バックナンバー・練乳工場(11月上旬)


11月10日/砂糖入り麦茶はコップ3杯が致死量

オンタイムで大統領選挙を見ていたのである。
日本テレビは夜景の見えるブルックリンに特設の水上スタジオみたいなやつを作って速報していた。 アメリカ=アメリカ横断ウルトラクイズという短絡思考が見え隠れして嬉しくなる、ウルトラクイズの決勝みたいなセットだった。 20年培ったノウハウは無駄にしないぜ!という意気込みもひしひしと感じる。なんの意気込みかは知らないが。
というか、両候補をそこに呼んでクイズで先に10ポイント獲得した方が大統領だと思っているフシすら感じた。 トメ(ヤマンバギャル)もブッシュに「酒焼け」、ゴアに「品のいいDON−DOKO−DON山口」という渾名を用意していたみたいだし。
さて日本時間でいう午前中はフロリダをゴアが取った情報が流れていて、ゴア優勢か?という空気が支配していた。 さらにコメンテーターの日本人のオヤジが、30年前大学で経営士の授業を直接ブッシュに教えてたらしく、 アナウンサーにどんな方でしたかと水を向けられると、
「いやー授業は出ないは、差別的発言を繰り返すは、とても大統領の器ではなかったです。 でも40歳になって考えを改めたらしいですからね。そうでなければアメリカを背負って立たれては困るような人物でした」
あんまり「でも」以降がフォローの機能を果たしていないように思えるのは私だけか。 この人からはメディアだからこれ以上の批判が出来なくて無念!という苦悩がビシビシ伝わってきて、 選挙人制度が複雑なメイン州の解説をしてくださいと促されるや、「メイン州はブッシュの別荘があるんですが、 そこに近い人ほどブッシュには投票しないと言ってますね。嫌われてるんです」と、もはや女子の悪口みたいなことになっている。 確定申告の職業欄に「ゴア陣営」と書きこんでいそうな、あからさまな妨害工作ぶりが素敵だった。
さて夕方にはブッシュ当確の情報が流れ、メディアは「アメリカ初、二代に渡る大統領」とか「アメリカ初、穀つぶし出身大統領」 と報じて、ブッシュがトーテムポールに墨で目を入れる映像を流していたが、これが御存知の通り誤報だったのだ。
それにしても、と私は感じる。アメリカはプロレスにしてもコメディにしても常にいい作家がいる。
接戦接戦の前評判の時点で、大体こういうストーリーで行きますよという伏線が張られていたわけなのだから。 そこで今後の展開を予想してみよう。
まずフロリダの再集計の結果、不在者投票を含めると票数がまったく互角という異例の事態になる。
しかしフロリダは、州知事の投票は最終集計が終わった後に開票される州法があるので、そんなのないんだけどあるんだよ、きっと! 全メディアが最後の一票が開票される瞬間を固唾を飲んで見守る。コマ割りの画面は、頭を抱えるゴア、薄ら笑いのブッシュ、鋏が入れられる封筒の3分割だ。 なんでグラミー賞みたいに開票が中継されているのかなんて俺に聞くな! 大審院にそういう古い法律が眠ってるはずなんだよ!
フロリダ州知事のジェブはブッシュの弟だから、誰もがブッシュの勝利を確信したその時、封筒から現われたのは「ゴア」の二文字! いいんだよ二文字で! カタカナで「ゴア」って書いてあるんだよ! 驚愕するブッシュ。ジェブがマイクを握って叫ぶ。
「いいか、兄さんーーあんたはいつも俺のことを見下して生きてきた。しかし今日知らせてやったのさーー (ここから傍点つけて読んでくれ)どちらが本当の勝者かってことをな!」
そして膝から崩れ落ちるブッシュにとどめの一言が。
「ああ、俺はあんたの可愛いスゥイートと寝たぜ。兄弟のモラルはどうしたかって? あんたは何も分かっちゃいないーーそう、何もだーー 俺たちは実の兄弟なんかじゃない。俺は50年前、ゴア陣営から送られたスパイだったのさ!」
ダブルショック! ブッシュの弟は妻を寝取り、あげくの果てにスパイだったなんて! 逆上したブッシュは 二元中継のはずだが、ジェブに掴みかかって大騒動。そこにいそいそとジェリー・スプリンガーが登場してくる寸法に違いない。
イギリスのブックメーカーではこの予想は3倍の高値を記録しているそうだ。
そういえばヒラリーも当選したが、あれって日本で上沼恵美子が府知事になったようなものか? 野心強そうだし、髪型あんな感じだし、二人とも元弁護士だし。上沼は違うの? だって「生活笑百科」出てるじゃん?

11月8日/コートダジュールと間違えて、コートジボアールにバカンス

エコーズが復活するらしい。
知っているだろうか、エコーズ。最近ではシベリアン・ヌードダンサーの川村かおりが「ZOO」をカバーして、 スマッシュヒットになった・・・あれ川村かおりじゃないの?バラライカ弾かないからおかしいと思った。 あれの元曲を歌っていたバンドだ。
余談だが、先日一杯のかけそばを大河ロマンに仕立て上げたような「永遠の仔」 を読んだら、年少者が通う精神病棟で各自が動物のあだ名で呼び合う設定になっていた。 それを踏まえて「ZOO」を聞き、街の風景を擬・動物化した曲ではなく、疾病者を歌った曲と想像すると一杯で二度おいしい。
さて今や日本文学の舵を取る辻仁成キャプテンが、20年前ロックに目覚め衝動的に結成して、 小説で口に糊ができることを確信した10年前打算的に解散した、伝説の癒し系バンド・エコーズ。
かくいう私も聞いていた。辻仁成大兄が「オールナイトニッポン」をやっていて、それが実に深夜放送臭く、 薄い暗がりの中ラジオに耳を傾けるナイーブな少年を刺激したのだ。
オープニングはエアロスミスの「Walk this way」にのせた、辻仁成大臣の前口上だった。
「こんばんは、DJの辻仁成です。真夜中のサンダーロード。 今夜も押さえ切れないエネルギーを探し続けているストリートの上のロックンライダー。 夜更けの硬い小さなベッドの上で愛を待ち続けているスウィート・リトル・シックスティーン。
愛されたいと願っているパパも、融通のきかないママも、 そして今夜あきらめてしまいそうな君にも、今夜はとびっきりのロックンロールミュージックを届けよう。
アンテナを伸ばしいー、周波数を合わせえー、システムの中に組み込まれてしまう前にいー、僕が送るうー、 ホットなナンバー、キャッチしておくれー。愛を!愛を!愛を!今夜も
ボケを入れようかと思ったが、そのまま書いたほうが今となっては笑える。
こんな事を言っていた人の小説賞を受賞した時のコメントが「日本語を守りたい」だから、日本はつくづく法治国家である。 あとライブでギターソロの前に「ダイナマイト!」と叫んでいたし。何だそれは。80年代でも許されない行為だろう。
まあ私にとってエコーズは青臭い思春期に青臭い音楽を聞いていた過去で、今耳にするとつくづく音楽性に乏しいバンドだと思うが、 結局は懐かしくて好きな事は否めないのである。
それにしてもエコーズが一夜限りの武道館ライブとはいえ、復活するのは意外だった。
辻仁成という人物は恐ろしいほど独善的な性格なのだと思う。離婚の件にしても、 食った女性だけ手厚くプロデュースするという噂も(ひどく冴えない女を自分が監督する映画の主演にして、 高岡早紀にコメントする村上龍の10倍のパワーで誉めちぎっていたのを見た時、私は真実だと確信した)、 自身のバンド解散にかこつけた「ロックは終わった」という発言に至っては、私の中で松坂大輔の「野球で償います」と並ぶ 二大格言になっている。あのバンダナや天然パーマすら何だか独善的な気がしてくる。
とにかくエゴが強すぎるあまり、周囲の犠牲を厭わないタイプにしか見えない。きっとバンドも飽きたから理由づけて、 一方的な通達の解散だったのだろうなあと想像していたのだ。それが復活。わだかまりは結構薄かったのだろうか?
ところが、メンバー4人中ライブに出るのは辻を含めて2人だけらしい。過半数は届いてるからセーフというのか。 キーポンロッケン民主主義。そんなの辻が歌いたくなったから復活の口実をつけたとしか思えません。 武道館は辻天皇のカラオケ大会になるだろう。
と書きながら武道館の残席はわずかに余っているらしい。ちょっと行きたい。
この際、エコーズのコピーバンドやろうかと思う。名前はECHOES(エチョエス)。 メンバー募集します。私がボーカル兼時代の代弁者。あとの3名は家来。

11月7日/外資系勤務って、マックの床掃除だろ?

こんにちは、チャンバワンバです。
ワープロをいじっていたら昔ダカーポに投稿していた「美女論」のボツ原稿が出てきた。「奥菜恵論」と「優香論」だ。

遅ればせながら後輩から借りた「打ち上げ花火」のビデオを見るや、奥菜恵のあどけない表情に中学時代 くすぶっていた第三次成長期がすっかり活火山化した。胸はこそばゆく乳首はむず痒く勢いで星新一を再読する始末だ。
俺は猛省した。最近のAVの素人ものを借りては「こいつら、する事はしやがって」と 形而上的怒りを密室で虹に変えていた日々。セックスから遠ざかった、手を触れるだけでカタルシスだった午後を 彼女なら取り返してくれるに違いなかった。
しかしビデオを見た翌日知ったのは彼女は既に水着写真集も出していて、ビジュアル系と交際の噂まである事実だった。 俺が古いアルバムにグッドトリップしている間に少女は大人になっていただけの話であるが、 いつだって美少女の人生は加速度的で、男の子はそれを遠い彼岸から眺めているだけなのだ。
聞けば松坂大輔も彼女のファンで事務所を通して会食したらしい。しかしその翌日に前述の交際が報道されて、 しばらく低めのコントロールがままならなかったと聞く。男は同じ目線で生きていると思った。

美人は巨乳でない方がよいというのは、科学界、法曹界、場末のエロサミットでも承認されたガチガチの事実だ。
たとえば色白で整った顔立ちから目線を下げるとこんもり膨らんだ秘密基地があるとして。そそる。いい。 いやよくない。俺顧問リビドー部は県大会も制覇しそうな盛り上がりかもしれない。しかし美人の清楚さを 慈しみ、愛で、読書会すら開こうとしていた俺高校文化部にとって、前頭葉の動きを破壊しかねない巨乳は悪ともいえる存在だ。
桜庭あつ子や黒田美礼のような攻撃欲をかきたてる一軍と二軍の間をあまよう多摩川グランドフェイスが、 顔と胸でひとつの完成に至っていて巨乳には似合う。顔が美人なのに胸が大きすぎると何か過剰な感じがする。
そう考えるに形のいいおっぱいから逆算したギリギリの美人というのは、優香に違いない。 美人と巨乳の損益分岐点、優香。そんなコピーに自分で(竹)の採点をしながら、せっせとヤンマガのグラビアを 切り抜く夏の終わり。

1年半前ぐらいに書いたと記憶しているが、AVとおっぱいの事しか頭にない原稿である。今の政治風刺ひとコマ漫画が売りの 「練乳工場」からは嘘のような話だ。
ここまではいい。まずいのはダメ押しに出てきた「鈴木あみ論(擁護派)」だろう。

写真週刊誌で見た鈴木あみのジャージ姿に心を打たれた。それまであみーごというなめた一人称や、 どこかいじっているという噂に警戒を解かなかった私だが、こんなジャージの似合う子が悪い子の訳がない。 絶対授業前のランニングも手を抜いていないはずだ。
男子にとっての女子のファッション採点基準に、可愛いかどうかはそんなに大きな影響を与えていない。 要は「落差」だ。文化祭の打ち上げ。したことないけど集団デート。普段制服しか見たことがない女子の 私服姿こそ、蒸した思春期を送る文系男子の唯一の醍醐味ではないか。
あれから長い歳月を経て「逆私服」に焦がれる自分がいる。ブルマなんてハードコアなものでなくていい。 近年だんだんと黒くタイトな方向に身を固める婦女子たちのリラックスしたジャージ姿が見たいと思う。 駄目なら覗きに行ってもいい。
鈴木あみのジャージ姿は過去の自分も現在の自分も納得させる力がある。美女のしなやかな走りは校庭をカラフルに染める。 やはりブルマの方がよいかもしれない。

バカなのか俺は。俺はバカなのか。何だ、このスーパーブルマ讃歌は? 許してください。害のない煙草って聞いたんです。
前にも書いたが、これを書いたあたりを境に市場の鈴木あみの株価は急降下していった。 やはり旬にブルマにならなかったのが暴落のきっかけを作ったと思われる。まだギリギリ間に合うんじゃないの? 署名が必要なら声をかけてください。


11月5日/この秋流行、黒板消しメイク

後輩のうんこ野村くんからメールをもらった。 もともと言語中枢に障害があった彼も、関西生活が長きに渡ったせいか完全にとどめをさされて、何が書いてあるのか 2割程度しか理解できないメールを送ってよこした。
あぶり出ししたり、狸の絵に従って「た」を抜いて読んだり苦労した挙げ句、 どうやら「沢木耕太郎で何か書け」ということらしい。多分。
彼は自他ともに認める沢木フェチで、沢木が雨の中傘をささないと知れば、酸性雨の中ずぶぬれになって 病状をますます悪化させた男だ。
リクエストに答えて書いてみたが、こんなの私とうんこ野村以外面白いと思うのだろうか?

大学を卒業する直前に、どうしても大学を卒業するべきではない、と思い込んでしまった時期がある。 卒業式は正規の日程で行われたが、どこからも内定を貰えなかった私は、 自主的に卒業式を3ヶ月ずらしこみ、入社式を7月1日ということにした。
6月30日。注射を打ちすぎて眠れる気がしなくハイになった私が、ラジオのスイッチをひねると、 今でも忘れないが、「オールナイトニッポン」という深夜放送をやっていた。 パーソナリティーはSという落語家で、一晩中下ネタを言いまくり、聴取者に電話をして乳頭の色を伺い、 「おっまーロック」という心地よい言葉の響きの曲が流れてきた時には、夜が明けていた。
それを聞いてるうち、酩酊していた私は、「そうか、ルポライターか・・・」と悟りを開いていた。
ハイな状態が続いて一睡もしないまま、翌朝を迎えた私は、出社の準備を電車を乗り継いで東京駅で 降りたところで、会社へ行くのを止める決心がついた。その入社の日が私にとっての退社の日だったのだ。
ああ、格好よすぎる・・・もう一度<私>は書いた。
その入社の日が私にとっての退社の日だったのだ。
その入社の日が私にとっての退社の日だったのだ。
なぜたった一日で会社を辞めてしまったのか。理由を訊ねられると、雨のせいだ、といつも答えていた。
私は雨が嫌いだった。雨に濡れて歩くのが嫌いだったのだ。 幼少の頃から雨が降ると家から駅まで外車で送迎されていた私がなぜ傘を、と丸の内の風景を見て私は思ってしまった。
この話に嘘はない。しかし、もちろん、それだけが理由ではなかった。
その日は本当は雨は降っていなかったし、 後に時代の旗手になる私に内定を出す、先見性のある企業がその時点で存在しなかったのだ。
会社勤めを放棄したものの、自分が何をしたいのかまったくわからなかった。初夏のある日、大学の研究室を訪ね、 担当教官だったN教授を訪ねて、単位がほしい、どこでもいいから就職の斡旋をしてくれないか、と泣きつくと、
「何か書いてみないか」
と親指と人指し指で円を作りながら、マスコミの仕事を紹介してあげようと言ってくれた。
「君は経済学部のくせにカミュの論文を書いてきた。その世間では通用しない、なめくさった態度は、自由な世界が向いているだろう」
私が差し出した封筒の中身を確認したN教授は、眉をひそめて名刺の印刷工はどうだと呟いた。
こんなに話がうまくいっていいのか、と夢魔に犯されたような熱を感じながら、指示された事務所に趣いた私は、 社長のK氏に向かって名刺を作ってくれないか、と唐突に相談を持ちかけた。すると、K氏が、突然、いった。
「それ、作ってあげましょうか」
いや、それは正確な言葉ではない。K氏はこう言ったのだ。
「それ、ぼくに作らせてもらえますか
「それ、ぼくに作らせてもらえますか。沢木さん
「それ、ぼくに作らせてもらえますか。沢木さん。(なぜならあなたは将来ビッグになる男だから!)
なぜ初対面の私に対して、高名なイラストレイターだったK氏がそんなことを言ってくれたのか、今でも分からない。 強いて言うなら、いずれ私が大宅壮一賞を受賞するライターになるオーラを全開で放っていたのか、 懐に差し込んだ袖の下の厚みを感じたせいかもしれなかった。
だが、もっと正確に言うならK氏は、
「ウチに働きに来たくせに、テメー何様のつもりだ。ブッ殺すぞこの陸上部あがりが」
と言った気もする。しかし、「瞬間」を切り取ることがノンフィクションの使命であり、その「断片」があまりに鮮烈な場合、 「自分」に「都合」のいい「解釈」を「括弧」で「くぎ」「る事」「が真」「実な」「のだ」。
だが、私は名刺の肩書きをルポライターにしようとして、逡巡した。まだ私は一枚の原稿すら書いていないのだ・・・。
「いや、そうじゃない。名刺にルポライターと書けば、あなたはもうルポライターなんです。 名刺に戦場カメラマンと書けば、戦場カメラマン。トータルライフアドバイザーと書けば、トータルライフアドバイザー。 椎名桜子だって、初めて世に出た時の肩書きは処女作執筆中だったんだ」
と、私はまた名言を思いついたので、K氏のツケで名刺を大量に発注した。
あのまま就職していたら、と思う事がある。それはたぶん、私のささやかな哀惜の念が思わせるに違いない。
哀惜の念。
しかし、それは他の誰でもない私自身を哀惜する思いである。なぜなら、私は横で喚くK氏をこの世から 葬ることで、いまの私を生きることになったのである。

11月2日/真鍋博がいない21世紀なんて

総評
先生は悲しい。
集英社コバルト文庫風に言うと、悲しみボーイは大騒ぎ!〜退学通知はそよ風に乗って、です。
私が提唱しております「妄想恋愛ポエム」。また趣旨を振り返らなければいけないのでしょうか。 何も難しい事はありません。「休日の朝、布団のまどろみの中で考える自分が世界の中心にいる恋愛の風景」 を丁寧に書き起こしましょうと先生は口と牛乳が酸っぱくなるほど言ってきました。
例えば。以下は私の模範作です。
・「教室の隅でなけなしの金で購入した「朗読者」を読んでいると、川村亜紀(バレーボール部)が髪をかきあげながら、 「鈴木くん、難しい本読んでるんだねー。これお姉ちゃんが面白いって言ってた。今度貸してね」と覗き込んできて、 最後にぼそっと「でも面白いかな・・・私、バカだから」と呟かれたい」
・「近所の横断歩道で、髪を金髪に染めた川村ひかるの巻きスカートが自分で漕いでた自転車に絡まって往生しているので、 可哀相になって解いてあげると、ひどく無表情に、しかし照れくさそうに「ありがと」とぺこりと頭を下げられたい」
・「隣の家に回覧板を持っていって、出戻りの秋元奈緒美がエプロン姿で出てきたら・・・」
・「妹の酒井若菜が唇を尖らせて、「お兄ちゃーん、この問題分かんなーい」とシャーペンで背中を突つかれるが、 それがシンが出ていて、ものすごく痛い」
「夏樹陽子が」何ですか? もういい? 調子乗ってきたんですけど。「夏樹陽子が」駄目? ああ書きたいなあ。
レモネードの調べはあなたに届いたでしょうか。 しかし私がこれだけ説明しているのに拘わらず、相変わらず趣旨を理解出来ていない投稿が送られてきます。
・「こんにちは、王理恵(バツイチ)です。博報堂を辞め、キャスターデビューしていいこと続きです。
ダイエー2連覇。夢みたいです。巨人には負けちゃったけど。プロ野球もストーブリーグに入りました。 今年は秋山さんと駒田さんが名球界入りしましたが、加藤英司さん並に価値うすいな。
でも2人とも私とおんなじバ・ツ・イ・チ・。よかった、よかった。
松中さん。MVPおめでとう。オフは公文式から始めようね。九九くらいできないとローソンでお買い物大変よ。 プリンバー買うときいつも1万円札で払ってたら、この間みたいになっちゃうでしょ。 夜中のコンビニは危険だから余分なお釣りは奥にしまってあるの。だからといって店員さんが両替に行ってるとき、 おでん食べちゃ駄目でしょ。お釣りの計算してじっとしてなきゃね。
それと「ゲーム差」くらいみんな知ってるものよ。打率の計算は気にしなくていいの。 数字が大きい方が勝ち。999は無理よ。333くらいがすごいの。
「漢字の森」も買わなきゃね。黒江助監督は「くろえ」。アムールじゃないのよ。それは黒龍川の間違いじゃない?あれ私も自信ない。
惜敗は「おしまけ」じゃなくて「せきはい」。これくらい覚えてね。
オフは結婚だってね。相手はアムールのママなの。 水戸泉関みたいにならないでね。わたしとおんなじバツイチになっちゃうから」(27才/職業・ガム剥がし)
げほ。げほげほ。誰か咳止めシロップを。シロップをくらさい。マツキヨじゃ売ってないよ。基地の将校さんに貰うんだ。
もう「妄想」でも「恋愛」でも「ポエム」でも何でもありません。ただの「松中の悪口」です。
作者は松中選手の顔が小学生が描く運動会ポスターの背景にいる観客のように点と線で造形されているため、 勝手に白痴と判断しているようですが、ちょっと待ってください。彼は社会人野球出身ですよ。 電車の切符ぐらい買えます。自力で駅まで行くのは難しいでしょうが。
とりあえず王理恵は華がない顔のくせにバツイチという情報は刷り込まれてしまいました。不覚です。
またいつもの彼からもメールが届いています。
・「山内美郷に乳ビンタされたい」(26才/職業・宮大工)
・「真の巨乳好きは金八先生を思い出しても倍賞美津子の胸しか記憶にない」(26才/職業・宮大工)
バカトピアですか、あなたは? バカ界のトップブリーダー推奨ですか? 寄せては返すバカの波ですか? 大体誰が覚えているんでしょう、山内美郷なんて。 それよりあなたのアドレスの、@syuyoujo.ne.jpが気になりだした昨今です。
先生はまた疲れてしまいました。これからドンQのメロンパンでもたらふく食べて眠ります。 近日掲示板設置予定なので、腕自慢はそちらに書き込みお願いします。ではまた次回。

11月1日/ベランダに「ハンカチ」と書かれた黄色い看板

一緒に食事に行きたくないタイプのひとつは「頼みベタ」である。
これには三通りあって一つはもっともポピュラーな先行逃げ切り型の頼みベタ。 集団で飲みに行ったりすると、試合開始のサイレンが鳴り終わらないうちからフルスイングであれもこれも頼み、 中盤で既にテーブルに皿が収まらなくなると、皿を空けるべく後輩に冷めたカニ玉2人前を押しつけて、 さらに残すと怒るという、戦争で毒の木の実を拾い喰いして率いた小隊を全滅させてしまうあわてんぼうさんタイプである。
こういう輩は大抵デザートも済ませた最後の最後に固焼きそばが到着して、どんどん信用を失っていく。 クレジットカードの審査も通らない。しかし見分けがつきやすいので、誘わないことで危機は容易に回避できる。
分かりにくいのはダメ押し型である。つまりは大学時代の友人、Mだ。
ある日、私とMと後輩のWで場末のホルモン焼き屋で飲んでいた。コブクロやハツ、しつこい安肉をたらふく詰め込んで、 さあそろそろお勘定かなあと椅子に背を投げていた時、Mが店員を呼び止めた。 トイレの場所でも聞くのだろうと爪楊枝で歯をいじっていると、
「すいません、豚足ください」
店内は騒がしく明らかに聞き間違えであった。脂っこい焼き肉を食べ終えてデザートもきわどい瀬戸際。そんな物を頼むはずがない。 しかし正面にいた後輩のWの顔がみるみる曇っていく。店員は「かっしこまり(V)うあしとぅあー!」と威勢よく叫び、 福生あたりで踊り狂う黒人ダンサーのようなターンをかまして厨房に引き上げていった。(V)は息継ぎのVだ。
「おい、おまえ、今何頼んだ?」
「豚足。美味しいらしいじゃん」
一時間後。罰として甘味噌を没収されたMは「つらい、つらいよ!」と泣きながら豚の蹄に歯を立てていた。 私とWは横で見ているだけで気分が悪くなり、その店を退散することにした。Mの頬は濡れていた。 よく見ると豚の脂で光っていた。
そして頼みベタ第三のタイプは空気の読めない、自己破綻型である。
例の事件の翌々日。いまだに胃がもたれる感じがするので、今日はさっぱりしたものを食べようと私が目をつけていた店に趣いた。 ここは一階が魚屋で二階が居酒屋になっている。入ったことはなかったが、商店街の外れにある店なのでそう高くないだろうと踏んだのだ。
先日と同じメンバーで座敷に腰を下ろし、メニューを見た途端言葉を失った。 普段コーンバターに醤油をざぶざぶとかけて酒席をしのぐ学生には不釣り合いな料金設定だったのだ。
私が顔を上げるとWと目があった。見つめ合う視線と視線のレイザービーム。ニュータイプの我々は 「ここは一番安いやつを頼んでとっとと切り上げよう」と目で語った。しかし一人ガンダムに乗り損ねた野郎がいる。Mだ。
「えーと。じゃあ、刺し盛りでも行こうかな」
虚をつかれた我々を見放すように店員は「かっしこまり(#)うあしとぅあー!」と叫んだ背中がみるみる遠ざかる。 やっとの事で「ちょ、ちょっとすいません」と声を出すと店員は振り向いた。それはやめてと口に出そうとした瞬間、Mは店員に、
「人数分で」
私があわてて後を追うと、店員は階段横のレバーを倒し段を全て傾斜にシフトチェンジさせて坂を滑り降りていった後だった。
30分後。本気でキレた私は鰹の切り身をMに投げつけていた。
あれからもう五年は経つ。経済的に心配のない社会人になって私はMに「横浜でいい店見つけたんだよ。 すごい雰囲気があって、魚が旨くて、値段も安いんだぜ!」と誘われ、どんな気の利いた小料理屋だろうと期待して足を運ぶと、 そこは「日本海庄や」だった。頼みベタの病理は、実に深い。

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