研究とビジネスの間

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簡単にまとまりそうにないのでドラフトをそのまま出してみます。
たぶんまだ書き換えます。場合によっては引っ込めます。

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トム・ケリー & ジョナサン・リットマン, 『発想する会社!』, 早川書房,
2002.

デザイン・ファーム IDEO
http://www.ideo.com/
に学ぶイノベーションの技法

「気づいたら気づいた人がやる」というのは僕は正しいあり方だと思う。た
ぶん僕がいた頃の SFC ではこれがふつうだった。研究所というのもそういう
もんだと思ったら僕が入ったところは微妙にそうじゃない部分があったけど、
それでもたとえばひとつのサービスに関わるといろいろ気づくし、いろいろ
やりたいことが積まれていった。難しいのは、部所が違うから口が出せない
とか、そういう会社・組織だからしょうがないとか、やったことがないから
どうやっていいのかわからないとかそういうことだった。

やったことがないからどうやっていいのかわからないというのの主なものは、
サービスや製品のアイディアを思いついた時、そこに技術的課題があっても
研究要素がない場合、あるいはあるべきサービスや製品かもしれないけどど
うなんだろう? という場合、ならばどういう評価軸を持ってそのアイディア
を評価できるのかわからない、そしてサービスや製品に具現化するプランを
立てて実行するにはどういう手順を踏めばいいのかわからない、ということ
だった。

特許・論文の書き方、プレゼンテーションの仕方、グループのミッションに
沿った研究計画を立てて進捗を発表するという方法はみんな知っていて聞け
ば教えてくれた。しかし、グループのミッションとは別に実現したいサービ
スや製品があった時 (っていうか新しいものをつくるっていうのはそういう
ことだ)、どういうものならやるべきでどういうものならやめるべきかについ
ては、組織として評価基準を持っていなかった。

ビジネスは、投資をして何年かで回収する、というように行なう。たぶん、
こういうサービス企画があったら、開発にいくら、営業にいくら、運用にい
くら、広告にいくら、サポートにいくらかけて、スケジュールはこうで、こ
の時期にはこの目標を達成して (というのを何度も繰り返して)、最後にはこ
ういう利益が出るようになるという計画を立てて、それに無理がないか検証
して、問題なければ go となる。

通信会社の研究開発というのは、従来こういうサイクルのほんの一部しか担っ
てこなかった。まぁ、一部の基礎研究はそれでもいいだろうし、だとしたら
ほんの一部だけで成立する研究って何かっていう評価基準を考えればいい。
ただ、学会という大きな仲良しグループの尺度をそのまま使うのは違うと思
うけど。

いずれにせよ、僕は基礎研究より社会で使われてなんぼのテーマの方に興味
があった。本当は、その中間の、小さなアイディアをいろいろ試して製品・
サービス化の種にするというようなことを専門としたかったんだけど、そう
いうのの成功事例がないこともあって、そういうのは会社の仕事にならない
と思った。そういうことをセコセコ考えても、その先につながるような仕組
みがないからだ。無いなら作らなきゃ、ね。

インターネットとか e ビジネスの世界の研究開発が、研究開発のフェーズだ
けに着目していては、サービスや製品という形で世に出せない。これはもう
はっきりしている。投資して、サービス開発して、運用体制を作って、サー
ビスを開始して、営業してユーザを増やして、黒字化させて、利益を出す形
で = 持続可能な形で運営していく。けっきょくそこまで見通せなければ、研
究の意味が全く出ない時代になった。

だから、ビジネスプロデューサー制とか作るんだけど、ずっと研究だけして
きて突然そんなこと言われてもやったことないんだから困る、とそういう立
場の人が言っていた。それも部長ぐらいの人が任命されていた。研究者とし
て優秀で、かつ社内的にも地位が高い人がそういう今までと極端に違ってい
て、かつ泥臭い仕事をするのは無理だと思う。

だから、ある程度早い段階から、研究開発というのは最終的にそういうサイ
クルの種になるべきもので、その価値はサイクルを通して評価されると考え
る習慣をつけるべきなのだ。

うーん、そうかな?

事業化するとか、事業部のサービスに使われました、で評価が終っちゃうか
らだめなんだ。そこからどういう風に利益を出していくかまで含めて評価し
ないといけない。

ただ、電機メーカなんかだと、製品ごとにカンパニーがあって、そこで独立
採算性を取るから研究が製品に活き、製品の売行きで研究を含めたカンパニー
の評価が下される。これが普通なのだ。つまり、研究部門の上にカンパニー
のトップがいて、自カンパニーにどれくらい貢献しているかを評価したり、
どういう貢献をすれば評価するぞという方向性を示しているからうまく回っ
ているのだ。

研究開発部門で独自の予算枠を持ってしまっていて、その研究開発部門が全
体のビジネスから見て、シビアな評価を受けていないのがそもそもの問題だ。

たとえば、先述のカンパニー制のようなものを体験したことがない人しか研
究所にいないから、カンパニー制の利点を評価できない。というか、やっぱ
りあんまり世に出して使われてなんぼというより、論文に掲載されて嬉しかっ
たねーという方が強いんだろうな。学者チックにスノッブ気取りたいという
部分はあるでしょう、たぶん。

IDEO 社というのは、今製品になっているものの使われ方や、ものの本質を
よく観察して、それよりちょっと先の未来を先取りして形にするということ
をしている。つまり、現場をよく観察することでその先の未来を先取りする
のだ。実はこれってすごくおもしろいことなんじゃないかな?

研究のテーマは論文だけでなく、ビジネス現場にも転がってるわけだし。

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このページは、notoが2003年8月18日 23:34に書いたブログ記事です。

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