語らず、笑え

笑いを見た記録・2005年下半期


12月1日/ビーニ ビーコード(baseよしもと)
11月29日/第125回すっとこどっこい(ミニホール新宿Fu-)
11月27日/GO!ヒロミ44`の漫談日本一決定戦`05(池袋手刀)
11月25日/マキタスポーツ見学(NAKED LOFT)
11月18日/原田16才ベストライブ「JEWELS」(ミニホール新宿Fu-)(執筆中)
11月16日/ケイダッシュライブ(シアターD)
11月15日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
11月13日/ホリプロライブ(新宿安田生命ホール)(執筆中)
11月8日/メガトンパンチ(ミニホール新宿Fu-)
11月7日/サンミュージックGETライブ(しもきた空間リバティ)
11月7日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
11月1日/ホリプロお笑いフレッシュライブvol.8(笹塚ファクトリー)
10月29日/新喜劇フー!(ルミネtheよしもと)
10月17日/太田プロNEW WAVE LIVE(新宿安田明治生命ホール)
10月15日/原田16才単独ライブ「協和ヴィレッヂ105より愛をこめて」(執筆中)
10月14日/ビーコード・ビーサンバトルA(baseよしもと)
10月13日/ITGP〜世界ツッコミ選手権〜(うめだ花月)
10月12日/サンミュージックGETライブ(しもきた空間リバティ)
10月12日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
10月11日/サンパチ魂(スペース107)
10月11日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
10月4日/バカ爆走!(ミニシアター新宿Fu-)
10月4日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
10月3日/ホリプロお笑いフレッシュライブvol.7(笹塚ファクトリー)
10月2日/SMAトライアウトライブ(笑) 予選・金のたまご
10月2日/バカ爆走!(ミニシアター新宿Fu-)
10月1日/牛乳こぼしちゃった。vol.19 夜の部(Studio twl)(執筆中)
10月1日/牛乳こぼしちゃった。vol.19 昼の部(Studio twl)
9月30日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)(執筆中)
9月29日/twlオールスターライブ(Studio twl)
9月28日/中川家の寄席(新宿末広亭)
9月28日/第123回すっとこどっこい(新宿ミニシアターFu-)
9月27日/ネオネオ・ダイナマイトショー(しもきた空間リバティ)
9月25日/カリカ単独ベストセレクション「白黒攻撃」(ルミネtheよしもと)
9月17日/チャンピオンカーニバル決勝戦(ルミネtheよしもと)
9月14日/おもしろGP喜利王〜プレ旗揚戦〜(うめだ花月)
9月11日/R-1ネタの祭典(ルミネtheよしもと)
9月10日/EASTリーグ チャンピオン大会(ルミネtheよしもと)
8月28日/チュートリアル単独ライブ「甘いチュートリアル」(ルミネtheよしもと)
8月26日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
8月21日/baseNEXT 5×3(ルミネtheよしもと)
8月20日/ジャリズムまつり`05(ルミネtheよしもと)
8月14日/タカアンドトシ単独ライブ「ペガサス」(執筆中)
8月11日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
8月10日/柳家喬太郎独演会(横浜にぎわい座)
8月9日/柳家喬太郎二人会(執筆中)
8月8日/三遊亭萬窓・柳家喬太郎二人会(笹塚ファクトリー)
8月7日/ビーサンバトルB ビーコード(baseよしもと)
8月5日/東京ダイナマイト単独ライブ「M-1 Dynamite!」(日比谷野外音楽堂)
8月2日/フキコシ・ソロ・アクト・ライブ「mr・モーション・ピクチャー」(スパイラルホール)
7月28日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
7月22日/キュートン(シアターモリエール)
7月17日/ほっしゃん。単独ライブ「緑亀」(ルミネtheよしもと)
7月15日/5じ6じ(ルミネtheよしもと)
7月5日/柳家喬太郎独演会(東京芸術劇場小ホール)
7月3日/第5回落語教育委員会(なかの芸能小劇場)
7月3日/本間しげるLIVE(ロックスタジオ)

12月1日

大阪に行ったついでに劇場へ。千日前でプラスマイナス・兼光君が天売りしていたのでチケットを購入した際、つい昨日の酒が残っていて若干テンションが高かったため、「『ぴあ』のお笑い芸人100特集、アンケートありがとうございました。あれ、僕が担当したんですよ」と挨拶してしまう。
「あッそうなんですか、じゃあ1人で100組選んだんですか?」と優しい返事に、朝の迎え酒が騒いだのか、「そうですそうです僕が1人で」と頷くが、顔を上げると相手の目は疑惑で澱んでいた。よく考えると「お笑い芸人100」がネタになった『10カラット』の関西の放送は昨日だったはず。”テレビを見た事象をテメーがやったと思い込んじゃう困った、ああ本当に困った君”として映っている可能性は高い。
10分前まで赤垣屋で飲んでいた黒ビールも手伝い、動揺した私は、「いやッ、その、うッ上木総合研究所に謝っておいてください」としどろもどろで言葉にしたが、気まずい空気に耐えかね、目の前の芸人のレバーにソバットをぶち込んで逃走。日本海沿岸で顔を変えてしばらく暮らした。
さて肝心のライブで印象に残ったのはジャルジャル。あの連投が効かなそうなスタイルながらbaseでポジションを保っていることを不思議に思っていたら、コントにくわえて滔々と嘘をつき続けるトークが面白くて納得する。普通片方がボケるなりウソをつけば片方がツッコむのが定石だし、ケンドーコバヤシとお〜い久馬が並んだとしても若干嘘とボケの強度に濃淡が現れるというのに、ジャルジャルは同質・同級の嘘つきが二人並んでいるだけ。今後ジャルジャルがコンビ名を変更しようが、コンクールで優勝しようが、解散しようが驚かないと思う。全部ウソだから。

11月29日

相変わらず狂った世界観のコントを延々と続けるチャンス大城に笑う。普通この手の芸は気の違いパワーが一点集中して力づくで笑わされるものだが、チャンス大城は平坦に狂っているのである。初速と終速が同じ狂気。もしかするとバッターボックス(劇場)の評価が、ダイヤモンドの外や客席(テレビ)に伝わるのは難しいかもしれないけれど。
この日何よりも衝撃だったのはオープニングで、MCの大川総裁が地味な青年を連れてきて登場。そして第一声が「こいつウチの新人なんですけどね、姉歯事務所の孫受けやってたんですよ!」。くしくも国会では参考人質疑が行われていた日に、このタイミングでそれは。久しぶりに大川興業の地力を感じた。紹介した後は建築業界裏事情トークでお腹いっぱいに。この内容を姉歯小路きみまろが知ったら、ショックで外出する日がさらに伸びるに違いない。

11月27日

M-1決勝を見に行く。まだ準決勝進出コンビが決定した段階? 何それ? 池袋北口界隈でM-1って言ったら「漫談日本一」しかないでしょうが! 年末のたかだか2時間半番組にいい大人が気持ち悪い表情浮かべて語りすぎなんだよ! ついでに私が”R-1”と呼ぶのは河村Ryu-Ichi貴公子のみ。
さて普段は出演芸人をいちいち書き連ねるような面倒なことはしないが、このライブは面子が素晴らしすぎたので紹介せざるをえない。
おもしろ三国志、みつまJAPAN、チャーリー東京、元気いいぞう、殿方充、GO!ヒロミ(日本の指導者)
この6人で鍋を囲んだら、沸騰した出し汁も一瞬で泡を引っ込めるであろう充実のラインナップ。特に圧巻だったのは殿方充で、登場するなり妊婦が分娩台で産婦人科医に対して見せる開脚ポーズを客に向け、漫談を開始する。その内容はといえば、アングラライブでは定番の皇室ネタと下ネタがコラボして怒涛のハーモニーを織りなし、右翼から叱られるというより人間としての見識を疑うレベルだ。その厚みがありすぎる下ネタは、客席から本当の爆笑を勝ち取ってた。おめでとう殿方。審査も何もなかったが、ランディーズやキャン×キャンの強豪を抑えて君が今年のM-1覇者だ!
さて開演前、私の横に座っていた女の子が友達に「私ね、今日このライブでエネルギーもらって明日から頑張るんだ!」とユーミンのコンサートに来たOLまがいの台詞を口にしていると思ったら、ライブが始まるとステージの際まで乗り出して写メールを撮るわ、GO!ヒロミ44`に客席から声を上げてガンガン曲をリクエストするわ、八面六臂の大活躍。ライブ終了後に出待ちすれば、エネルギー以外に性病ももらえると思う。

11月25日

ささやかに始まっていたマキタスポーツの定例ネタおろし会へ。芸はもとより、トークや文章でいちいち鋭い指摘をするマキタは、「片岡鶴太郎はモノマネ芸人の出でしょ。ボクシングにはまるとか、書にハマるとか、あれ、そういう体(てい)のモノマネじゃないかと思うんだよね」と皮肉って言及。私は会場の片隅で小刻み(鶴太郎が持ちギャグ「あ、あ〜い、う〜い、あ、こ〜りゃえー!」時に発する震え程度)に頷いた。
さてその後に披露したネタ「ライブハウスで見かけた不思議ちゃんシンガー」は、世界観から歌詞、表情や目に宿る狂気までをコピーしてマキタの真骨頂ともいえる出来だったが、最後のオリジナルソング「金儲け」になるとギターをかきならし完全に本気モード。「熱唱するミュージシャン」の体を作って歌っているのでないことは、瞳からこぼれんばかりの恍惚が物語っていた。案外、マキタにとっての歌は鶴太郎にとっての書とそんなに変わらない関係にあるのかもしれない。

11月16日

とにもかくにも連戦姉妹にたまげる。ブサイク地球の北極・南極というよりアラスカ・南アフリカ共和国あたりに位置するフェイスと不必要に美しいプロポーションを持つ姉妹が、造形以上の醜さを限界まで引き出しながらお互いをけなしあうという漫才。もはや面白いのかどうかすら判別もつかないが、久しぶりにライブで戦慄を覚えた。ただしインパクトが強すぎるので、今から地中に埋めておけば5年後にはテレビ対応できるくらいには落ち着いているか、石炭に変わっていることだろう。先週出した『ぴあ』の「お笑い芸人100」には思いきり入れ損ねたので、昇太師匠の許可を取って「はみだしYOUとぴあ」に載せるか、各自作成して解散したけもの道の上に貼ってください。

11月15日

目を瞠るネタはないものの、ヤカンを使ってノリツッコミするコーナーが秀逸。個人戦はダメでも団体戦でちゃんと帳尻を合わせる日本男子体操のようなチームワークだ。
それとこないだまで小気味いいコントをしていたジャンピングニーが、早くもボケのキャラが軟崩壊し、若手にありがちなギャグを応酬するという負のスパイラルに陥っていて驚く。それでもルックスがいいからルミネではしばらく支持されるのだろうか。本人たちはジャンピングニーを繰り出して跳躍してるつもりかもしれないが、私の座席からはスライディングキックの高さにしか見えなかった。

11月8日

先月の事務所ライブ行脚から漏れたという理由で、マセキ芸能社ライブへ。パッション屋良やらいとうあさこやら若手なんだかキャリアあるんだか有耶無耶なピン芸人勢は、最近増えているテレビ露出度と足並みを揃えるかのように舞台も好調。とはいえそれより目を惹いたのは、ストロング・マイマイズのボケ・斉藤の芸の鋭利さだった。秒単位で面白い表情を連発しては、セリフのまくし立て方もいちいちシャープ。雨上がり決死隊・宮迫や10$・浜本のようにギャグの重さではなくキレで勝負する関西芸人は見てきたが、東京にもこんな逸材がいたとは。にもかかわらずネタの面白さはごく普通。もしかすると若干平均値より落ちるぐらい。すごい切れる包丁で鉛筆を削っているようだ。

11月7日

エルシャラカーニは漫才&MCの面白さもさることながら、ボケの山本改めアロエしろうが4ケタ万円の借金を背負って自己破産を検討中という話を聞いて俄然目が離せなくなる。前月見た漫才が精彩を欠いていたのは、金策に追われていて舞台どころの騒ぎではなかったらしい。久しぶりに見た、嗜みのレベルでは語れない貧乏。グッとくる男だ。またあべこうじそのままの口調で要所に他芸人のギャグを拝借するカズミVのハートの強さにもしびれる。「お前は死ね! 自動車に2回轢かれて死ね!」と偶然にもたむらけんじに似たギャグを放っていたが、三度目は自分が轢かれるべきだ。

11月7日

平成ノブシコブシがネタ中にほぼガチであろうシバキ合いを始め、その空気が影響したのか、次に出てきたコンマニセンチは堀内がツッコミのセリフを2回も間違えて、竹永がネタの放棄しかける事態に。散歩中に軽い小火騒ぎを目撃したようで、ちょっと得した気分だ。
さて舞台ではこれだけジューシーな出来事が起きているというのに、MCのハリガネロックが一切それをいじらないのである。最近ツッコミとボケを変えたと聞いたので、探り探りコンビネーションを作っているのかと思ったのだが、それにしてもあれは。ユウキロックは金銭欲に匹敵するほどの笑いへのがめつさを全く見せなかった。あれは何かを失った芸人のテンションだ。その失ったものが、株の含み益とか外貨預金のリターンの方面であることを祈る。

11月1日

ななめ45°の家庭教師のもとに嫉妬した数学教師が訪れるコントがひたすら秀逸。アンジャッシュのように上手さが目的化するわけでもなく、上手くて面白いのだった。3人並ぶと深夜帯にコンビニレジ内で佇むアルバイトのような特徴に欠けるルックスをしているが、こんな真っ当なコントを作ってるのなら事務所ライブで人気を誇るのもよく分かる。
気になったのはまってん×まってんという女性コンビの縄文系フェイスをしたツッコミの子。メイド喫茶コントの中で披露する歌の発声がやたらいいわ、表情がセル画レベルで変化するわ、微妙に年端も行ってそうだわ、誰なんだあれは。さらにエンディングでは客から集計した芸人評価票を無作為抽出する役に抜擢され、つまみあげた一枚を読みあげるや、「世田谷区からお越しの磯山……」と絶句。どうにも同系列事務所ライブということでお忍びで来ていた磯山さやかの票を、偶然にも選んでしまったらしい。こんなミラクルを起こすとは芸人としての追い風が吹いてるのではないか? と一瞬思ったが、よく考えると選ばれる磯山さやかのタレント力の方がすごいのである。そうなんだよ、お笑いなんかどうでもいいから磯山さやかだよ! 俺「なまり亭」を立て続けに3回、トータルで10回見たんだから! 劇場入る前は本屋で「Sabra」の袋とじ勝手に破ってたし! 「つきあってください」と告白するため、あわてて後の関係者席を振り返ると、そこには既に×−GUN・西尾の姿しかなかった。今度は私が絶句する番だ。バツ・グーン(失意のせいで完全に投げやりなオチ)。

10月29日

関東では見る機会の乏しい演者を確認するため、劇場へ。要所で笑いをかっさらう小藪千豊の仕事ぶりが見事。国崎恵美は想像していたほど醜女度が濃厚ではなく残念な気がした。
そして何より気になったのはレイザーラモン出渕である。さまざまなキャラ模索の中で、RG(リアル・ゲイ)キャラに狙いをつけた様子だが、よく考えるとそれを本当に名乗る資格がある芸人は前田健だけだろう。そして今日の舞台で遂行した役どころは、特徴のない”無色”役。そんな逡巡や葛藤や困惑を全て顔に滲ませたまま、私の中で「フー!」より5万倍はホットなギャグ「おジャーマンスープレックスホールド」(相手がいないまま原爆固めをきめて頭頂部を痛打)を見れたのは至福の一時だった。迷宮は相方の大ブレイクからではなく、昨年末の『バッファロー吾郎23時間半ライブ』「イズドン」から始まったことに早く気づけ出渕! 私なりのエールを送りながら、次は関東で「調子の方はドーラゴンスープレックスホールド」(相手がいないまま飛龍原爆固めをきめて頭頂部を痛打)が見れる日を待ちたい。

10月17日

とある事情でこの1ヶ月続けたお笑いライブお遍路紀行。88箇所目にたどり着いたのが太田プロだった。格の違う会場、やや高めの値段設定、スタッフワークの機敏さにくわえて、客のマナーも上質。なんだこれ。私は中野studio twlを振り出しにした双六のあがりにでも着いたのか。
それでいてライブがつまらなかったら愉快なのだが、悔しいことに密かに若手が育っていて面白かったのである。その波に影響されたのか、ゲストの鬼が島まで野田が宇宙の果てまで暴走して面白くなっていた。とびきりのフラがあるカメレオンブララーズ、Wオカマ口調漫才の風藤松原。そして何よりもトップリードの「物忘れの激しい友人」ネタが白眉。POISON GIRL BANDが漫才前の風景なら、このコンビが見せるのはコントの原風景なのである。考え出すと止まらなくなるからこの際考えない。でもトップリードのコントはもっと見たい。
それはさておきライブ途中に気がついて驚いたのは、風藤松原の風藤が大阪吉本にいたランチであること。なるほど、あの口調、キャラ設定、それにネタの生産性までビッチビチに考えて作りこまれているのだろう。私はどういうわけかルミネで偶然ランチ最後の舞台を見ていた。時に人は意図せず、他人の人生双六のあがりとふりだしを目撃することがある。感慨にふけっていると、舞台ではデンジャラスが「青春、青春、そりゃ買春!」とはしゃいでいた。ノッチは早くサイコロを投げなさい。

10月14日

笑い飯のしょーもないMCを皮切りに、出る芸人出る芸人がコシもしなりもないギャグばかりで、さらに関西勢らしい技術もないものだから、終演後、誰がどのネタをやったのか、劇場で何が起きていたのか記憶に残らない奇跡的へなちょこライブ。ツジカオルコの下品さだけちょっと好みだ。
一つだけ心に花が咲いたのは、笑い飯による「こないだ漫才大会にとろサーモンが出て、その中で「おまえオモロない。松竹行けや」ってツッコんだら、松竹の若手が激怒したんやって。今、村田が命狙われてるらしいで」(面白くするため私が一部情報を歪曲)というゴシップが聞けたこと。スカシ漫才の次は謎の集団に襲われてスマキ漫才にたどりつく予感が。海の底で会話できる肺活量があったらの話だけども。

10月13日

ツッコミの世界チャンプを決めるべく、各国の予選を勝ち抜いたバッファロー吾郎・木村(ツッコミレジェンド)、ヤナギブソン(ツッコミスマート)、ネゴシックス(ツッコミネイチャー)、矢野兵頭・矢野(ツッコミノイローゼ)、吉本新喜劇・川畑泰史(ツッコミエレジー)、ダイアン・津田(天然パーマ)が大阪に集結する。
初モノイベントのため、各々はツッコミ運動神経の6割程度しか発揮できず、最後の見せ場にツッコミミラクルが起きてツッコミエンペラーが降臨することはなかった。しかしどの課題も練りこまれ、どの出演者も現在地を見誤らないため、舞台の完成度は高いものに。ボケに新しい座標をもたらしたダイナマイト関西のように、このイベントもツッコミに対して何かを生み出すのではないか。次回の世界大会はロシアからエメリヤーエンコ・ヒョードル(氷のツッコミ)、アメリカからジム・ジョーンズ(信者を集めて炎の中でツッコミ)の参加も期待したい。

10月12日

事務所のホームグラウンド興行なのにかかわらず、なぜか客の反応がシビアなライブ。芸人がスベり倒して心が折れる瞬間の表情好きな私にとっては嬉しいかぎりだが、どの新人も客席が無音の世界となってもタフにネタを進めるのだった。事務所の先輩・ダンディ坂野の遺伝子が脈々と流れているのかもしれない。
中盤に登場した鳥居みゆきはチンドン屋を演じ、最後、白目を剥いたまま暗転。久しぶりに狂った美人を見た。でもきっと鳥居の顔が整っていなかったら、もう少し笑えるネタなのだろう。笑いは正が負に、負が正に転じる世界なのである。
そして私が熱い視線を注ぐラブカップルは掛け合いが面白いだけでなく、二人の醸し出すエグさが最高。なんでも男性の中田は裏金に軟禁された経験の持ち主で、女性のカオルはオレオレ詐欺的業務の手伝いをしていたとの噂。笑いは正が負に、負が時には負のまま続く世界なのである。

10月12日

お笑いブームの芸人飽和化に伴い、多くの芸人はキャラの模索に必死。そんな中『やりすぎコージー』で元暴力団の経歴を告白していたラフ・コントロール重岡がネタでもトークでもいよいよ”極道”キャラ作りに精力を注いでいた。
しかし日本人がヤンキー文化に優しいのは”ヤンキー→実はいい人”の情緒を好むからであって、これが1ステージ上がると”極道→実はいい人→でも結局怖ええええええ”に着地しするもの。重岡は最後の告知で「このあと歌舞伎町の風林会館前で山口組・司会長の就任祝いをする予定なので、みんなも参加してください!」と素敵なギャグを放っていたが、場内は「……いや、そんな事言われても……」と言いたげな沈痛な空気に。前人未到の道を歩む重岡、応援したい。でも私は風林会館には行かない。だって怖いもん。

10月11日

松竹芸能東京支社の若手育成ライブ。というのは嘘で、本当は「ようやくコンビの方向性が見えたり演技が吹っ切れてきた3月の養成所の授業」じゃないのかこれは。芸人8組がK-1方式で対戦相手を指名し負けた芸人は下部リーグに落ちる熾烈なシステムはよいとしても、たかだか何年も変わらない芸歴の後輩が先輩同士の対戦を避けようとする気遣いがギラギラに見えた時点で、私のこのライブを見る心は折れてしまった。笑わせる客の想定圏が完全に女子高生をイメージしたMCはこれでもかと空パンチを振りまくり。ヴェートーベンという芸名を名乗るのなら、一度笑いのチューニングを合わせた方がいい。

10月11日

オリエンタルラジオが出るだけで客数はいつもの3倍強という恐ろしい事態に。そのオリエンタルラジオはセンターマイクを挟んで諺をテーマにした漫才、奇跡を描いたショートコントなど。ネタ枠組みのキャッチーな発想、キレのある動き、ツッコミの声質、全てにおいてそつがないのだった。キャリア組の人生を眺めているようで、何ともいじる言葉を見つけづらい。
その後に登場したのは、偽オリエンタルラジオとして知名度上昇中のパンクブーブー。黒瀬が哲夫を強くツッコむと、ほんの一瞬ながらも二度ほど白い埃というより煙幕が舞台高く舞い上がっていった。どう見てもあれはブサイクの胞子。こっちの方がずっと伝説ベスト10だろう。

10月4日

2日前に見た若手のネタを再度観賞する。コントの設計図がしっかり描けているオンザライスとニッケルバックは見ていて飽きない。ラバーガールも嫌な間取りしかない狭小住宅を作っているようで面白い。しかし経験を積ませるため舞台にあげた一部の若手MCは、笑いの建築に参加しているのではなく、設計図も持たず壁を作るための馬糞をこねてるようなレベルだった。
そんな中、MCで気を吐いたのは某若手女性芸人。キングオブコメディ・今野が、「俺の親父は行方不明だから」と、お笑いの舞台においては現実の負が正になる告白で客席を盛り上げると、必至に喰らいついて「私の父なんか変死体で見つかったんですよ!」とスーパーカミングアウト。さすがにざわめく客席に動揺が走ったのか、慌てて叫んだフォローが「これ、実話ですからね!」だった。頑張りは認めたいけれど、「変死体」はどんな方程式を使っても正に転化できない話題。しかしその変死体がどこで見つかったのかだけでも知りたい。インザハウスかオンザライスか。

10月4日

久しぶりに見たザ・パンチの漫才が息を吹き返していて驚く。ボケの浜崎がパンチパーマかけて、衣装を紫にして、そしてツッコミに嘆かせる新境地に何年もかけてよくたどりついたものだ。芸を変える勇気も必要なんだなーと感心していると、ミルククラウンはいつもと変わらず玉置浩二の「田園」ネタをかけていた。古典落語か。ちなみにこの1週間で3回舞台を見たハリセンボン・箕輪の衣装は3回とも同じ。落語家の羽織か。

10月3日

強烈な天才はいないけれど際立った落ちこぼれもいない、偏差値でいうなら日東駒専レベルが頻出のライブ。それでも若手にしてはネタの色分けがされていて、芸名とネタが一致するのは事務所の技量だろうか。気になったのは淡々とコントをこなす様がMCいわく「任務を遂行してるような」味わいのひるやすみ。それと出オチ芸人と決めつけていた双子のザ・たっちによるおすぎとピーコのモノマネ漫才は、一周して漫才を小馬鹿にするメタ漫才で、作家がついてるんじゃないの?と思わず詮索したくなるほどの面白さだった。
またこの日ライブの白眉は、超ルーキー芸人をレギュラー組と1分ネタで争わせ、勝ったらポジションを逆転させる下剋上企画。レギュラー組には本当に事前告知がなかったようで、芸人が必至になる様はドキュメントとしての面白さがあらわに。舞台隅でネタを合わせるくつ下一足二足やヒデヨシの物凄い形相、突然の降格に襲われてエンディングで目が泳いでいた末高斗夢、フジテレビ局員を辞めてこの道に進んだというわりにはコンパの人気者にしか見えなかったキックというピン芸人の人生などなど。ついでにMCを担当していたビームの立ち位置の距離から伝わるリアルな仲の悪さも見物だ。
唯一解せなかったのは、審査員として×−GUNの嵯峨根が登場した瞬間、前に座っていた客の女子高生が「えーッすごいッ! ホント? ホントにー!?」と感涙にむせぶ勢いで興奮しきっていたこと。電車男の後はアジアの超特急がブームなのか。あれだけはドキュメントではなくてフィクションだと思いたい。

10月2日

まず会場で渡されたチラシを見て、イベント主催の“SMA”がソニーミュージックアーティスツであることを知って驚く。さらにあまり馴染みない出演陣がそれなりのレベルに達していて二度驚く。
しかしよく見たらそれもそのはず、メンバーチェンジして3人から2人になったイヌがニャーと泣いた日、村田渚と元・坂道コロンブスの松丘が組んだ鼻エンジン、前はワタナベエンターテインメントに所属していたロビンフット、そして元ハリウッドスターのハリウッドザコシショウといった懐かしい顔ぶれが随所に。早い話がお笑いリーグの楽天球団なのだ。ソニーは打倒iPodを目指してベータを再発するのか。
だがベテラン選手を確保するだけでなく一場のような若いスターも育成しているに違いないと、母体のNEET PROJECTの所属タレントを調べたところ、現れたピン芸人の名前が「確変総長」「肩パッド」「返品不可」「スド・ウィシャス」「ドローンブーツ3号4号」。ソニーは打倒iPodを目指してそっくりな形状の石鹸でも売るのか。

10月2日

M-1以後、確実にお笑いシーンの風景は変わった。特に東京ではコントに走りがちだった地盤が一変して、漫才体質になりたいと願う若手が急増したのである。
しかし人力舎のライブは出てくる若手出てくる若手、ひたすらコント。それもこぞってコンビともども椅子に座って、会話劇に終始する小さなスケールのやつ。このライブからアンタッチャブルもおぎやはぎも育ったことは理解しているのだが、世間の漫才という風に晒されず小品のコントを完成させようとする姿勢に、なぜか“共産圏”という単語が脳裏をよぎる。
その中でも際立っていたのは、ボケが古い芸人のよもやま話口調を貫いて漫才するオレンジジュース。技術はふにゃふにゃだけれど、頭の中にとんでもない爆弾を抱えていそうな気配がした。やる気を感じさせない“オレンジジュース”のコンビ名も品川庄司がボツにした芸名としてよくネタにあげる名前だし、そのなめた雰囲気に好感を抱く。大体、くりーむしちゅーが売れたのは例外としても、液体系の芸名が売れることはまずないのである。そう考えながら手元のチラシを眺めていると、人力舎の若手にコンビ名「ドリンク」を発見した。

10月1日

ビートたけしはこう語った。「売れない芸人の一番好きな話は、事務所の悪口だ」と。
この日のMCは、太田プロ所属の芦沢教授。すると冒頭から23名出演するマイナーピン芸人の紹介はよそに、事務所に対する愚痴を客に延々とこぼす始末。別に我々はいのちのテレフォンのアルバイトしに来たんじゃないんだから。挙句、芦沢教授は本ネタでキレイに滑っていくのだった。何かいいものを見た。ちなみにネタは人形2体を使ったキチガイまるだしのチャンス大城、広島カープ限定の野球選手モノマネが光ったBBゴローが面白かったです。

9月29日

大手事務所からインディーズ系まで、若手が数十組出演するショーケースライブ。チャラい外見なのにしっかりした流れがある漫才のモンキーチャック、アドリブが全く浮ついていないラブカップルが充実した出来。特に後者は女性が主導権を握る男女ドツキ型漫才なのになぜか古臭く感じない。サニーデーサービスの曲が今聞いても違和感ないような。なんだこの微妙に古い例えは。たまに演歌聞くと泣いちゃうような。これも違う。ニューミュージックなのに新しくないとはこれいかに。もう全てが違う。
それはともかく胸に響いたのは、MCのきぐるみピエロ・小林の汚さ。こだわりではなくずぼらのベクトルで汚れきったジーンズに携帯電話や財布をつめこみ、秋葉原を越えて幕張メッセに達したすさまじいシルエットで、ファッションに興味がない私ですら「これで舞台に出ていいのか」という不安を覚えたほどだ。おしゃれが行き過ぎて残念な進化を遂げたタカアンドトシ・タカのトレーナー、リットン調査団一門の芸人コギレイ化を否定するTシャツというモード。芸人の非オシャレは全ていじられるためにあるのに、小林の身なりに言及する者は誰もいなかった。きっと触れるのに躊躇ったのは、あのファッションが“売れなさ”を擬人化した完成形だったからに違いない。

9月28日

10年前に会場が銀座小劇場だった頃、足繁く通ったライブ・すっとこどっこいに久しぶりに向かう。
かつての大川興業は北朝鮮だった。数多くの芸能プロダクション大国がひしめく中、一体どんな人材育成をしているのか、どういった階級社会になっているのかが判然としない閉鎖小国であるのにかかわらず、江頭2:50や松本ハウスなどのミサイルを先進国にバンバンと打ち込む脅威の存在だったのだ。しかし近年の大川興業といえば、奇才・ハウス加賀谷は自ら幽閉し、ピグモン勝田は地方労働中に不運な事故に。さらに藤井モウがご乱心でマシンガン連射心と、それはネパールですか、とにかく“衰退”の路をたどる一方。はたして赴いた会場も客が30人いるのかどうかで、もっと大きな劇場が客いきれで蒸せていた状況を知る身としては、寂しい思いに駆られるばかりだ。
しかし蓋を開けてみれば、昔と遜色ないくらい大川興業所属のクレイジー芸人が登場。怪しいサラリーマンキャラが完成しつくした名刀長塚、精神病棟の懲罰室で1人繰り広げられるようなチャンス大城のコント、猛獣&猛獣使いのコンビネーションに小気味いいギャグを織り交ぜる大川興業遺伝子を直流で継いだ俺のバカ。結局、抱いた感想は「やっぱり大川興業、核を所有してるじゃん」である。大川興業は何も変わっていなかった。上下関係というより軍の戒律を思わせる縦社会まるだしのトークも同じだったし、寺田体育の日のポジションとツッコミ技術が10年前から何ら上積みないところも。

9月27日

浅井企画の事務所ライブ。全体的に大きかったり薄気味悪かったり、見た目でひと笑い稼ごうという芸人が多いことに好印象。そして『ゲンセキ』で青色ダイオードのように光っていたマチコを初めて生で観覧する。さくらんぼブービーにはバカ4コマ、今はなきモジモジハンターには不条理8コママンガのノリを感じたが、マチコは擬態する動物を描いたクレイアニメのような世界観。この日の餅つきネタも展開が不条理かつ暴力的と、客の想像力を振り切りっぱなし。うっかりすると惚れてしまいそうだ。
さてこの日一番驚いたのは、チラシに挟まれていた浅井企画の女性芸人の告知だった。8組ほど紹介されている中、一人疲れた笑顔を浮かべている女性の名前が「山口百恵」。いいのかこれは。これだけ堂々と名乗れるのは本名なのかも。しかしあのGO!ヒロミですら郷ひろみ市場から早期撤退したというのに。もし舞台でGO!ヒロミそっくりに「レッツゴーレッツゴー、モモエ・ゴー」と腰をカクカクさせていたら、それも惚れてしまいそうだけど。

9月25日

ルミネで行われた単独カリカ1〜4のネタを中心にしたベストライブ。家城のキレのある動きと林の変態性というカリカの日向&日陰をさんざん堪能したあと、最後はセンターマイクを挟んで“帰ってこい!”。前に見た時もすさまじさに感想の言葉が追いつかなかったが、改めてその狂気と熱量に呆然とする。漫才の形式でありながら漫才を超えていて、コントというジャンルでは完全に収まりきらない世界。もうこれはスペクタルとしか表現できない。そして私はスペクタルという表現を今後カリカ以外の芸人に用いることはないだろう。なぜならスペクタルの意味が本当はよく分かっていないから。
なお幕間は衣装替えの時間埋めタイムとして、若手芸人が得意のカラオケを披露した。中でもガリットチュウ・熊谷が歌う「youthful days」がなんとも説明に困るボーカルで、熱唱と絶叫と音痴を足してさらにお湯を足したようなシロモノ。この際あれもスペクタルでいいか。

9月17日

ニブンノゴ!が単独ライブのファンサービスとして披露するようなネタで優勝。秋口に若手を競わせるルミネのこの長期戦、会を追うごとにドラマも攻防も演者の思い入れも薄らいで、笑いも観客動員も減っているのは気のせいだろうか。増えて濃くなっているのはトータルテンボス・藤田の頭髪だけ。

9月14日

今秋からMBSラジオで番組化が決まった大喜利大会の練習試合。番組は吉本以外の参加もOKで、某筋の情報によれば芸人以外の参加も構想中らしい。笑点で四足歩行していた大喜利はダイナマイト関西で立ち上がり、いよいよメディアを巻き込んで走り出したのである。そしてダイナマイト関西が純粋にお笑いIQを問う闘いであれば、聴覚優先でお題がバラエティに富んだ喜利王は芸人運動神経が試される舞台に。
個人的なハイライトはイントロに合わせて曲紹介をする「なりきりDJ」。冒頭のブラックマヨネーズ・吉田の回答が完成度が高かったため後が続かないと思いきや、最終的には全く違う切り口で5人5様の回答が。この空間では芸人が面白いことを開拓した人のマネに走らず、笑いを創っているのだった。
もう一つの見物はスマートな回答が秀才風を吹かせる麒麟・川島の全く対角線上に位置していた吉田。大喜利の内でも外でも、下世話な人間性をひたすら剥き出しにして笑いを起こしていく。泥臭くてどぶ板選挙的で土下座外交な趣は世界中の「ど」を集めたような闘い方で、顔のブツブツに「ど」を嵌め込めば滑らかな肌になりそう。埋まったクレーターは「ドブツ」と呼ぼう。

9月11日

ピン芸人が17名登場するショーケースライブ。テレビでは分からなかったが、パラパラを踊る長州小力は以前よりも腹の立体感・波打ち方が意志を持った生物に近づきつつあり、生で見ることの喜びを感じる。なんでも本人によれば「作った体」とのこと。なんて船木誠勝の真逆を行くローブリッドな肉体改造だろう。
さてこの日一番目を見張ったのは末高斗夢だった。疎開を思わせる物量のダジャレ芸、戦場に紛れ込んだら2秒で射殺されるに違いない原色の衣装、おもに更正のフィールドから指導を受けてそうな短髪、昨年の同ライブから何も変わってないように見えて、明らかに上手くなっているのである。客を眺める余裕、ネタを出す呼吸、そして何よりあのダジャレ芸をこなす蛮勇。とても21歳がやれることではない。というかあんなことしちゃいけない。
帰宅して初めて衆院選で自民党圧勝のニュースを知る。あの21歳も選挙に行ったのだろうかと考えていたら、千匹の狂犬の中に放り込まれて「千狂犬。センキョウケン。選挙権」と嬉々として叫ぶ末高斗夢の映像が脳内に溢れてきた。

9月10日

CHAMPION CARNIVALの準決勝は混戦に。その結果、いつも鼻差で栄冠を逃すカリカ、ここ一番で必ず躓くパンクブーブーらを制して、トータルタンボスが決勝へ駒を進めた。トータルテンボスは懐かしい腕が長い転校生コントや、内輪受けながら名作の「吉本王」を若手芸人&漫才バージョンでリメイクしたりと、コント中心だった頃の小器用さを全開。最近は藤田の浮世離れしたツッコミに頼って鞘をつけたまま刀を振り回している印象だったが、久々に刀を見た気分に。
ところで女性器に充電器をしこんでかろうじて脳を動かしてるような輩がネタ中もストロボを焚かせるので見ずらいことこの上ない、と思っていたら、ストロボが一光も光らない奇跡を起こしたのがパンクブーブー。NOストロボNOカメラ。NO WOMAN NO 黒瀬。普段の劇場であれだけ受けているのに、どうなんだこの神がかった人気のなさは。哲夫が5万円で誂えたピンクのジャケットが全ての光線を吸収しているに違いない。

8月28日

隅から隅まで面白い驚異のモンスターライブ。去年の『オールザッツ漫才』における清濁飲み込んでスキルの高さを見せつけた漫才や、往年の『ガキの使い』を思い出すような『ワイ!ワイ!ワイ!』での鮮やかなフリートーク。どんどんチュートリアルが面白くなってるなーと思ってたら、えらいものを見せられた。『PRIDE』行かずにこっちを選んでよかった。シウバが失った王者の座を私はチュートリアルにあげたい。ショーグンに顔を踏まれても福田なら持ち前の脂質でなんとかしそうだし。旅館のフロントを舞台にした『山水館』と、焼き鳥屋がしつこく電話で催促する『鳥将軍』のコントが絶品。
普通の単独イベントが一つ一つのギャグを並べた盆栽の見本市なら、この「甘いチュートリアル」は山脈レベル。単発ではない、ある笑いのイメージが連なっているのである。徳井は淡々と狂っているのである。その横で福田の顔は粛々と光っているのである。と思ったら生で見るとそれほどツヤツヤもしていない。趣味は料理らしいし、胡瓜・焼き鳥・フランス料理・カレーと食べ物のネタが多かったので情緒が安定していたのだろうか。

8月26日

パンクブーブーとライセンスのCHAMPION CARNIVAL準決勝進出がかかった2戦。はたして新ネタをおろしたパンクブーブーは井上マーから僅差の勝利をものにし、ライセンスは平成ノブシコブシに17?4の大差で敗れ、散って行った。
今大会は予選リーグをチーモンチョーチュウやらアームストロングが勝ち抜いて、一見”世代交代””若手の台頭”の匂いが漂うが、今日のライセンス戦を見ている限り、思慮に欠けるスタッフは21枚用意された審査ボードを前方の客のみに配りがち。すると前売りで5じ6じを見る若手好き客層の嗜好に左右されて、会場の総意と結果がリンクしていないような気も。だからこれからは公平を期すために客の審査を撤廃し、芸人によるポカポカドボンや叩いてかぶってジャンケンポンでチャンピオンを決めればいいのである。誰が面白いかなんて分からないけれど、いいじゃないか公平なんだから!
ところで公演が半分超えた頃、私の前席には母親に連れられて小学生2人が入場してきた。ひどく大人しく舞台を眺めていたのに、ゴングショーに出てきた連弾のマッチョコントだけ兄弟揃って爆笑。目利きにも程がある。

8月21日

baseの若手5組(千鳥、南海キャンディーズ、NON STYLE、中山功太、ジャルジャル)がテレビ垢のついていないネタを3本ずつ披露。内容が濃くてお得なイベント。
普段あまり興味を覚えないNON STYLEの漫才が、生で見るとそのスピード感が大変心地よい。速度を上げて雑な部分や粗をごまかしているのではなく、最初から時速50キロ以下の計器がついていない車のような感じ。2時間上映したらバスが爆発しそうだ。石田が投じるギャグの球質の軽さ、井上の腰から下の安定感。よくも悪くもNHKにハマる芸人だなあと再認識する。
それとどうしてアジアンではなくジャルジャルが選ばれたのか不思議に思っていたが、おそらく漫才とコントのバランスを気にしたのだろう。にのうらごが選から漏れたのはイベント名に数字があふれるから。次回は『にのうらご、ニブンノゴ!、?4℃、三五十五(電撃ネットワーク)一十三十一 5×3』をやってほしい。誰がポイントゲッターになるんだこの興行。

8月20日

お笑いライブの感想で「2時間笑いっぱなしだった」のフレーズはほぼ何も考えず文章を書いている証しだが、2時間笑いっぱなしだったライブ。お面の屋台、野球応援のコントや、渡辺が脳の稼動可能な部分を全部使って考えうるギャグを根こそぎひねり出したような格闘技の入場をテーマにした漫才に笑う。それ以外も「ジャングルクルージング」「いろんなiPod」など幕間の映像が傑作で、お笑いライブの感想で「涙を流して笑った」のフレーズはほぼ何も考えず文章を書いている証しだが、反戦フォーク「T-BORANを知らない子供たち」で私は涙を流して笑った。
ところで3度目だったルミネの単独。回数を重ねるごとに客足は鈍り、後方ではやや空席も。しかし復活のドラマが薄らぐ傍らで、ジャリズムは往年の面白さをどんどん甦らせているのである。感動の物語から解放された二人のコントは”笑える”以外の意味が何もなく、ただ残るのは莫迦々々しさだけ。って素晴らしいったらありゃしない。お笑いライブでTシャツを買うのは完全に何も考えていない行為だが、気がつくと私はTシャツを買っていた。裾の部分にはレンコンの穴にイヤホンを通したイラスト。やはりどこまでも意味がない。

8月11日

2年前の夏。何の大会があるわけでもなく若手芸人を対戦形式で競わせていたルミネで、POISON GIRL BANDvs線香花火を見たことがある。当時無名も無名でまだ足の裏に記号が書かれていただけのPOISON GIRL BANDは今よりもダラダラした間で今よりもぶち壊れた発想のすさまじい漫才をしていたが、勝敗を決する観客の旗のほとんどはメディア露出の多い線香花火に上がっていた。
そして今日。出番前の1時間でこしらえたようなずぶずぶの漫才だったPOISON GIRL BANDに対し、ミルククラウンは得意の歌ネタを短く詰め込んで、残りの時間を奇妙なモノマネ3連発にあてがう快心の舞台。しかし観客の旗はM-1で知名度を上げたPOISON GIRL BANDに。仕方ない、これが世論というやつだ。それにしてもこれまでミルククラウンを生で見たのは十数回だけなのに、玉置浩二の『田園』ネタを200回は体験している気がする。ちなみに見るたびにベタ濃度が上がっていくポテト少年団は、いよいよツッコミがメガホンを携えて登場。いい魔法の杖を発見したものだ。その利用法を魔女が知ったら間違いなく嘆く。

8月10日

仕事に煮詰まり、気がつくと遠出して寄席に。3日連続で同じ落語家を追っている自分が相当気持ち悪いです。
三遊亭園朝の命日に因んで、喬太郎の演目は三遊亭園丈作の「ぺたりこん」と、園朝作の「牡丹灯篭」。父親の敵討ちのため慕う主人に剣術の教えを乞うと、その主人が親を殺めた本人だった??という後者の話は、予告通り染め上げたように陰気な内容で救いがゼロ&笑いが少々。これ落語というより、ほとんど井上雄彦の『バガボンド』外伝だ。『バガボンド』との違いは、登場人物が死んだ瞬間、岩に波が寄せて上空で鳥がカアと鳴いて3話分ぐらい余裕で生涯の回想が始まって「剣で会話ができた??」だの「俺を強いと言ってくれるか??」だの「バスケがしたいです??」の独白が入らないだけ。もしかして「ぺたりこん」の冒頭で、主人公が両足を挫くのは『リアル』へのオマージュ? と喬太郎の天パに宮城リョータの頭髪をダブらせながら思うのだった。

8月8日

地元で落語が見れるということで喜び勇んで劇場へ。しかし萬窓「唐茄子屋政談」、喬太郎「死神」とじっくりたっぷり聞かせる演目に対して、仕事疲れで観賞する体力が残っていない。意識朦朧。撃沈。猛省。半覚醒のせいで「死神」の終盤、蝋燭が見えてきた。さらに遠くから死者の咆哮まで聞こえると思ったら、上の階のゲームセンターの音が漏れているだけだった。帰宅。及川奈央。安眠。

8月7日

劇場前でヘッドライト・和田に似たアーシー感を漂わせるゼミナールキッチンのボケから天売りチケットを購入して、久しぶりのbaseよしもとへ。いわゆる1Aのライブなのに、なかなかのレベルと客質。金時、暁、パラフィンキック、パステルモグラに投票する。勝手な想像に過ぎないが、ツッコミのまくしたてる長尺のフレーズが笑いを誘うパステルモグラは、華もキャラも足りない二人が試行錯誤の末、ようやく見つけた台本先行の手法をなんとかモノにしかけている時期のようで気になる。
それに対して、才気だけで舞台に上がっている風情なのが、兄妹コンビのビタミンSでボケを担当する兄貴だ。この日何度もセリフを噛みまくっていたが、それでも達者。低い順位に落ち着いても達者。妹がヨガで10キロ痩せても達者。フリートークコーナーでの腰の座り方に至ってはベテランの臭いすらして、中川家・礼二に通じる舞台上の瞬間爆発力を秘めているように映った。NSC11期生と聞いても私は疑わないだろう。松口VS(ビタミンS)小林。

8月5日

私が見た日比谷野音の中でGONTITIの次に客席の反応が静かだったライブ。情報量過多の客を相手に次々とアリネタを投入し、ネタのつなぎもおそろしく適当なあまり、前回の伝説の野音単独より客の入りは2倍で笑いは半分の印象に。春先にインタビューした際、「これからは客の想像力を下回ります!」とあげた怪気炎を二人は実践したことになる。けれど東京ダイナマイトの評価が落ちることもない。あれだけスベっても堂々として、ハチミツ二郎にいたっては”松葉杖で足を引きずって退場”という伝説も作れたのだから。小さい一敗なのである。
気になったのは、最後列で酒宴を繰り広げる高田文夫先生ファミリーのうるささ。完全に客席で気配を消して、一切合財ファンから声をかけられなかったPOISON GIRL BAND吉田の謙虚さとは対照的だ。側近なんかヨイショ&同調に夢中で首の骨がブーメランみたいな形状になっていた。面倒見が良くてラジオのゲストに来たから顔を出したというより、日大芸術学部出身の経歴だけで接近した宮藤官九郎の如く、浅草キッドの弟子筋の流れで囲いこもうとする臭いを嗅いだのは私だけか。それを前にしてはハチミツが巻いた湿布の臭いすら無力だ。

8月2日

生まれて初めて足を運んだお笑いライブだったり、客席に人生で一度だけ生ナンシー関の姿を見かけたりと、何やら思い出が深い吹越満の単独を久しぶりに。今回は映像を駆使した緻密な笑いが盛りだくさんの内容。
ネタは相変わらず顔ボード芸や「その線」系など、全てが4、5パターンに集約されるものだった。しかしそれはマンネリというより、コード進行が同じブルースを聞く味わい。いつもの基盤の上でネタが旋回し、うねり、結局は形を変えて育っている。
また喰始演出時代は仕掛けの大小、下ネタの濃厚具合、完成度の高低、やたらネタの出来不出来がはっきりしていたけれど、最近の公演ではどれもが平均点のやや上をかすめている感じに。でも吹越のようなシャープな芸風だと、その方が落ち着いて観賞できる。私にとって吹越はmr・モーション・ピクチャーである以前にMrボードビリアンなのだ。ついでにMrコメディエンヌが桑原和男。あとMrレゲエDJはランキンタクシーで、Mrプロレスは天龍。ミスター梅介とうすた京介は名前が似ているけれど赤の他人。もう収拾つかないからこのへんで。

7月28日

夏休みのせいか、演者にメジャーどころが揃ったせいか、ルミネは平日にかかわらず驚異の八分入り。チャンピオンカーニバルのアップダウンvsオリエンタルラジオは、ダシをとった味噌汁とコーラのどちらが旨いか選ぶような戦いに。押しが強いキャラでもないのに、漫才もトークも気がつくと前に出ている竹森の仕事が見事だった。
そしてオリエンタルラジオを完成した若手ではなく、お笑いブームの観測気球という一つのアイコンとしてしか見れない自分に気づく。先日の『ゲンセキ』では登場時の嬌声にネタの笑いが追いついていなかったり、この日はルミネで封印すると宣言していた武勇伝ネタを引っ張り出してきたり、もうなんかいろいろ大変そう。光速より早いスピードで売れてしまって、自分の背中が見えている状態なのかもしれない。そんな伝説ベスト10。ペケポン。

7月22日

増谷キートン・椿鬼奴・くまだまさし・アホマイルドと最近主演者のメディア露出が目立つのに、それが動員にほとんど結びついていない驚異のライブ。ギリギリまで柳家喬太郎の独演会か、このライブにするか悩み、結局、新宿に足を運ぶ。
しかしオープニングで増谷とくまだの全裸でも半裸でもない0・9裸を見た瞬間、こちらを選んだことを後悔する。こうなることは分かっていたのに。キュートンとキョータロー。語感が似ているから仕方ないか。そんなことを考えてると出演者がステージから尿に似た飲料を巻こうとするので、入場時に配られた紙おむつを頭にかぶった。やはり落語家と落伍者の開きは限りなく大きい。

7月17日

ほっしゃん。のネタはこの日も「うまい」「よく考えてる」に落ち着く理数系ギャグの応酬。それでも漢字の造形を商品に見立てた「漢字ショップ・いけたに」、ノストラダムスの予言に別解釈をくわえる「ノストラダムスに魅せられて」になると、三日三晩不眠不休で考え抜いた末、午前4時にたどり着いた狂気が見え隠れする。その追い込まれたほっしゃん。を想像して楽しむのもひとつの誤った楽しみ方だけれども。
とはいえ一番笑ったのは、ボクサーがおニャン子クラブの振りによって減量に挑む「減量ボクサー」だった。ロジカルな持ち味を全て捨ててただ踊り狂う様は、バラエティ番組でひたすら破天荒・無謀なキャラを貫くほっしゃん。の生き様そのままに。そしてエンディングの挨拶では汗だくのボクサー姿で深く一礼。その時、額からこぼれた滴が汗以外の液体(バナナの涙)に映ったのは私だけだろうか。また舞台上の薄闇の中で着替えを公開したほっしゃん。の下着が象さんのすきゃんてぃに見えたのは私だけだろうか。しかしネタの映像に使われた『おっとCHIKAN!』のやっつけすぎる歌詞に、秋元康に対して怒りの拳を固めたのは私だけではあるまい。おニャン子全盛時代に加担した一人の人間として一言だけ言いたい。なんだあれ。

7月15日

橋本真也が亡くなって数日。それではサブミッションズを解散し、もう一人の橋本=相方の北条を失った前田ししょうは舞台でどんな戦いを見せているのだろうか? そんな壮大なテーマを確かめるべく、夕方のルミネに乗り込む。
2学級が混合授業してるのかと思うような客の少なさに驚くが、それよりこの日驚いたのはサカイストの漫才。ファンの目も会社のプッシュもさらなる若手に向かい、大量の軽いギャグをひたすらスピードでこなしていくビートパンク漫才に危機を感じたのか、通常のボケを全部フリにしてツッコミのチャラいキャラで笑いを取る新しいパターンに挑戦していた。そんなに何度も使える手ではないだろうが、その手のうちを晒した開き直りは、腕を一本くれてやるから敵の命を抉ろうとする手負いの獣のよう。生まれて初めてサカイストを面白く感じた。
ところで気になる前田ししょうは、エメリヤーエンコ・ヒョードルがトレーニングをする物真似などでいい塩梅に滑るものの、ネタが終わるやMCとのトークですぐさま蘇生。私はこの高いバンプ技術を見たかったのかもしれない。なお終演後に新宿のツタヤに寄ると、ゴングショーでミュージカルネタに励んでいた大西ライオンが東京事変のPVを眺めながら足でリズムを刻んでいた。ファンの夢を壊さないでほしい。

7月5日

演目は「国民ヤミ年金」「孫帰る」「死神」。「孫帰る」はほのぼのした会話劇かと思って油断して見ていたら、終盤、急転直下の展開になって目が覚める。
ところで「死神」は明治時代に三遊亭円朝がオペラ「クリスピーノと代母」乃至はグリム童話「死神の名付け親」を下敷きに創作したものと言われている。しかし今回、死神が気まぐれで下界に降りてきて人間に特権を与える冒頭を見て、そのルーツが「デスノート」にあることを確信した。この際、「デスノート第3部」は落語界を舞台にしたらどうだろう。楽屋に置かれたデスノートと根多帳が混合されたため、名前を書かれた噺家が次々と死亡。そしてLの正体は鈴々舎馬風と判明する……頭の先からバネが飛び出してる私の言ってることが分かりませんか。理解者は人間界で3人、神様界で800万人いればいいです。

7月3日

柳家喜多八・三遊亭歌武蔵・柳家喬太郎による落語会。喬太郎の演目は「にゅう」で、柔らかいの堅いの織り交ぜた与太郎の描写に笑う。
そして目を見張ったのは、凄惨といっても過言ではない陰気な臭いを漂わせてトリに現れた喜多八だ。実態があるのか確かではないけれど、とりあえず業界が「ブームの落語を盛り上げていきましょー!」と声を上げて走り回ってる中、炬燵に手足を突っ込んでひっそり凍死してるようなダルでチルアウトでアーシーな空気感。師匠の小三治から芸を伝承したというより、悪い病気を感染したようにしか見えず大変気になる。演目は地下に掘った穴から金品を盗もうとする「もぐら泥」。これ以上引きの芸で深く潜ったらブラジルに届くかもしれない。ブラジル人たちよ、チルアウトの使い方は合ってますか。

7月3日

本間しげるの単独は「蚊帳の中の老婆」「お見合いパーティの女」「喫茶店で朝礼するIT起業家」など5本。どれもそれなりの水準で”優れたキャラクター造形””緻密な演技力””底意地悪いギャグ”という本間の構成要素を改めて組み立てたような舞台だった。
しかし昔の本間は解体した要素をもう一度組みなおすと、パズルのピースが余るどころか、パズルが2個出来てしまう程に、熱量・完成度・笑いの到達点、全てにおいて”高い”芝居を演じていたのである。それを知る者としてはやはり物足りない出来。私の時計は相変わらず94年のライブ「売る魂」で止まっている。進まない針が刻む音は、壊れて同じ旋律ばかり奏でるオルゴールのようだ。
ところで前列を占める客層が視界に入って仕方ないのである。みんな一様にラグビー部あがりの体型で髪が短く若干ヒゲを生やしてポロシャツにハーフパンツ着用という、まったくもって同じ染色体同士が見つめあう視線と視線のレイザービームで導きあってる気配。前回の横浜公演でも見かけたが、またお目にかかるとは。舞台も客席も再現しなくていいことばかりが輪廻している。


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