練乳 第175話以降


しばらくはメモ形式で

8月6日

『ケインとアベル』を読む。今さら説明するまでもないが、二人の男の誕生から死に至るまでをアメリカ史に重ねて、その野心、サクセスストーリーに失脚を余すことなく綴った壮大な小説だ。
私の心を打った一文がある。それは青年期のケインが友人に囁かれる、ある言葉――
“脚をぴったり閉じている女にかぎって、しばしばそれを開くのが待ちきれないんだ”
何それ。
全体がシリアスなのに、ここだけ突然『ポーキーズ』が混じっている感じ。ものすごい雄大なスケールのクラシックを聴いていたら、いきなり楽団が『ロマンチックが止まらない』を演奏し始めたような。もちろん指揮者が振るタクトの先には生乾きのブラジャーが引っかかっていて、コンサートホールの奥にある土手ではパンツ一枚に身ぐるみ剥がされた吉幾三がダンプ松本に追いかけられている。
しかしよく読めばこの一文だけ異質というわけではなく、小説ではケインとアベルの童貞喪失譚がやたら入念に書き込まれているのだった。こういう人生のメインイベントもフォローするあたり、大河小説と呼ばれるにふさわしいのかもしれない。ここで一句。「童貞喪失は大河における鉄砲水」。私が風俗ライターだったら一句はイックと変換していたことだろう。撃チン。

8月3日

カルピスの新製品は「抹茶とカルピス」なのである。その時点で術中にはまっているとは知りつつ、「と」の思惑が気になって仕方がない。
カルピスソーダで新製品が出たら、「抹茶とカルピスソーダ」になるのか「抹茶カルピスとソーダ」になるのか。単語のバランスを重視したら「抹茶カルとピスソーダ」かもしれない。冷やした場合「アイス抹茶カルピスソーダ」で済めばよいが「抹茶アイスとカルピスソーダ」になる可能性もある。
広がりを求めるなら「抹茶カルピスソーダと」で、これならいろんなオプションがつけられる。「抹茶カルピスソーダとアベル」「抹茶カルピスソーダとクールV(ファイブ)」「抹茶カルピスソーダとはなとゆめ」。
だんだん「抹茶とカルピス」が「とカルピス」という新しい飲料に見えてきた。「と金」のように、カルピスが敵陣に侵入すると、成るのだ。今までのカルピスより縦横一マスずつ移動範囲が広がるので、冷蔵庫の上や横、流しの下や玄関の靴箱にも移動が可能。
その間にカルピスの陣地に潜り込んだヤクルトは「ヤクルト(不成)」を決め込んでいる。


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