年末号のAERAを読んでいたら、1年分のダジャレコピーを一挙に掲載していた。 1つ読んでも尻子玉がぽろぽろこぼれ落ちるのにそれが50連発。参考に少し転記すると、 「黄金週間・うれしいなリンゴ」「お堅い大統領候補ですね、ゴアゴア」「シラなカったワ、教授」 何だこのギャグは。戦後の漫才か?早慶戦か?上の丸い真空管ラジオから流れてきて荒んだ国民の救いになるつもりか? さて俺は年末にノートパソコンを買ったため、今まで使用していたマイコン(アタリ社)搭載のメールソフトを使わなくなる。 そこでAERAに対抗して発信済みメールタイトルを選んで約50載せることにした。 著作権はないので好きに使ってください。ソフトの件名順に選んだのだが、元ネタを知らなくても俺は関知しない。
「UNOを忘れて修学旅行中止」 |
「女子アナ」(フジテレビ系・毎週火曜日午後10・00〜10・54)
「ロケット・ボーイ」(フジテレビ系・毎週水曜日午後9・00〜9・54)
「白い影」(TBS系・毎週日曜日午後9・00〜9・54)
「気分はパラダイス!」(毎週水曜日午後9・00〜9・54)
「ロケット・ボーイ」(フジテレビ系・毎週水曜日午後9・00〜9・54) |
メニューを閉じた私はボーイを手で招き寄せた。金に染めた髪の根元からブラウンの色が覗いている。
年は20に届かないとふんだ。 「坊や、アムステダル・ビアはここにはないのか?」 「何ビアっすか?ウチ、キリンしか置いてないッスよ」 私は口端にくわえていたマルボロを円盤に似た形状の灰皿にこすりつけた。質問をした私の方がミス・テイクを 犯していたようだ。灰皿の趣味からメニューの中身を推測するのは難しいことではない。 「政府は未成年への酒販売に神経過敏になってるようだが、その前に定めなければいけない法律があるようだな。 ワインのつまみにナッツを出す店とドイツビールを扱わない店に、バーを名乗る資格を与えないってことだ」 「お客さん、生中でいいんスか?」 ジョッキのワンショットが550円であることに肩をすくめて抗議してみせたが、ボーイは気づかずに踵を返していった。 未成年と酒の話をするにはあと10年月日が経つのを待つか、私が10年若返る薬を手に入れる必要がある。 私はペーパーマッチで煙草に火をつけて、マッチの燃え滓でコースターの裏をなぞった。 その字が薄暗い店内でも読めることを確認して、正面に座った女にそっと渡した。 女の頬に赤みがさしたのを私は見逃さなかった。どうやらフィリップ・マーロウが提案したこの手法と テディベアのコレクションは、あと100年は女性を魅了していくに違いない。 「何言ってんの、あんた?」 女は照れ隠しか、飴色にいたんだ前髪をいじりながら私を睨みつけ、スラングを口にした。 「初対面の女性にあんたと呼ばれたことはないんだ。母親が俺を産んだ時もあんたとは呼ばなかったからな、ベイビイ」 「つべこべうるせーよ。コースターの裏に「やらせろ」って書いてあるから、あんたっつってんの」 「「やらせろ」だって? レイディが人前で使う言葉ではない」 「バカじゃねー? 書いたのあんただろー?」 その顔面に塗ったメイクがあまりにも度を越して黒かったので「ホーク」と呼んでいた女がおしぼりを投げて来たので、 私は横の女に声をかけることにした。さっきからホールトマト・サラダに地中海ドレッシングをかけすぎることを 注意しなければいけないと思っていた女だ。これではファースト・トマトの酸味が台無しになってしまう。 「まず私は依頼人に二つのことを聞くことにしている。ニューヨーク・メッツの監督があと何ヶ月で交代すると思うか、 そしてどこに住んでいるかだ」 「あ、なに?私に言ってるの? 秦野だけど」 「通うには遠すぎる。しかし都心に住むには近すぎる。実家?実家?」 「バカにしてんのあんた? 一人暮らしか知りたいわけ?」 「なかなか鋭い反撃だ。君なら公開討論でミセス・ヒラリーの口を封じることが出来るかもしれない」 身の危険を察知した私は身を寄せて拳を合わせると――これは敬愛するジョージ・フォアマンのスタイルだ―― おもむろに立ち上がりプライベイト・ルームへ駆け出した。 古くなった蛍光燈が小刻みに光るルームでは、私の相棒が先に用を足していた。酔いで赤らんだ頬を歪ませて容赦のない質問を浴びせてくる。 「どう調子? おめー全然ダメそうじゃん」 相棒のディックから目を逸らさずに私はマルボロをくゆらかせた。 「ダメっす先輩。俺の横の女なんて秦野っす。もう終電気にしてます」 「バカじゃね、おめー? 今日の女の子、上智短大だからあのあたり住んでんだよ。寮もねーから一人暮らしだぜ」 「マジっすか? 早く言ってくださいよー」 「どうでもいいけど、トイレ禁煙な、おまえ」 相棒が去ったあと、私は窓の外に広がる宇田川町の風景を見下ろし酔いと戦いながら、今日の合コンの作戦変更プランを立て直そうと決めた。 とりあえずさっきホットドッグ・プレスが提唱していた「男臭い人に抱かれたい!」特集を 一度リセットしなければいけないだろう。 しかしそれは、私にとってモハメド・アリが改宗するくらいの勇気しか必要としない。 私は顆粒の胃薬を咽喉に流し込んで、来るべき一気飲みに備えた。 |