演と同時に猛烈な睡魔に襲われ、半分意識が飛びながらの落語観賞になる。猛省。
しかし私はよく考えたら寝つきの悪い夜、柳家小三治の落語をMDで聞いて眠る習慣なのだった。当然、退屈なのではなく心地よすぎて眠くなる寸法なのだが、このあたりの矛盾を克服しないと今後も同じ過ちを繰り返してしまう恐れがある。
柳家小三治の落語を聞きながら眠って許されるのなんて、今や円楽さんぐらいだろう。それも上下関係や格ではなく、あくまでも体質の問題として。医者が躊躇なく診断書を書いてくれて裁判でも勝てそうだ。

5月13日

笹塚駅前の雑居ビルの地下2階、商店街のやる気がない電機店よりも薄い存在感で居を構えるシアターリパブリックに初めて足を運ぶ。
公演名の通り、新人を多く起用するこのライブは、参加する15組の香盤が出演前のくじ引きで決定される。ゴングショー当落線芸人が多いせいか、ネタ時間は短めの3分30秒だ。
私が目当てにしていた千鳥は4番目に登場した。そこに4番バッター=主砲のような意味合いは何もなく、三角ベースで打ちたい順に打席に入ったら偶然4番目に回ってきたような状況。早い話、大阪からの客演であるのにかかわらず、関東の新人と同じ扱いなのである! ほんま大阪をなめとんかワレ(標準語のイントネーションで)!? もっとタージンとサンテレビを崇めろ!
気を取り直して千鳥の漫才に集中すると、やや体を重ねた二人の佇まいが若手とは思えないほど絵になるのに驚く。って私はいつから新聞の演芸担当みたいな表現をするようになったのか。しかし野球をレクチャーすると見せかけて話題が脱線していくネタは、会場の空気がかき混ぜられるような圧力を発していた。
他にも、ですよ。、ロシアンモンキーのネタで笑う中、もっとも記憶に残った新人が、役満。脳挫傷の手術で頭の中に釘を残してきたように無表情なボケは現役高校生というふれこみなのだが、その発する妖気が大川興業所属芸人の放つ社会に迎合できない気配とまったく同じなのである。思わずライブが大川興業主催の「すっとこどっこい」と重なるフラッシュバックに襲われた。
そしてネタの最中も高校生は鋭い目つきを散らしながら、話題と無関係に体がうごめき、その怪しさはデビュー当時の加賀谷ハウスにそっくり。そのくせ妙に落ち着いてアドリブを挟んでくるし、このコンビは案外化けるかもしれない。しかし役満を上がる前に多牌で自滅する可能性も大と見た。

5月8日

ペナルティのライブ「VIKING」に。
冒頭の筋肉番付を下敷きにしたゲームコーナーは、30分かけて笑いどころがゼロという事態に愕然とする。しかしそのあとのジョーダンズをゲストに迎えたトークとペナルティのコントは順当な面白さだった。特に元・志村けんの付き人であるジョーダンズ・山崎が披露した「リアル・アイーン」「リアル・ヘンなおじさん」「リアル・コントでバーにいい女が入ってきた時の志村けんの二度見」の真似は絶品。
さらにジョーダンズ・三叉が元・コロッケの付き人であることを告白すると、ワッキーが「本当ですか! 僕、コロッケさんの大ファンなんですよ!」と爆ぜるように興奮するではないか。
なるほど、ワッキーがコロッケのエピゴーネンとするならば、その源は「変な顔→ちあきなおみ」「くだらない動き→薬缶を触るブルース・リー」「野口五郎→野口五郎」「コンパ好き→私生活のゴタゴタ」とあらゆる芸を継承していることになる。
4年ぐらいまでペナルティのコントは、笑いの流行形をいいところ取りして繋ぎあわせたような全く心に迫らない内容だった。しかし潔くコロッケというルーツミュージックに立ち返ったことによって、笑いに骨太感が生まれたのだろう。コロッケをブルースとするならば、ワッキーはレニー・クラビッツなのだ。すいません、自分でも言ってることが適当すぎると思います。

5月6日

シアタートップスでシベリア少女鉄道「天まで届け」。
全体の構成そのものがトリックになっていて、しかも底抜けに安っぽさが拭えないシベリア少女鉄道。例によって仕掛けについてはふれられないが、今回もバリンジャーの推理小説を戸梶圭太の文体でリライトしたような物語だった。
しかし過去にたった3回しか見ていないとはいえ、当たるか外れるか方法論次第のこの劇団のチケットを買うのはギャンブルで一点張りする気分である。前々作「二十四の瞳」は5倍の配当で、前作「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」では銭をまるまる失い、「天まで届け」は3・2倍といったところ。チケット相応の満足度に1倍、異端のアイディアに1倍、舞台の美しさに1倍、あとは挿入歌のリンドバーグと大塚愛に0・2倍を。

5月3日

アトリエ春風舎で青年団プロジェクトの「忠臣蔵・OL編」。
浅野内匠頭の忠臣であるOLたちが休憩所でどう仇を討つかを討議するという、他人に説明しているだけでプシコに思われるであろう説明不能の芝居。OLに置き換えることで忠臣蔵の構図を浮かび上がらそうとしたのか、とち狂ったOLが酔狂な会話をしている様が面白いと思ったのか、奇才・平田オリザの真意は全くつかめない。しかしどんな見方をしても観賞に耐えうる重層的に面白い舞台で、特に高橋緑という太った女優は食事をしているだけで笑いを誘う。これで50分・1500円は安い。
なおこの芝居には姉妹編である「修学旅行編」や「劇団編」もあるらしい。この際取り返しがつかないほど調子に乗って「OH!エルくらぶ・忠臣蔵編」も作ってほしい。

5月1日

友人の招待にあやかって東京国際コメディフェスティバルの第2回ホープ大賞・予選C&Dブロックを観戦する。
31の事務所から110組の芸人が出場したトーナメントは、久々に見る玉石混合の舞台で、安田大サーカスはテレビで見たのと寸分違わないネタであるのにかかわらず爆笑する。生で見た方が異郷感を会場中に放射して、もう笑うしかないような妙なオーラが漂っていた。似非アクロバティックな動きで強引にサーカスを偽っているが、冷静に見たら完全に見世物小屋だと思う。
そして久々のミラクルを垣間見せてくれたのが、Cブロックに出てきたエキサイティング・トリガー所属の女漫才師・レトルト。連休も手伝ってファミリー層も多い会場は笑いに甘い雰囲気だったのに、二人が登場した途端に空気は一変。笑いがそよとも起こらなくなった。別に二人のルックスが気持ち悪かったかとか、出オチが滑ったとか、客席に柄杓でボンカレーゴールドを撒いたというわけでもない。レトルトだけに。本当に“なぜか”ものすごい凪ぎが訪れてしまったのである。会場の最後列からも二人の表情はいたたまれないほど凝固して、深海のような静寂の中を目が見事に泳いでいた。
なおDブロックには同事務所からアバンギャルドという漫才師が登場し、レトルト同様に客席を藍よりも藍いグランブルーに染め上げた。一体この事務所は何のトリガーを引いてるんだ。

4月25日

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4月20日

シアターVアカサカでザ・プラン9公演「西暦200×年4月1日、禁洒法ヲ施行スル。」
ある規制がかかったため、ヒーローものの芝居が封じられた劇団が「ベタ」「シュール」「下ネタ」などをテーマにアレンジしていくコント群がよい出来。シュールに至っては、頭にハンガーをはめたり沢庵をのせたりと10年前のよいこから一歩も出ていない感覚もすごい。
終盤は泣きに走っているように見せかけて、結局ひねったオチが。しかし演劇にしては物語のうねりに乏しいし、コントにしては笑いが細い。最後の挨拶で30秒に1ボケを繰り出していた久馬は眩しいとはいえ、際立つのは脚本の上手さであって、能力が高い5人を持て余しているような気がしてならない。つくづくシアターVアカサカは笑いの神様が下りない劇場である。こんなにゴムで引っ張られる灘儀が四足歩行で面白い動きをしているというのに。

3月29日

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3月27日

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3月26日

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3月17日

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2月28日

ルミネでトータルテンボス単独ライブ「狂い咲き」。
私が2年間にわたって「チャラチャラした見た目のわりにネタの筋が一本通っている」「でも線は細い」「さらに言えばボケの大村は笹塚在住」と繰り返し唱えてきたトータルテンボスのルミネ初単独ライブ。会場に向かうと他の客も私と同じく妙な期待感を覚えたのか、入りは満員である。
オープニング映像では、スーツのまま海に消えて行く二人、全裸でスノーボードする二人、台車で笹塚駅の自動改札を突破する大村・・・と気合の入った出来に期待値はぐんぐん上昇する。しかし肝心のコントは尻すぼみで、得意の言葉遊びは練りこまれておらず、単発のギャグは単なるダジャレモードに。前日まで水疱瘡で倒れていたミラクル芸人・藤田に至ってはセリフが体に入っていなかった。病気のハンディを克服して完璧な舞台をこなしていたら、二代目・北島マヤを継承できたのに。
唯一大笑いしたのは、藤田の甲子園静岡県大会テレビ映像。投手としては打たれまくり、打者としては相手から完全に見下される体汰楽ぶり。野球マンガの1、2巻(まだ三流野球部と転校生が反目している段階)にしか出てこないヘタレの高校球児を初めて現実で見た。

2月21日

ルミネで「元ジャリズムまつり」。
先行予約も何もないはずなのに発売5分でチケットが完売してしまったこのイベント。運良くプラチナチケットを2枚入手した私は、普段通りお笑い好きの友人・ビーンズ遠藤を誘って劇場へ。ジャリズム復活というミラクルに胸騒ぎを抑えながら開演を待っていると、隣席で遠藤が囁いた。
「実は今日がジャリズム初めてなんだよ」
「いやあ俺だって生でジャリズム見るの初めてだからなー」
「違うって。ジャリズムのコント、がなんだって」
「うん? 何言ってるか全く分からん」
「・・・俺、ジャリズムのコント、今まで1本も見た事ないんだ」
今回のチケットが入手できなかった皆々様! 私、なんと謝罪してよいものやら! G列25番に座っていたのっぽ野郎は「葬式DJ」も「バカドールシアター」も「退社式」も知らないでライブに来たのです! 最後はナメリカのネタですか。
しかし冷静に考えれば、この十数年、関東のお笑い番組はまめにチェックしていた男ですら、ジャリズムの認知度はこの程度という事実。二人は全国区到達の旗に指先ひとつ届かなかった存在なのである。実際、劇場で交わされる会話はほとんど関西弁で、今日のルミネはリトル・ナンバと化していた。
やがて猛烈な拍手の中、幕が上がって軍隊の格好をした元(はじめ)ジャリズムが登場。「恥ずかしながら帰ってきました!」と敬礼しながら緊張で強張る二人の表情は、完全に帰還兵ではなくこれから戦地に向かう顔をしていた。そこから新作コントが3本、雨上がり決死隊を迎えてのトーク、それとは別にメッセンジャー、水玉れっぷう隊との同期トーク、渡辺の新しいキャラを考えるフリートーク風味コントと一気に2時間半が過ぎていく。
コント群(工事現場を訪れるオペラ歌手・不思議少女系弁護士・父の再婚相手がロシアの砲丸投げ選手)は、相変わらず卓抜なアイディアが満載。しかし脚本の巧妙さばかりが目立って、演者として渡辺の狂気があまり見えてこない気も。そして5年の空白を抱えた二人の健は当然のように固く、舞台上の振る舞いが柔軟な雨上がりやメッセンジャーと並ぶと、ブランクの差は歴然に。そのメッセンジャー・会原は「渡辺は人生思い通り。構成作家としてガンガン儲って余裕ができたとこで、ちょっとコントやりたいな〜思ったら山下に声かけて軽く復活やろ?」と、復活祝福の暖かい空気に液体水素をぶちまけるような、やしきたかじん級の直球トークをかましていた。ロデオ馬でもあんな無茶はしないだろう。
はたして舞台がはねた。
すると開演に10分遅刻してきた見ず知らずの隣席の子に「私が来る前、なんか他にコントやってました?」と訊ねられる。私は彼女が最初のコントに間に合ったことを伝えた。たとえ遅れたとしても些細なことだ。活動継続がはっきり宣言された今夜以降、お笑いを見る者全てがジャリズムに間に合ったのだから。
携帯電話を取り出し関西弁で興奮気味に語りだす彼女を横目に立ち上がると、遠藤が「いやー宮迫が面白かったね!」と笑みを向けた。

2月19日

シアターDで「キュートン7」。
舞台上における演者の尻露出時間が、わんぱくちびっこ相撲大会に勝るという稀有なライブは、前回見た公演のコントよりも完成度の緻密さが欠けていた。終わってみて印象に残ったのは、アホマイルドの場回しの安定感とキャベツ確認中の立ち込めるような売れなさそうオーラ、それにオープニングとエンディングに流れていた大塚愛「さくらんぼ」だけというのは、少し寂しい。
しかし股間にプロペラをつけたり、全裸の腰周りをモザイクが描かれたアクリルで囲ったりして、客席を駆け回るくまだまさしの姿を見ていると、そんな批評は全く有効でない気がするのだった。

1月29日

ルミネで80バトル。
年が明けて再編成された「ルミネ道場」は右の鼻穴から髄液が、左の鼻穴からはタミヤカラーが流れそうになるほどしょうもない構成だったので警戒して足を運ぶと、同じく若手中心の80バトルはネタ重視の密度が高い舞台だった。
POISON GIRL BANDはアテネオリムピックの話題から高橋尚子を賛美する漫才。相変わらずネタはかぶらないし突き抜けて面白いが、私の期待値が高すぎるせいか、やや物足りなさも。
それとは逆の印象を抱いたのが、じゃぴょん。の学校コント。この29年間の人生でじゃぴょん。に何かを期待したことがなかったのが効を奏して、笑えるポイントが2箇所だけだったのにかかわらず、ひどくお得感を覚える。つまり10年近いキャリアは圧力があるギャグ2つで舞台を成立させられる技術を生むということか。ペナルティも突然化けたし、継続は世界の何を変えるか分からない。これからもじゃぴょん。は何も期待しないで見ていこう。

1月28日

都庁の校内放送こと東京メトロポリタンTVで、土曜の夜10時から『吉本TV』が放送されている。
TV用収録ではなく、ルミネの舞台でかけられた吉本芸人のネタをそのまんま流すだけという、聖路加センターから東京湾を映す早朝中継のような趣きの番組だ。
そこに先日登場したのが、プラズマテレビで真空管故障が起きるぐらいの可能性以下でしかテレビに登場しない芸人・増谷キートン。今日のネタ「男だけの水泳大会」もただひたすら脱いで自分の裸をさらしたがるいつも通りの安定した芸で、テレビを介してもみるみる冷却していく客席に自分が座っているような心持ちになる。さすがはキートン。
しかしよく考えるとこの裏では『エンタの神様』が放送されているのだった。「一般人にも分かりやすい笑いを」というコンセプトのもと、ふんだんに投入されたテロップが視聴者をげんなりさせ、結局芸人をひたすら消耗させているだけのあの粗悪番組。かたやMCも大した編集もなく、どど退きの舞台までノーチェックで流してしまう『吉本TV』。
両番組におけるスタッフの労力と制作費は、アメリカと瀬戸内海の小島ぐらいの国力差があるのは一目瞭然だが、どちらが正確に芸を伝えているかは言うまでもないだろう。
定点観測していないと見えてこない笑いがある。スタッフの視聴率至上主義によって加工されまくった『エンタの神様』は、それを何も語らない。今、テレビの画面では、赤・黒・黄色の三色海パンをはいたキートンが「ドイツ代表!」と叫んでいる。

1月22日

国立劇場演芸場で志らくのピンpartU。
シネマ落語「天国から来たチャンピオン」を皮切りに、「男はつらいよ全48作品ひとり語り」、そして落語解説つき「文七元結」。
「文七元結」は今回のプロデューサー・山本益博発案によるもので、落語の粗筋や解釈を説明しながら演じるという企画。その趣旨説明だけではよく分からなかったが、いざ始まってみるとこれがとってもとっても面白い。登場人物の心理描写解説、映画にするならどんな配役か、噺家別による演じ方の違いを盛り込んだ熱演は、全客が放った「最初から「文七元結」やった方が早いんじゃないの?」という眼差しを返り討ちにしてしまった。見ず知らずの他人に金を恵んでやる主人公の態度が全く理解できなかった私は、志らくが何気なく呟いた「江戸っ子なんて金は汚いものと思ってる」の一言で、突然登場人物が立体的に見えてきたのである。って安藤鶴夫か俺は。しかし矛盾と野暮を孕んだ、こんなパースペクティブ落語は志らくしか出来ないだろう。
最後にリクエストした山本益博が登場して絶賛を送ったが、明らかに提案していた時点ではこんな仕上がりになることを予想していなかった顔だった。グルメ評論家が料理人に適当な注文をしたら、目が覚める御馳走が出てきたような状況。雁谷哲もこんな仕事してるのだろうか。

1月10日

草月ホールで清水ミチコのお楽しみ会。
私が初めて清水ミチコを見たのは、テレビ初登場の『冗談画報』ライブだった。その芸に衝撃を受け、半年後『笑っていいとも』に抜擢されると毎週新ネタをおろす『おタモしみラジオショー』だけは毎週ビデオ録画していたものだ。あれから15年。ついに初めて生ライブ鑑賞の機会が訪れた。それほど満を持したせいか、直前に某大物Vシネマ系俳優(ここではイニシャルしか明かせないが、AI川・SHOWさん)の取材が入ったため、開演に15分遅刻する。
同じように待ちかねた大人の客が多いせいか、会場は非常にいい雰囲気。ピアノ芸とモノマネ芸の二本柱を軸に展開するネタはどれも質が高く、特に圧巻だったのが井上陽水や谷村新司から森山良子ファミリー、ハイロウズまでの曲パターン分析をピアノで弾き語る「アーティスト別作曲法講座」。批評性に富み、音楽的に完成度が高く、おまけに笑えるという、21世紀にガッツ石松をネタにするはなわがコード一発でふっとぶような作品群だ。またどのネタも手触りがひどく柔らかで、艱難辛苦して作った気配が見られないのにも驚く。
終盤には矢野顕子の「達者でな」を聴いて、同じ曲が奏でられた『冗談画報』のステージを私は思い出していた。小さな感傷に身をゆだねながら、この人のライフワークは矢野顕子と桃井かおりではなく、実はユーミンと中島みゆきに対する悪意なのではないかと思った。

1月6日

ルミネで「base vs ルミネ」。
ルミネ芸人とbase芸人4組ずつによるネタとゲームの対抗戦。ネタでは「友達100人できるかな」の替え歌を披露したパンクブーブーが、相変わらず好調をキープしている印象。笑い飯も面白いが、M−1バブルで実力より3割増しウケている感じだ。
そしてネタの時点で関東組と関西組に感じていた小さくない距離は、ゲームコーナーで一気に開く。大勢でワチャワチャ小さなボケを繰り出すルミネ組に対し、統率の取れたチームプレーでも個人技でも大きな笑いをかっさらうbase陣営。私は関西芸人至上主義でもなんでもないけれど、“自由奔放にボケてればいい”ルミネ芸人と“いいボケを繰り出さなければ生き残れない”base芸人の差を目の当たりにした気がする。特に笑い飯・西田のボケはいちいち深みがあって、それに続く麒麟・川島、天津・向のギャグも秀逸。だがエンディングのTシャツ交換でさらした向の裸体には、客席から笑いがそよとも起こらなかった。水が踊るような白いぶよつきに白子でも思い出したのだろうか。

1月1日

新年早々、関西から送られてきた「オールザッツ漫才」のビデオを観賞する。
トーナメントで心惹かれたのは、トータルテンボスと南海キャンディーズ。トータルテンボスのツッコミ・藤田が繰り出す実にバカそうな言語「はんぱねー」「ちょーきびー」「ねむてーこといってんじゃねーよ」はあまりに浮世離れして、関西人にはもはや共通語を超越した方言にしか聞こえないのではないか? 実際にあんな奴は渋谷を捜したっていない。生息しているのは千葉のファミレスだ。それにしても無名で関東からの刺客という二大ハンディをはねのけて大健闘だった。また南海キャンディ−ズは、山崎のアフリカのパーカッションを思わせる異質なリズム感が耳に残る漫才。近くにいるだけでセクハラで訴えられそうな粘着質の山里とのコンビは、どの方向に化学反応を起こすのだろうか。中堅のネタ組では味噌壺を股間に当てるケンドー・コバヤシの無敵ぶりに肝を冷やした。
予想外に面白かったコーナーは、「ベストヒット・オールザッツ」。芸人が上手な歌を本気で熱唱すればするほど場は醒めるはずなのに、うっかりすると感動しそうな澄んだ声&せつない節回しで、歌いあげるごとに面白係数が上がって行くレギュラー・松本は無意味にすごい。あと洋楽もお笑いもよく知らない知人にプラン9・灘儀のボン・ジョビの当て振りを見せたら、一般人が暮らす圏内へ去っていく後姿を見てひきつけを起こしていました。


(過去の笑いを見た記録)

(最新の練乳工場)