昨日の「アド街ック天国」は千葉県の佐倉を取り上げていた。ここは小出監督の佐倉アスリートクラブがあり、高橋尚子も以前はここでトレーニングを積んでおり、高橋尚子にちなんだ名前のジョギングコースもある、ということを伝えていた。
1 市民ランナーとしては、まったくと言っていいくらい高橋尚子に興味はないんだけど、この番組の中で彼女がシドニーオリンピックの女子フルマラソンで優勝したことを知り、ということは村上春樹の「Sydney!」という著書でも触れられているはず、と思い、読み返してみた。
この本によると、高橋尚子は本当にすごい走りを見せたようである。なんといってもアップダウンの多い難しいコースで、オリンピック新記録を出したんだから。
でも、レース翌日の記者会見について村上春樹はこう記している。
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僕はできることなら、もっとありありとした、正直なぎざぎざのある話を、彼女自身の言葉で聞きたかった。しかし残念ながらそのような僕の願いはかなえられなかった。どうしてかはわからないけれど、いささかきれいに枝が払われすぎている。すべての風は穏やかに、きちんとひとつの方向に向かって吹いている。だからその達成が文句なく素晴らしいものであったにもかかわらず、話の中身がもうひとつ腹にしみてこない。
(実際の本では「ぎざぎざ」の部分に傍点がつけられている)
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最近ついつい無難なこと言わなきゃって思ってしまう。仕事上、いかにとげの無い言葉を選んで話すか、必要な部分だけ伝えられるか、ということばかり考えて話をしている。何せ一日のほとんどの時間は仕事しているから、自分の傾向としてそうなってしまう。仕事としてはすごく重要なことなんだけど、この部分を読んでギザギザがある話をするタイミングや場面も大切にしなきゃなと思った。
村上春樹はこの本で確か「オリンピックになんてまったく興味がなかった」と書いていたような気がする (今回あらためてきちんと確認していないけど)。
僕もまったく興味がない。東京でまたオリンピックなんてやらなくていいと思う。そんなことに税金を使ってほしくないし、東京がそんなことでこれ以上バタバタするのは嫌だ。それくらい興味がない。でも、この本はそこそこ楽しく読んだ覚えがある。あらためて女子マラソンのところだけ読んだけど、村上春樹の視線に興味があるからだと思う。この人がオリンピックを見に行くとどのように見るんだろう、試合を見ている時以外はどんな風に過ごすんだろう、という点だけに興味をそそられる。
あとがきにはテレビで見るのと全然違うと書いてあったけど、それでも東京でオリンピックをやるのは嫌だな。そもそもスポーツを観戦することにまったくもって興味がないので、それに税金が使われるのはすごく損した気分がするからかもしれない。