みなさん、こんにちは。つみきみほです。ランチョンランチョン! 今回、青森県在住の伊藤くんから「青森」のお題をいただいたので、以下のような作品をしあげました。 もし青森県民の方が読むようなことがあったら、私にはまったく悪意がないことを分かっていただきたい。 抗議をしたい先住民の方がいらっしゃたら、伊藤くんの実家の住所、携帯番号、 ポストに投げ込まれたら嫌な節足動物の種類を教えるから許してください。 |
目を閉じると、リオのサンバがすぐそこに。 おいでやす、青森。 彩の国、さいたま。
以後むつ原発開発のぐだぐだを経て、金八に出てくる巡査、底抜けエアラインのメガネ等、多くの文化人を輩出し今日に至る。
四季は春夏秋冬ではなく、ねぶた前夜・ねぶた・ねぶた後日・それ以外で分類される。
盗難にあったり、紛失した時に再発行できるので現金はトラベラーズ・チェックで持ち歩いた方が便利。 銀行やホテル、カメヤみなみチェーンで両替してもらえる。 銀行は国営のみちのく銀行が安心。現在イラクに林檎を輸出した疑いからEUの経済封鎖を受けているため、都市銀行はない。
東京から青森空港へのアクセスは、東京からKHB(ダリアビア航空)でロシアのハバロフスクを経由して、 ハバロフスクから青森(水曜、日曜のみ運行)へ。政情不安定、プーチン(肉食ピーター・バラカン)の 不機嫌によって頻繁に欠航するので注意。青森空港では名物のオーバーラン饅頭を売っている。 イメージキャラクターの大場蘭(おおば・らん)ちゃんもよろしく。
過呼吸/あまりの空気のうまさに都市人が陥りがち。カコQと書くと、とてもかわいい。 食中毒/道に落ちている食べ物には絶対に手を出さない。名前が書いてあったら交番に届ける。 狂犬病/野犬は基本的に狂犬病の予防接種を受けていないので、絶対にこちらから噛みついたりしない。 マラリア/ハマダラ蚊(日本には生息していない)に刺されることで感染し、マラリア原虫が赤血球に寄生する病気。 発熱予防内服薬としてはクロロキン(日本では入手不可能)が有効。 この薬を手に入れるには、マラリア感染の危険を犯してでもアフリカに行くしかない。
御神体であるアスパム周辺の目抜き通りを「ねぶた」と呼ばれる装甲車、ガーディアンエンジェルス(東奥日報派)が闊歩する。 そこに「ねぷた」と呼ばれる巨大木馬に跨った傭兵部隊(陸奥新報派)が襲撃し、 棟方志功愛用の彫刻刀で刺しあい、前田光世じこみのバーリ・トゥードで首を絞めあう、青森にゆかりの深い伝統芸能。 語源は「嬲(なぶ)る」から由来している。 期間中は危険なので市民は一歩も外に出ない。観光はもってのほか。話題にしただけで呪われる。
同じ自治区内でも、青森市民同士は浪岡の言葉は分からない、藤崎の言葉は分からないと反目しあう傾向があり、 その背景は複雑なので旅行者が口を挟むのは大変危険。挟む場合は必ず標準語で。 旅行に役立つ津軽弁は以下を参考にしていただきたい。
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ムスタン帝国のやらせドキュメンタリーが見たくなって、NHKスペシャルにチャンネルを合わせたが放送していなかった。
残念。仕方なく「世紀を越えて・疾走/人間の限界に挑む」を見る。 この100年間でマラソンの記録は1時間も短縮された。限界の能力を出すために薬物使用が繰り返されたわけだが、 筋力をつけるドーピングというのは前時代的発想で、最近は血中酸素を増やす薬が開発されているらしい。 番組ではいかにも理系人生まっしぐらというオーラを漂わせたマッドサイエンティストがインタビューを受けていて、 巨大回転板に人をくくりつけて確立の実験(志村けんの「だいじょうぶだあ」のルーレットマンそのまんま) をしていたのだが、レバーを止めて彼が語るには「次にいじるのは脳しかない。そうすれば2時間をきれる」そうだ。 要するに運動中の苦しい感じを除いてしまうということだ。科学者は満足そうに頷くと、 今度は人を巨大サイコロに詰めて長階段の上から落とす確立の実験(スーパージョッキーの罰ゲームそのまんま)に打ち込んでいた。 予想はしていたが、その領域まで手を染めるのか。ここまでくると、手垢のついたギャグで恐縮だが、 一度クスリ全面解禁のオリリンピックをする必要を感じる。そこで本当の限界を競えばいい。 例えば100メートル走なら、ドラッグレースのエンジンをかついだ走者がスーパー・ラン。 しかもスニーカーには赤字で「ターボ」と明記。 横の走者は馬に跨ったしなやかな走り。この馬の尻にもプジョーエンジンを搭載して速さは倍増。 その横の走者はごく普通の容姿で周囲を油断させるのだけれど、実は双子で、ゴール地点にはそっくりな弟が潜む。 そしてゴールテープに見えるものは実は白く染めた昆布で、観客は全員執行猶予中。 はためく日の丸の中心は潰れたトマト。星条旗の星はマンガでゴッツンコした時に飛び出した星のコレクションなの。 1等賞には景品にノート&実家を放火。表彰台は切り株を利用するんだけど、3等の木の伸びが早くて逆転優勝。 表彰状は新聞から切り抜いた文字で綴られた王様訳の「イマジン」。イヒ。イヒヒ。 スタンディーングオベーションは会場中が一斉に尿意を催した黄金の一瞬。 スタジアム一杯に水を入れて5番ゲートを開放するとそこから妊婦だけが流される仕組み。 聖火代りにガソリンを入れたバケツリレー。それを大佐が滝にうたれる上流から流す。 閉会式では白人4人と黒人6人の割合で手をつないでクルクルまわって、やや黒いグレーの竜巻が発生。 五輪の輪のひとつは地下帝国への入り口なんだけど、君には教えられない。 これでどうだー。うおー。この土地はおれのもんだー。年貢なんか納めねーぞー。 と、脳をいじるとこれくらいのレコードは軽くいくと思う次第だ。 何だか今回は中川いさみの「うなされ上手」みたいなネタ出しだが(こんなに狂ってないけど)、 どうか明日発売の「ぴあ」のネタがかぶっていないように祈るばかりである。 |
オーリンピックの開会式を見ると、あれだけ批判しておいて結局見ている俺であるが、車椅子の人が聖火ランナーを務めているではないか。 前のオーリンピックの宇宙飛行士のように車椅子の下部から火を吹いて、もしくは乗組員がバネか何かの勢いでそのまま空を飛ぶ演出かと思ったが、 そんな事もなかった。パラリンピックでもないのに、これから健康な肉体で競う場に何故障害者が必要なのだろう? 誰か言ってくれないだろうか。あなたの肉体はこの場において不愉快ですよと。 俺はホーキング青山という芸人を思い出さずにいられない。 もう6、7年前になるのか、お笑いのライブに足を運ぶと客としての彼の姿をたまに見かけた。 肘、膝のところで四肢が先細くなった未発達の重度身体障害者で、高度な車椅子を操って移動していた。 銀座の地下でやっていた大川興業のライブではブレイク前の江頭がかつぎあげて運んで誘導していたものだ。 彼はお笑いが大好きらしくて、ついにそれが高じて芸人を目指しているという話を耳にはしていた。 さらに大川総裁からホーキング青山の芸名も頂戴したらしいと。 今になると乙武君と比較してしまうが、決定的に違うのはそのフェイスだ。 麻布の天ぷら屋で時給のいいバイトをかましながら要領よく大学の学部を主席で卒業しそうな凛々しい乙武スマイルに比べ、 青山はパチンコ屋でジャージの上から炎が出る勢いで股間を掻いてそうなドカタ・フェイス。 顔の差が両者の運命を分けたと俺は思っている。後者のようなもてない顔の作りの人間は、世界への違和感を笑いで埋めようとするのだ。 当時その彼を特集したドキュメンタリーがテレビで放送していたので、俺はそれを見た。 明らかにビートたけし系芸人の影響を受けた口調である彼は饒舌で、ごく正常に話せる、というか結構喋りはたつ。 車椅子のまま舞台にあがって漫談をしているのだが、その彼を取り上げた新聞記事を見て、彼が怒る映像があった。 「自分の障害をネタに」という見出しが気に食わない。障害抜きのネタで勝負しようとしているのにこういう扱いになってしまうと。 こう書くと湿っぽい感じがするが、青山は明るい性格らしく自然に語るので、悲壮感は漂ってこなかった。 ある日、彼は近くの区民会館を借りてライブを行う。同じ都営住宅に住むジジイババアが客として200人駆けつけた。 青山は舞台でアダルトビデオを借りに行って困惑する、たいして面白くない話を車椅子のまま熱演するのだが、 これにジジイババアがドッカンドッカンの大爆笑。椅子に電気を流してタイミングよく笑う工作だった。 俺は世界でもっとも澱んだ空気を感じながら、思った。 ごく限られた能力を持つ選ばれた者しか舞台で笑いを取る権利はなくて、 肉体に客の同情を誘うレベルの欠陥があったらその時点で芸人の資格を剥奪される。世界は残酷にできていると。 そして青山の身体は笑いを取ることにもっともそぐわない形をしていた。 翌日青山の自宅を訪ねたカメラが「昨日、うけてましたねえ」と水を向けると、青山はあまり見せない渇いた表情で、 「まあ、でも・・・同情して笑ってくれていたんじゃないですか・・・」と呟いた。 俺にはどんな時間をかけても青山の気持ちは理解できないだろうと思った。 ドキュメンタリーの中で青山は笑いをとることに熱意を燃やす。その姿は何かで救われたい欲求であると同時に、 自らを汚そうとする行為のように見えて仕方がない。そして何年か経った今、青山の消息は聞かない。 だから俺は大勢の健常者が、思考停止状態で障害者を暖かく迎え入れる映像を見ると不愉快になるのだ。 ひたすら世界のいびつなかたちを拍手の量と感動の声援で隠そうとしているようにしか見えないから。 ただ日本選手団がコートを脱ぐと全員機械の体というオチだったら許してやってもいいなとは思っている。 あとサマランチがロボトミーになって永久に会長に就任するとか。 |
悩んでいる。世界に対して自分の意志を誇示しなければいけない時はいつかは来る。そして私にとって今日がその日だった。 私も最後までオーリンピックの開会式にテレビのチャンネルを合わせようか、悩んだ。 しかし今までも、そしてこれからもオーリンピックに批判的である私にとって、それは許されない行為である。 そこで私はアンチテーゼとして、見たくもないテレビ東京「芸能界!最強女性軍団秘密公開フェスティバル」を見ることにした。 しかしそこから悩みはさらに深まるのだった。 カメラがスタジオ全体を捉えた瞬間、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で巨大アンプの音を出した時のように、 ブラウン管の前にいた私は負のオーラで部屋の隅までふっ飛ばされた。 とにかく芸能界で考えられるだけの「女性」のステージから降りたタレントが集結していたのである。 司会は山田邦子、久本雅美。パネラーは20人以上もいたが、上は奈美悦子、林寛子から、ぶ厚い中堅層の柴田理恵、 磯野貴理子、島崎和歌子を経て、若手の嘉門洋子、大原かおりまで他多数。今このスタジオでテロが起きてみんな死んだら、 明らかに芸能界のパワーバランスは崩れるなと感じさせるほどの集結ぶりだった。 大リーグのオールスター並みに選から漏れたら悔いなし!といった素晴らしい布陣であり、 ある意味オーリンピックの開会式だ。 さりげなく青田典子も混じっていたが、この路線で生きるという強い意志表示を感じずにはいられない。 番組は当然のように私生活のバラしあい、ゲストの2枚目俳優への質疑応答に対する一喜一憂 (ちなみにゲストは高嶋政信。中・途・半・端アーッ!)とおそろしく他愛も未来もない内容だったが、 それを見ながら私は別のことを思案していた。女性タレントにおける「性」と「笑い」の距離感のことを。 テレビ的に笑いを取る女性タレントは前述の久本、山田花子、島田珠代のような最初からそれを目的として登場した 先天性タイプと、アイドルからシフトしてきた前述の島崎、森口博子、山瀬まみ系の後天的獲得タイプがあって、 番組では3・7というバナナミルク並みの絶妙な混合比であったのだが、 両者に共通しているの要素をひとつ感じた。それは「性」を捨てていることである。 別に久本のように嬉々として男の股間に顔を添えて「うーん、いただき!」のような下ネタができるから性を捨てている (私はこれを見て泣いて笑ったが)という分類ではなくて テレビ内の対話における「彼氏がいるかどうか」の話題に心底興味を感じさせない者を、性的ではない存在と考えたいのだ。 松居直美の結婚。川崎カイヤの不倫騒動。岡本夏生の年齢詐称(従軍慰安婦の経験があるらしい)。ああ、どうでもいい。 ひどくどうでもいい話じゃないか。磯野貴理子が恋愛を語り出すと、狭いワンルームの家具をどけて距離を作ってから助走を行い、 テレビにキチンシンクを敢行する私である。これ以上余計な話をするなと言いたい。 性的な存在である現役アイドルが手練の芸人にいじられて取る笑いは、下心を含んだいたわりの笑いでしかないのに比べて、 常に性の対象から外された彼女たちが獲得する笑いは、真のニュートラルな笑いであると思う。 そういった笑いが取れるアッパー系現役アイドルの篠原ともえ、山川恵理科はアイドルという範疇を逸脱して、 なぜだか病的に性の話題を畏怖しているが、ここにもなにか鍵はありそうである。 そこで思い出した女性がいる。相田翔子だ。 最近日テレ系のトーク番組でよく出演してはおそろしい天然パワーを炸裂させている 彼女は、彼氏の話題、貧乏な私生活の話題をするところまでは、説明の必要がないくらいに一線から降りてきた存在であるのに、 私はウインクでは鈴木早智子を支持していたのに、「この人には彼氏がいてほしくないニャ〜」と思わせる品のある美貌を放っているのだ。 トークも司会のアシストを兼ねているものの、濃い笑いをぶちまけてくれる。性と笑いが共存している。不思議だ。 それはウインクが売れた当時に感じた「なぜ、こんなものが?」という疑問より深く、 部屋で金子達人の写真をダーツの的に興じる私を悩ませるのである。 しかしテレビ東京のスペシャル番組。あんなに強い決意をした私に「やはりオーリンピック開会式見ておいた方が良かったのでは」 と不安にさせる手腕はさすがとしか言いようがない。私は悩んでいるのだ。 |
先生は悲しい。 私が提唱いたしました「妄想恋愛ポエム」に多くの投稿をいただきました。 しかし残念なことに私の意図を汲んだ作品が皆無でありました。もう一度参考作品を見てみましょう。 「授業をサボって屋上で煙草をふかしているところに幼なじみの奥菜恵がやってきて、 口から煙草を抜かれて注意されたい」 「郊外の私鉄駅に降りると激しい夕立で、改札を抜けると新妻の加藤あいが「そろそろ来ると思った」と言って 青い傘を持って待っていてほしい」 日曜の朝、布団の中でまどろんで夢見る妄想を詩に、と私は口を酸っぱくして言ったはずです。 それなのに作品は以下のような有様でした。今回私をもっとも滅入らせたポエムは次のものです。 「テニスの全英大会。相手がウイリアムス姉妹のダブルスにたいしてこっちはおれひとり。案の定こてんぱんに やられてクレーコートにあお向けに倒れているところにウイリアムス姉妹が交互に乳ビンタ」(26才・職業・宮大工) 最悪です。妄想ではなくて、ただの精神異常です。薬物過剰投与です。 大体女子ダブルスと男子シングルが戦う状況設定の時点で既に狂っています。次。 「aikoに「そんなん・・・あたしなんかブス・や・・し・・・・」って言われたら、間違いなくやる」(27才・職業・タニマチ) 彼は昔から藤田朋子ファンという偏った好みであり、少し冴えない女の子だけが持つ恥じらいの美を理解していると言えます。 aikoという人選は非常に優れていて、これがTARAKOだったらペケです。 にもかかわらず、文末の「やる」という言葉がそれまでの甘美な状況を見事に壊しています。 これを「肩を抱く」「髪をなでる」「草笛を吹く」に置き換えて初めてポエムの味わいが生まれるでしょう。 しかしこれはまだましな方です。他を見てみましょう。 「シネマエッセイストの木村奈保子とやりたい」(27才・職業・温泉卓球部員) 「川本真琴に僕の焼きそばパンを食べてほしい」(25才・職業・シチリアンダンディー) 下品。ああなんて下品なんでしょう。性欲の塊です。それに27才にして木村奈保子という人選はどこから来るのでしょう。とても笑わせようとは思えない複雑なチョイスです。 その次の作品は川本真琴のアルバムに「焼きそばパン」という曲があって、まあうまいことを言ってるわけですが。要は下ネタです。 「二宮清純を殴りたい」(27才・職業・吸い殻拾い) 気持ちは分かります。あの妙に量の多い毛髪と絵に描いたような薄笑い。何をしたという訳ではありませんが、 鈴木光司の次に殴ってやりたい面をしています。それはどうでもいい。これのどこがポエムなんですか。 あなたはこの教室への参加を今後一切禁止します。次。 「駅でゲロにかける、おがくずみたいな例のあれ」(27才・職業・吸い殻拾い) ありますね。あれ、何で出来てるんでしょうね。おい待て。何だこの文。欲望ですらないじゃねえか。 さっき出入り禁止になった野郎か。どういう了見ですか。本当に殺しますよ。 今回掲載された方々には猛省を促したいと思います。引き続き投稿は受け付けております。 それでは昨日街で見た詩人の詩を読みながらお別れしましょう。 「きみはつかれたばかり言っている/まるでかれた花みたい/じぶんに水をそそいでごらん/ トイレがちかくなったかい/296(にぐろ)」 |
普段滅多なことではツッコまない私が最近「おい」と言わずにはいられなかった話をいくつか。
10年前誰が野村義男の現在を予想しただろうか。「手に職」であるギターで生活する彼は、
最近は田原俊彦200人分ぐらい安定しているように見える。
近くの公園で高校の演劇部らしき奴らが、休憩中なのに自意識をスイッチ限界までひねった妙にでかい声で会話をしていた。
よく蕎麦を食べるので近くの製麺所に買いに行く。すごい美味しいというわけではないが、1個単位で売ってくれるし、
安くて量も多い。遺伝子も組み替えてないので安心だと
「買ってはいけないを買ってはいけないを買ってはいけないをそれより先に週刊金曜日の執筆陣を信じてはいけない。
あと魚柄仁一郎も」でも推奨していた。 |
クスリがきれた。まどろみから醒めるとクスリがきれていた。クスリがきれて俺は死にそうになった。 部屋中をひっくり返した。クスリがない。ない。どこを捜してもない。咽喉がからからになった。 ミロの粉末を吸った。上白糖をひと袋吸った。骨壷を開けて遺骨を吸った。猫の便所の砂を吸った。 それでも効かないから猫を捕まえて臼で粉にして吸った。だめだ何も効かなくてだめだ俺はだめだ。 気が狂うからテレビを見ようと思ってテレビをつけた。テレビ東京だった。テレタビーズをやっていた。 見ているうちだんだん気分がよくなってきた。ハウス食品の同じCMが4回連続でやっていた。 金融ローンの同じCMが5回連続でやっていた。ああ、いい。チャンネルを替えると同じCMがやっていた。 土曜ワイドの再放送で三田佳子が出ていた。裏番組のワイドショーで三田佳子が出ていた。 すごい勢いで俺はチャンネルを切り替えた。ぐんぐん気分がよくなってきた。 ニュースステーションの音楽が聞こえてきた。NHKスペシャル「世紀を超えて」のテーマソングが聞こえてきた。 俺は飛んだ。雲を超えて高く雲が高く飛んだ。 モーニング娘。の歌の途中の小芝居を見て、一気に俺は落ちた。底まで落ちた。世界が終わると思った。 加護亜依のびっくりした表情を見て、世界が滅んでいくことを悟った。世界が滅んでいくことを願った。世界が滅んだ。 リモコンが叩きつけてテレビは消した。リモコンと叩きつけてテレビで消した。 部屋中を走りまわった。口から泡が出た。本棚にぶつかって、書籍がバラバラと落ちてきた。 手当たり次第開いた。ぼのぼのが目に入った。なんだか呼吸が落ち着いた。とりみきの遠くにいきたいを見た。 どんどん呼吸が落ち着いた。丸谷才一の旧かな使いを見ていたら、うっとりしてきた。 童話のカタカナにふられた平仮名のルビを見ていたら、全身が暖かくなってきた。 AERAの見出しを見ていたら、脳が飛び散った。「議員の好きな、オショクジケン」死にそうになる。 「王、金田、広岡」死ぬ。 「三宅島の噴火は×××の仕業で、避難カンコク」あ、なんか逆入ったみたいでちょっと楽かな。 俺は飛び散った脳を拾った。自分を取り戻そうと思った。電子レンジを延々とカラで回した。 砂嵐の画面を標準録画してスロー再生して見た。ガスストーブを冷蔵庫の中身に向けて焚いた。 CDをトレイにひっくり返して入れてプレイした。掃除機のリバースボタンを押してゴミを部屋に撒いた。 洗濯機に泥を入れた。黒い電球をつけた。部屋を暗くしたらあれだけ捜したクスリが出てきた。 俺は膝の傷にマキロンをふりかけると、ぐっすりと眠った。 |
真のモラルハザードを目撃した。 先日ツタヤにおいて俺は艶ビデオコーナーで熟考を重ねた結果、「淫乱甲子園・恥弁若妻」をむんずと掴んでカウンターに向かった。 よく艶ビデオを普通のビデオの間に挟んでサンドイッチ状態にすることでカムフラージュして借りる輩、 もしくはすごい艶ビデオを普通の艶ビデオの間に挟んでカムフラージュして借りる輩がいるが、ふざけろと言いたい。 真の男は1本借りである。第一ここのツタヤはビデオ本体をパッケージから抜いてカウンターに持っていく方式なので、 手にしていても一見しただけでは何のビデオか分からないのである。そうでなければ1本借りなどするものか。 そしてカウンターにビデオを置いて顔を上げた瞬間、驚いた。 ビデオを手にした女性社員の後ろには「実習中」のバッヂを胸にした女の子たちがカウンター内に収まりきれない程の量もいて、 社員の一挙手一動を食い入るように見ていたのである。 あろうことかそれを練習台にするのか、たくみちゃんリコメンドビデオをバケツリレーのように手渡ししていくではないか。 マゾ気味の友人によればそれはそれでたまらないシチュエーションらしいが、俺にはそれを快感に昇華する余裕はなかった。 口蓋を限界まで開いて絶叫し手足をスクリュー回転させながら全速力で家に帰り、俺は本気で泣いた。 死にたい、と思ったが麦茶を飲むと意外に落ち着いたので、早速借りたビデオを見ることにする。 それにしても艶ビデオの好みというのは人によって実に千差万別だ。 女優はもちろん、制服、洋ピン、巨乳、コギャル等にこだわるのはいいとして、 俺の友人には監督、昇天時の絶叫、登場する爬虫類にまで言及する者までいる。 ちなみに俺は順番にカンパニー松尾、おとこーッ、鰐がいいと思う。 俺が見るのは素人もののジャンルだ。誤解しないでほしいが、俺は艶ビデオにおける対局シーンに興味はない。 仮にそのような映像があっても早送りしているぐらいである。 要するに普通の女の子が脱ぐという過程が俺にとってのエロリーであり、 恥や何かをカメラの前で捨てる行為。それだけを傍観したいのだ。体の状態ではなく、尊厳を捨てた状態が本当の裸なのだから・・・。 ということで、ナンパした女の子を捕まえて説得している映像をせっせと早送りしていると、顔にモザイクがかかっていた。 テロップには「かおるチャンからNGが出たので、顔は映せませーん。ザンネン!」とある。 顔が見えないなんてと貴方は鼻で笑うかもしれない。そんなあたしを貴方は笑うかもしれない。 しかし俺はオムニバスものにこういうのが1つ入っていると、ぐっとリアリティが深まり全体が引き締まってくるので逆に評価しているのである。 やがて男優の執拗な説得に屈服したかおるチャンは、ためらいがちに頷いてホテルへ。 するとベッドに横になった彼女の顔から、さっきまでかかっていたモザイクがきれいに晴れているではないか。そこにテロップが走る。 「かおるチャンからHしている時だけは顔を映していいとOKをもらっちゃいました!」 何それ。 逆でしょ。 ちょっと待て。水を飲んで考えさせてくれ。 やっぱり逆、じゃない? 崩れていくのはモラルより大きい何かのような気がした。ビデオデッキの電源ボタンがハザードランプのように赤く点っている。 |